更新日: 2022.06.22 家計の見直し
健康保険料の前納に、割り引きがあるって本当? 国民健康保険にもある?
「払わされる」というより「自分から払う=前納制度」を使って、納め忘れのないようにしてはいかがでしょうか。
執筆者:柴沼直美(しばぬま なおみ)
CFP(R)認定者
大学を卒業後、保険営業に従事したのち渡米。MBAを修得後、外資系金融機関にて企業分析・運用に従事。出産・介護を機に現職。3人の子育てから教育費の捻出・方法・留学まで助言経験豊富。老後問題では、成年後見人・介護施設選び・相続発生時の手続きについてもアドバイス経験多数。現在は、FP業務と教育機関での講師業を行う。2017年6月より2018年5月まで日本FP協会広報スタッフ
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会社を退職してからが問題
健康保険制度は、けがや病気により、医療機関で治療を受けたときなどにかかった費用が3割(ケースによって異なります)の自己負担ですむ仕組みですが、これには保険料を納めているという前提があります。
企業などにフルタイムで勤務している場合は、人事や総務の担当者が、あらかじめ給与から差し引いて納付してくれるので、気に留める人は少ないかもしれません。しかし退職してからは、自分で管理しなければなりません。
方法としては、
●国民健康保険に加入する
●任意継続被保険者制度に加入する
●配偶者や子どもの被扶養者になる
という3つのケースがあります。被扶養者になる場合以外は、自分で手続きをします。
国民健康保険への加入と任意継続被保険者制度の利用の、違いやメリットについて、詳しく説明することは別の機会に譲るとして、ここでは、いずれかに加入した後の保険料支払いについて触れたいと思います。
協会けんぽの任意継続被保険者の場合
<12ヶ月前納で8399円、6ヶ月前納で4442円の割り引きのケース(東京都)>
まず会社を辞めた後も、前の会社と同じ健康保険に「任意継続被保険者」という立場で加入し続けるケースです。
会社に勤めていたときと同じ保険給付が受けられる、人間ドックを利用したいなどの理由でこちらを選択する場合もあるでしょう。
期間は最長2年間(その間に75歳になった場合は2年経過する前でも後期高齢者医療制度に加入)ですが、保険料は自分で納付しなければなりません。
現役時代の保険料は事業主との折半でしたが、退職後の任意継続被保険者では、全額自己負担です。
納付の方法は、毎月払いのほかに、4月分から9月分、10月分から翌年3月分までの6ヶ月分、または4月分から翌年3月分までの12ヶ月分をまとめて前納する方法があります。
年度の途中で任意継続被保険者となった場合は、資格を取得した月の翌月分から9月分、または次の3月分(当該年度の3月分)までの期間で、任意継続被保険者の期間満了や、後期高齢者医療制度加入(75歳到達による)に該当する場合は、資格喪失する月の前月までの期間となります。
では、令和4年4月からの保険料率9.81%、介護保険料率を1.64%としたケースで考えてみましょう。
前納期間の最初の月の末日において40歳以上であり、かつ前納期間の満了日において65歳未満であれば、6ヶ月前納で標準報酬月額が30万円の場合で20万3759円、12ヶ月前納の場合は40万3561円となります。
これが毎月納付の場合、月々3万4350円ですから、12ヶ月で41万1960円となります(東京都の場合)。
これらは、標準報酬月額(退職したときの給与に基づいて計算されます)、年齢、お住まいの都道府県によって異なります。詳しくは、協会けんぽのホームページ(※)でご確認ください。
国民健康保険料は基本的に前納による割り引きはないが……
これまで述べてきたことは、「会社に勤めていて、会社の健康保険に加入していた人」が「会社を辞めた後も、引き続き最長2年間、会社の健康保険制度に加入し続ける」という場合でした。この場合は前納制度があって、割り引きを受けることができます。
では、国民健康保険に加入することにした場合も、同様の割り引きはあるのでしょうか?
こちらは、地方税法上に規定がないため、前納割引はありません。
どうしても“お得感”にこだわりたいなら、クレジットカードでの支払いにして、ポイント還元を狙うという方法を検討することはできるでしょう。
ただし、このポイント還元は、カード会社によって異なりますので確認が必要です。
手続きや前納を使う場合、期限に遅れないように注意
最後に、任意継続被保険者制度を利用し、かつ前納制度で割り引きのメリットを受ける場合には、納付期限を必ず守らなければいけないことに注意してください。
もし、納付期限までに前納保険料が納付されなかった場合は、始めから前納の申し込みがなかったものとして取り扱われます。そして、自動的に月払いの納付書が送付されます。
(※)
全国健康保険協会 全国健康保険協会(協会けんぽ)の任意継続被保険者の方の保険料額(令和4年4月分~)
出典
全国健康保険協会 ホームページ
執筆者:柴沼直美
CFP(R)認定者