更新日: 2022.08.24 働き方

「残業しすぎると社会保険料が上がる」って本当?しくみを解説

「残業しすぎると社会保険料が上がる」って本当?しくみを解説
毎月の給与から天引きされる金額の大半を占めている社会保険料ですが、4月、5月、6月の残業代が社会保険料に影響していることをご存じでしょうか。生活のためにあえて残業している人もいる中、残業が手取りを減らす原因となっているとしたら不本意ですよね。
 
今回は、社会保険の基礎を簡単に、そして残業と社会保険料の関係性についても理解できるように解説します。
FINANCIAL FIELD編集部

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)

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社会保険料とは

給与から天引きされている社会保険料は、健康保険、介護保険、厚生年金をまとめた総称です。雇用保険と労災保険を合わせた労働保険も含まれる場合があります。
 

社会保険料は標準報酬月額を元に算出

「社会保険料」は標準報酬月額を元に算出されています。標準報酬月額とは「社会保険料を計算しやすくするために設けられている金額」のことです。
 
【健康保険料】標準報酬月額×健康保険料率
 
健康保険料率は、全国健康保険協会(協会けんぽ)の場合には都道府県によって異なっており、健康保険組合の場合には組合によって異なります。東京都の最新健康保険料率は4.905%となっています。
 
【厚生年金保険料】標準報酬月額×厚生年金保険料率
 
厚生年金保険料率は現在9.15%で固定されています。
 
【介護保険料】標準報酬月額×介護保険料率
 
最新の介護保険料率は令和4年3月分で1.64%となっています。料率は平成21年3月分の1.19%からほぼ毎年上昇してきましたが、令和3年3月分をピークに下落しています。
 

協会けんぽの社会保険料額表

社会保険料の金額は、標準報酬月額によって決まります。詳細な金額は、協会けんぽのホームページで確認できます。
 

標準報酬月額の決まり方


 
「社会保険料」が算出される大本の金額は、標準報酬月額であることが分かりましたが、標準報酬月額とは一体どうやって決まっているのでしょうか。「標準報酬月額の決定」には3回のタイミングがあります。
 

定時決定

標準報酬月額は、「毎年4~6月の3ヶ月間に支給された給与に基づいた平均金額」で決まります。これを「定時決定」といい、給与を知らせるための届出を「算定基礎届」といいます。
 
定時決定された標準報酬月額は、その年の9月から翌年8月まで社会保険料の算定に使われます。4~6月の給与で1年分の社会保険料が決まってしまうのです。
 
「算定基礎届なんて出したことはない」という人もいることでしょう。実は、社会保険手続きは会社が行います。毎年7月に本人が知らないうちに会社側が提出しているのです。
 

資格取得

入社の時点では、まだ給与の支払い実績がないため、3ヶ月間の平均金額を算出することができません。かといって、3ヶ月経過するまで社会保険料0円というわけにもいかないため、これから支払うことが見込まれる給与額を元に標準報酬月額が決定されます。
 

随時改定

資格取得時「以外」に標準報酬月額が変わる機会は定時改定のみの年1回ですが、定時改定と定時改定との間に大幅な給与の変更があった場合には、「随時改定」といって臨時に標準報酬月額を見直します。
 

残業が社会保険料に影響する理由

さて、残業することで社会保険料が上がる理由ですが、ここまでの解説で察しが付いたでしょうか。残業すると残業代が支給されます。残業代は「定時改定の給与に含まれる」ため、標準報酬月額を押し上げる原因になってしまうのです。
 
極端な話、「4~6月だけ多くの残業代をもらい、7~3月の残業代は0円だった場合、残業代0の月も残業代があった月の給与をベースに計算された社会保険料が天引きされることになってしまいます。
 

随時改定は残業代を含まない

ただ、随時改定によって標準報酬月額が変更になるのであれば、定時改定にこだわらなくても良いのではないでしょうか。
 
実は、定時改定では残業代を含んだ給与額で標準報酬月額が計算されるのですが、随時改定で対象になる給与は固定的賃金のみになります。
 
固定的賃金とは例えば、基本給、家族手当、住宅手当、役職手当など、毎月変動せずに固定的に支払われる給与のことをいいます。残業代は残業時間によって変動するため、随時改定に影響しないということになります。
 
ただし、残業代が固定されている場合には固定的賃金に該当し、変動した場合には随時改定の対象になります。
 

まとめ

社会保険料は、4~6月の給与に基づいて算出される標準報酬月額をベースに計算されるため、4~6月に残業することによって給与が多くなると、標準報酬月額も高くなり社会保険料も比例して高くなります。
 
反対に、いつも残業が多い人は4~6月の残業をどうにかして抑えることによって、社会保険料を低くすることができるということでもあります。
 
残業の調整は難しい面もありますが、「4~6月に残業を抑えると、社会保険料が安くなるかもしれない」と頭に入れておくと、無意識に効率的になり数時間は圧縮できるかもしれませんね。
 

出典

全国健康保険協会 令和4年度保険料額表(令和4年3月分から)
 
執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部

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