更新日: 2022.08.30 働き方

過度な残業での退職は「会社都合退職」になる?退職前に知っておきたい要件

過度な残業での退職は「会社都合退職」になる?退職前に知っておきたい要件
過度な残業による過重労働は、過労死や精神障害を引き起こす原因となります。近年、就労を原因とする自殺者数は減少傾向にありますが、2020年度の自殺者数は1900人にも上ります。
 
「残業が多いから仕事を辞めたい」と考えている人の中には、自己都合退職が「失業保険の給付制限」に該当するので、退職をためらっている人もいるでしょう。しかし、過度な残業を理由にした退職は、「会社都合退職」として扱われ、失業保険の給付制限を受けない可能性があります。
 
本記事では、残業による退職を会社都合にする方法と注意点を紹介します。過度な残業に苦しむ人は、ぜひご覧ください。

執筆者:橋本典子()

「過度な残業」は会社都合退職の対象となる

冒頭のとおり、過度な残業が退職理由の場合は、会社都合退職となります。このような特定の理由で退職した人を「特定受給資格者」と呼び、以下の要件を満たすことで会社都合退職に認定されます。
 

●月45時間以上の残業が3ヶ月続いた
●月100時間以上の残業をした
●2~6ヶ月平均の残業が月80時間を超える
 
※いずれも離職直前の6ヶ月間に限ります。

 
また、配偶者などの親族と別居生活を継続することが困難になった時や、体力不足などで継続的な就業が困難となった場合にも会社都合退職として扱われるケースがあります。やむを得ない理由で退職をする際は、特定受給資格者の要件を確認してみましょう。
 

認められるには証拠が必要

会社都合退職と認められるためには、過度な残業をしていたことを裏付ける客観的資料が必要です。その客観的な資料とは、タイムカードや賃金台帳、給与明細などが該当します。会社を辞める前に写しを取っておくとスムーズに手続きが進められるでしょう。
 

適切な証拠がない場合の対処法

過度な残業を行っている会社では、残業時間を正しく記録していないケースもあります。そういった状況であっても、「パソコンのログイン情報」や「メール履歴」などを記録すれば、客観的資料として提出可能です。
 
ただし、客観的資料を提出したからといって必ず会社都合退職となるわけではありません。最終的に退職理由を判断するのはハローワーク(公共職業安定所)であることを認識しておきましょう。
 

未払い残業代を請求できる場合も

退職前後に関わらず、未払いの残業代は請求できます。
 
ただし、残業代の請求権には時効があり、2020年3月31日以前は「2年」、2020年4月1日以降は「5年(当面は3年)」と定められています。未払いの残業代がある場合は、退職理由の変更と合わせて手続きをしてみましょう。
 

過度な残業による退職は会社都合退職の対象となる

過度な残業による退職は、会社都合退職になります。ただし、手続きには証拠となる客観的資料が必要となるため、退職前に証拠を集めておきましょう。
 
過度な残業は病気や精神障害など、さまざまなリスクの原因になります。適切な判断ができ、体調を崩す前に行動しておくことが大切です。残業を理由に退職したい人は、自身が該当するかしっかり確認しておきましょう。
 

出典

ハローワークインターネットサービス 基本手当について

厚生労働省 特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲と判断基準

厚生労働省 未払賃金が請求できる期間などが延長されています

 
執筆者:東本隼之
2級FP技能士

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