更新日: 2021.05.27 働き方

主婦の働き方、社会保険に入るメリット・デメリットは?

主婦の働き方、社会保険に入るメリット・デメリットは?
会社員の配偶者が一定の年収を超えると、自ら社会保険に加入することになりますが、昨今その上限が一部の勤務先企業で引き下げられています。2021年以降はさらに対象企業が増える予定です。そこで、社会保険に加入するメリットを整理したうえで、自分らしい働き方を考えてみましょう。
波多間純子

執筆者:波多間純子(はだまじゅんこ)

㈱bloom代表。ファイナンシャル・プランナー(CFP(R)),キャリアコンサルタント

「お金しだい」の人生から「自分しだい」の人生への選択をサポート。家計相談28年、相談件数4,000件超。家計相談と合わせて、その方の才能や適職を診断し潜在能力を高める「咲かせようじぶん資産」をテーマに個人セッションとワークショップを開催。

従業員数が501人以上の企業では、パートのカベは年収106万円

現在、パート勤務の妻などが年収130万円を超えると、夫の扶養を外れて自分で社会保険に加入しなくてはなりません。さらに、妻が従業員数501人以上の会社に勤める場合は、年収106万円で社会保険加入の対象になります(※1)。
 
年収106万円というのは、月収であれば8万8000円を超える程度です。例えば、東京都の最低賃金である時給1013円(令和3年5月現在)で働くなら、1日7時間で週3日程度働くと達してしまいます。つまり、そこそこの働き方であっても社会保険に加入することになるのです。
 

■今後は社会保険加入対象の勤め先が増える

さらに、今後はより少ない従業員数の企業に勤めるパート社員も、社会保険が適用される予定です。
 

<対象の勤め先の拡大スケジュール>

●現在~2022年9月末
従業員数501人以上の企業
 
●2022年10月~
従業員数101人以上の企業
 
●2024年10月~
従業員数51人以上の企業

 
この場合の従業員とは、現時点で正社員をはじめとした厚生年金に加入している人が対象です。
 

社会保険に入るデメリット

社会保険の扶養(第3号被保険者)から外れる1番のデメリットは、保険料の負担が増えることです。
 
例えば、パートの年収が131万円になると、社会保険料は年間で約18万円(※2)かかります。これは、1万円少ない年収130万円ではまったくかからなかったお金ですから、負担は大きなものです。
 
この条件で社会保険料のマイナス分を補い、手取り収入が増え始めるのは年収が約155万円からです。つまり、年収が155万円に達するまでは働き損となってしまうかもしれません。
 
なお、年収106万円で発生する社会保険料負担は年間約15万円。この場合、年収約123万円まで働いて、やっと手取りで106万円を超える金額になります。
 
働くからには、社会保険料分を上回る収入を目指すのがトクです。
 

社会保険に入るメリット

保険料だけ見れば損に思えますが、保険料を支払うことで相応の「給付」も受けられるという利点もあります。そこでメリットである主な給付を挙げてみます。
 

1.将来の老後の年金等が増える

1番のメリットは、将来受け取れる厚生年金が増えることです。厚生年金保険料を支払うことで、原則65歳以降国民年金からの老齢基礎年金に加えて老齢厚生年金を受け取れます。
 
具体的には、年収106万円で20年間働いた場合、将来の老齢厚生年金が月1万9300円、年間で23万1500円増えます(厚生労働省の試算より)。老後の年金は生涯受け取れますので、平均寿命の長い女性にとっては特に有利です。
 
厚生年金保険料を払うメリットは、老後の年金だけではありません。障害と認定された場合は「障害厚生年金」が、本人が死亡した場合は残された家族が受け取れる「遺族厚生年金」が国民年金部分に加えて上乗せされます。
 
さらに、例えば障害年金では、国民年金では対象外の障害3級への給付が厚生年金ではあるなど、相対的に給付に厚みがあります。
 

2.健康保険からの給付の種類が増える

健康保険には本人が加入することで受け取れる給付があります。主なものが「傷病手当金」と「出産手当金」です。
 
傷病手当金は本人が病気やけがで会社に行けない状態の場合、病休期間中に給料の3分の2相当額が最長で1年6ヶ月支給されます。また、出産手当金も育休期間中に給料の3分の2相当が支給されます。例えば、毎月の給料が約30万円なら約20万円が受け取れる計算です。
 
こうした給付は、働き盛りにこそ心強いものです。共働きを続けるからこそ、いざというときに頼れる給付があることを知っておきましょう。
 

雇用保険の給付も

雇用保険に加入することにより受けられるのは、失業した時の手当が思いうかびますが、ほかにもあります。
 
例えば、「育児休業給付」や「介護休業給付」です。どちらも、休業期間中に給料の3分の2相当が支給されます。育児休業給付は保育園に入れないなどの場合、最長で2歳になるまで延長して給付が受けられます。親などの介護に従事する場合は、通算93日まで給付されます。育児や介護中に、お金をもらったうえで仕事をやめずに一定期間専念できます。
 
また、資格取得のため払った受講料の一部を支援してもらえる「教育訓練給付金」があります。訓練対象によって費用の20%から最大で70%がハローワークから支給されます(上限金額あり)。
 
このように、雇用保険は失業を予防する制度を設けています。働き続けられるようにサポートしてくれる給付をぜひ知っておきましょう。
(注:実際に給付を受けるには、各一定期間に雇用保険に加入する等条件があります)
 
なお、雇用保険は週20時間以上働く場合に加入することになります。保険料は令和3年度で収入×0.3%(※3)です。保険料負担のわりに給付が厚いのが雇用保険の特徴です。
 

収入のカベを超えると決めたら

収入を増やすということは、働く時間が長くなることを意味します。だからこそ、まず、自分自身のキャリアプランを見つめ直すことをお勧めします。
 
具体的には、5年単位で働く時間やなりたい姿を書き出していき、逆算して今の働き方をどの程度に設定するか、長期的な視点を持つとよいでしょう。そのうえで家事の分担などを家族で話し合い、無理のない働き方を目指しましょう。
 
(※1)適用になるパート社員の条件は以下のとおり。

●週の所定労働時間は20時間以上
●月額賃金は8.8万円以上
●2ヶ月以上の雇用が見込める
●学生でない

 
(※2)健康保険料率は東京都の基準。介護保険料負担なし。労使折半の本人負担分。
 
(※3)一般の事業で労働者負担分。
 
執筆者:波多間純子
㈱bloom代表。ファイナンシャル・プランナー(CFP(R)),キャリアコンサルタント

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