更新日: 2021.07.31 家計の見直し

日本の食品ロスの量はどのくらい? 減らすために私たちができること

日本の食品ロスの量はどのくらい? 減らすために私たちができること
近年関心が高まっているSDGs(持続可能な開発目標)の1つに「食品ロス」があります。「食品ロス」と聞いただけでは、自分の生活を見直して世界に貢献するなど壮大なテーマすぎて人ごとと思われるかもしれません。
 
しかし、食品ロスが世界や家計におよぼす影響を知ると、その切実な現実が見えてきて、危機感を感じるようになるでしょう。ほんの少し日々の暮らしの仕方を見直してみると、あなたの家計も世界も変わる可能性があります。いったいどう変わるのでしょうか。
岩永真理

執筆者:岩永真理(いわなが まり)

一級ファイナンシャル・プランニング技能士

CFP®
ロングステイ・アドバイザー、住宅ローンアドバイザー、一般財団法人女性労働協会 認定講師。IFPコンフォート代表
横浜市出身、早稲田大学卒業。大手金融機関に入行後、ルクセンブルグ赴任等を含め10年超勤務。結婚後は夫の転勤に伴い、ロンドン・上海・ニューヨーク・シンガポールに通算15年以上在住。ロンドンでは、現地の小学生に日本文化を伝えるボランティア活動を展開。
CFP®として独立後は、個別相談・セミナー講師・執筆などを行う。
幅広い世代のライフプランに基づく資産運用、リタイアメントプラン、国際結婚のカップルの相談など多数。グローバルな視点からの柔軟な提案を心掛けている。
3キン(金融・年金・税金)の知識の有無が人生の岐路を左右すると考え、学校教育でこれらの知識が身につく社会になることを提唱している。
ホームページ:http://www.iwanaga-mari-fp.jp/

飢餓の一方で食品廃棄、その現実はグローバル

国際連合食糧農業機関(FAO)「世界の食料安全保障と栄養の現状(要約版)(※1)」の2019年(新型コロナウイルスの感染拡大前)の推計によると、世界人口の8.9%に当たる6億9000万人近くが飢えに苦しんでいます。
 
その一方で、同機関「世界の食料ロスと食料廃棄」2011年(※1)によると、世界では人の消費のために生産された食料の約3分の1を廃棄しており、その量は年間約13億トンにものぼります。
 
世界には7万人近くも飢えている人がいる一方で、生産された食料の約3分の1を廃棄している事実は、見逃しがたい現実といえます。
 

日本でも驚く「食品ロス」の量

「食品ロス」とは、食べられるのに捨てられる食品のことです。
 
農林水産省「日本の食品ロスの状況」平成30年度(※2)によると、日本での食品ロスの量は年間600万トンと推計され、人口1人あたりの食品ロスの量にすると、年間約47キロです。例えば年間47キロをすべて単純にお米に換算してみましょう。
 
農林水産省「令和2年産米の相対取引価格・数量(令和3年5月)」(※3)の全国平均価格(60キロで1万4611円)を用いて計算すると、47キロあたり1万1445円になります。つまり、1人年間1万1445円相当の食べられる状態のお米を捨てているイメージになります。
 
仮に47キロの食品がお米ではなく、すべて国産牛肉として、農林水産省「食品価格動向調査(食肉鶏卵)」令和3年10月全国平均(※4)(100グラム830円)を用いて計算すると、約39万円にもなります。
 
現実にはないことですが、仮にすべての食品ロスが単一種類の食品の場合のそれぞれの金額は下表のとおりです。
 


 
つまり、1人あたり1年間でこれだけの金額を無駄にしないですむ可能性があるとすると、地球にも家計にもやさしいといえるのではないでしょうか。
 

食品ロスを減らすためにはどうすればよい?

単純な「食品ロス」に加えて、それらを廃棄するための焼却などの処理費用も、さらにかかることを考えると、総合的なロスはかなり大きくなります。では、こうした食品ロスを減らすために、私たちはどのような工夫ができるのでしょうか。
 

■買い物時の工夫

(1)冷蔵庫内に買い置きがあったことを忘れて同じものを買ってしまわないように、冷蔵庫の中身を定期的にスマホなどで撮影しておくと、買い物時に迷わず必要なものだけを買うことができます。
 
(2)献立を決めずに買うと、後で不足する材料があることで面倒になり結局使わずに廃棄、となるのを防ぐため、

●何日分の食事をつくる材料を買うのか、おおよその分量と献立(主菜・副菜・汁物)をイメージして買う
●セール品を買う際は、期限が迫っていることが多いため、その日中に使い切れるもので、何を作るのかを明確にしてから買い、他に必要な材料があれば同時に買う

 
(3)買いすぎを防ぐため、

●買い物の頻度は必要最小限にとどめておく
●買い物の頻度に併せて、その都度使える予算を決めておく

■調理時の工夫

(1)賞味期限の近いもの、短いものから調理する
 
(2)分量の多い食材は、一度に調理した後にリメイクして使い切る
 

■保存時の工夫

(1)調理済みで食べきれない食品やリメイクしづらい食品は、いったん冷蔵・冷凍して早めに無駄なく使い切る
 
(2)冷蔵・冷凍保存品には調理日や中身を書いておき、古い順に使っていく
 
(3)冷蔵庫・冷凍庫の奥で忘れてしまわないように、中身の見える容器(食品保存容器や食品保存袋)を使用する
 

■外食時の工夫

(1)食べきれる量をオーダーするため、皿の大きさや料理の品数など注文時に店員に聞きながら適量をオーダーする
 
(2)複数人で外食する場合は、食べる前に自分には適量かどうかを判断し、1人では食べきれない分量だと思ったら、最初に食べられそうな人へシェアしておく
 

まとめ

「食品ロス」は、レストランなどでの事業系の廃棄(約324万トン)が主と思われがちですが、実は家庭系の廃棄も決して少なくありません(約276万トン)(※5)。
 
わが国では1人あたり年間約47キロの食品ロスを減らす努力をすれば、米換算の金額にして1万1445円を捨てないで済む可能性があります。4人家族であれば4万6000円程度を廃棄せずにすむ計算になります。
 
通常家計の見直しの常とう手段は、固定費の削減ですが、変動費である食費を無駄なく使いこなすことができれば、世界のため、自分のためにもなることがわかります。少しずつでも実行して、効果のほどを確かめてみてはいかがでしょうか。
 
出典
(※1)JAICAF(公益社団法人 国際農林業協働協会)ホームページ

(※2)農林水産省「食品ロス量(平成30年度推計値)の公表」

(※3)農林水産省「令和2年産米の相対取引価格・数量(令和3年5月)」

(※4)農林水産省「食品価格動向調査(食肉鶏卵)の調査結果」

(※5)農林水産省「日本の食品ロスの状況(平成30年度)

 
執筆者:岩永真理
一級ファイナンシャル・プランニング技能士

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