更新日: 2022.05.25 働き方

知っておきたいアルバイトの権利! 有給や残業代を正しく請求しよう

知っておきたいアルバイトの権利! 有給や残業代を正しく請求しよう
アルバイトやパート(以下、アルバイトで統一)であっても労働基準法は適用されるので、有給や残業代などをもらう権利があります。しかし必ずしも発生するわけではないので、事前に条件を押さえておきましょう。
 
今回はアルバイトの方が知っておきたい、労働関係で行使できる各種権利や制度について解説します。

執筆者:西村りえ()

アルバイトが使える労働上の権利まとめ

アルバイトが使える労働上の権利のうち、とくにアルバイトから疑問に思われることが多いものについて紹介します。
 

有給の発生は労働日数や時間による

次の条件を全て満たせば、原則としてアルバイトでも有給が発生します。

雇われた日から6ヶ月以上継続で勤務している

決められた労働日数(企業が設定している労働者が就労すべき日数)の8割以上出勤している

 
ただし、フルタイムの方より所定労働日数・労働時間が少ない場合は、少ない分を加味した有給日数に減らされます(短時間労働者の比例付与)。
 
「1週間当たりの労働日数が1日未満(1ヶ月で2日労働など)」または「1年間の労働日数が48日未満」だと、有給は発生しません。日数や時間による有給の付与数は、図表1をご覧ください。
 
【図表1】

図表1

出典:厚生労働省「リーフレットシリーズ労基法39条」
 
なお有給を取得した日の賃金は、「平均賃金」「所定労働時間分だけ働いた分の賃金」「標準報酬月額の30分の1」のいずれかが支払われます。少しややこしいですが、要は「有給を使っても、1日働いた分だけの賃金が出る」と覚えておくとよいでしょう。
 

残業代は就業規則をチェック

結論から言えば、アルバイトでも残業代は発生します。解説する前に、法定労働時間と所定労働時間の違いについて確認します。
 
・法定労働時間:労働基準法で決まっている労働時間
 
・所定労働時間:企業ごとに独自で設定している労働時間
 
この違いを踏まえつつ、アルバイトの残業代についてみていきましょう。
 
まず、アルバイトが法定労働時間である1日8時間や1週間40時間を超えて働くと、問答無用で超過した分の残業代が発生します。とはいえ、アルバイトだと「1日の所定労働時間が4時間で、2時間残業しても6時間」という場合も多いですよね。このケースだと、残業代が出るかは就業規則次第になります。
 
就業規則に「所定労働時間を超えたら割増で賃金を支払う」といった旨の記載があるときは、2時間分の残業代が発生します。しかし就業規則に同様の記載がないと、企業は法定労働時間の超過分のみの支払い義務を負うので、2時間分の残業代が出なくても違法にはなりません。
 
このようにアルバイトの残業代の是非は、就業規則の内容が重要になります。
 

図表2

 

最低賃金の金額は必ず保証される

アルバイトにも最低賃金が保証されます。例えば「研修期間中だから時給を半額にする」というのは違法です。
 
最低賃金は勤め先が属する都道府県ごとに設定されているので、厚生労働省のホームページにて確認してください。守らない企業には、罰金刑が科せられる可能性があります。
 

労災保険・厚生年金保険・健康保険について

勤め先が労災保険に加入している場合は、アルバイトでも労災保険を使えます。業務上(通勤なども含む)の病気やけがが発生した場合は、遠慮なく利用しましょう。
 
また2016年10月より、アルバイトのような短時間労働者でも条件を満たせば、厚生年金保険や健康保険に加入できるようになりました。2022年5月時点の条件は次の通りです。

・特定適用事業所に雇われていること(2022年10月からは特定適用事業所の事業規模要件が500人超から100人超へと大幅に緩和)
・週の所定労働時間が20時間以上であること
・雇用期間が1年以上見込まれること(2022年10月からは2ヶ月超に緩和)
・賃金の月額が8万8000円以上であること
・学生でないこと

2024年10月にはさらに適用範囲が拡大する予定です。詳細な条件については、日本年金機構のホームページや勤め先の窓口にてご確認ください。
 

図表3

 

解雇は30日前までの予告が必要

アルバイトであろうと、正社員と同じく合理的な理由がない限り解雇は認められません。
 
また、合理的な解雇であっても、30日前までに予告する必要があります。もし30日未満で解雇を言い渡された場合は、「解雇予告手当」を受け取る権利が発生します。
 

権利行使にあたって注意したいこととは?

有給や残業代などについて法的な権利を主張しても、聞き入れない悪質な企業や担当者がいるのも事実です。
 
もしトラブルになりそうな場合は、1人で抱え込むのではなく労働基準監督署や弁護士、社労士などの「権威のある第三者」へ相談しましょう。自分1人では聞き入れてもらえない場合でも、代理人をはさめば交渉に応じてくれるパターンも珍しくありません。
 
相手が明らかにアルバイトの権利を侵害している場合は、毅然とした態度で対応しましょう。
 

出典

厚生労働省 アルバイトをする前に知っておきたい7つのポイント
厚生労働省 確かめようアルバイトの労働条件
東京労働局 しっかりマスター労働基準法 パート・アルバイト編
政府広報オンライン パート・アルバイトの皆さんへ 社会保険の加入対象が広がっています。
日本年金機構 短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大
 
執筆者:棚田将史
2級ファイナンシャル・プランニング技能士・証券外務員1種

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