更新日: 2020.10.09 家計の見直し

家計を改善したいと思ったら、純利益に着目してみよう

執筆者 : 重定賢治

家計を改善したいと思ったら、純利益に着目してみよう
「お金を貯めたい、増やしたい。家計が赤字になるときがあるので改善したい」。
 
実際のご相談では、家計に関するお悩みや問題を解決することが多くあります。その際、問題がある、ないにかかわらず、多くの方がお金の流れる仕組みについて明確な考えを持っていない方が多いような気がします。
 
ちょっとしたポイントさえ押さえればすべてがつながるため、お金がどう流れるかについて一緒に考えてみましょう。
重定賢治

執筆者:重定賢治(しげさだ けんじ)

ファイナンシャル・プランナー(CFP)

明治大学法学部法律学科を卒業後、金融機関にて資産運用業務に従事。
ファイナンシャル・プランナー(FP)の上級資格である「CFP®資格」を取得後、2007年に開業。

子育て世帯や退職準備世帯を中心に「暮らしとお金」の相談業務を行う。
また、全国商工会連合会の「エキスパートバンク」にCFP®資格保持者として登録。
法人向け福利厚生制度「ワーク・ライフ・バランス相談室」を提案し、企業にお勤めの役員・従業員が抱えている「暮らしとお金」についてのお悩み相談も行う。

2017年、独立行政法人日本学生支援機構の「スカラシップ・アドバイザー」に認定され、高等学校やPTA向けに奨学金のセミナー・相談会を通じ、国の事業として教育の格差など社会問題の解決にも取り組む。
https://fpofficekaientai.wixsite.com/fp-office-kaientai

家計簿で意識すべきポイント

お金の流れをしっかりと掴むためには、家計簿をつける必要があります。
 


※筆者作成
 
この表はいわゆる家計簿ですが、会計的には「損益計算書(P/L)」と考え方は似ています。例えば、一般的な会社員のご家庭の場合、収入に給与・賞与、支出に基本生活費・教育関連費・住宅関連費・自動車関連費などが入り、収入から支出を差し引いた金額が純利益になるかと思います。
 
純利益は、簡単にいうと、毎月、毎年で余ったお金です。「家計が赤字、どうしよう」、「お金を貯めたい、どうしよう」など、家計についていろいろと考えることがあると思いますが、こんなときどうやって家計に余裕を持たせればいいでしょうか。
 
家計簿の目的は、収入と支出の差額である純利益を増やすことにあるため、これら3つの関係性を特徴として理解しておけば、答えは自ずと見つかるようになっています。
 
(1)収入を増やす
(2)支出を減らす
(3)純利益が増える

 
(1)か、(2)を実行するだけでも純利益は増えますし、もちろん、(1)・(2)の両方を行うと、純利益はより増えます。
 
この法則をもとに、「家計が赤字、どうしよう」を解決する場合、答えとしては「収入を増やせば、家計は黒字化する」、「支出を減らせば、家計は黒字化する」、「収入を増やし、支出を減らせば、家計はより黒字化する」となります。
 
また、「お金を貯めたい、どうしよう」を解決する場合は、目的はお金を貯めることなので、別のいい方をすると、純利益を増やす(≒お金を余らす)ことになります。
 
こちらも、「収入を増やせば、純利益が増える」、「支出を減らせば、純利益が増える」、「収入を増やし、支出を減らせば、純利益がより増える」という答えになります。
 
いわれてみれば当たり前ですし、そんなの分かってる、普段からやってるという方も多いかもしれません。でも、本当に重要な部分は次の考え方です。

純利益で家計の収益性を確認する

「家計が改善され、黒字化する」、「お金が貯まりやすくなる」というのは、単純に「純利益が増えた」ことを意味します。家計をいろいろと工夫した結果、純利益が増えたら万々歳ではありますが、より重要なのは、毎月、毎年、何%純利益を生み出させているかという点です。
 
これを別の表現でいうと「収益率」です。例えば、今月の収入が30万円、支出が25万円だった場合、純利益は5万円です。
 
このとき、わが家の今月の収益率は16.66%になります。1ヶ月で約17%の収益性があるため、このペースでいくと、1年間で月収の約204%の純利益を生み出せることができると判断できます。
 
この効果は家計における成長性への期待であるため、この視点を持っておくと、この収益エンジンを活用しながら資産形成をする場合、どのように貯蓄・運用していけばいいかの判断材料になります。
 
例えば、純利益5万円/月のうち1万円を毎月、確定拠出年金で運用していこうと考えます。これは、家計収益率の約3.33%を活用し、毎月、他の金融資産で運用することを意味します。
 
仮に投資信託で運用し、月1%の運用利回りだった場合、年間の総利回りが12%になります。この部分にかかる家計収益率は約3.36%/月になり、年間ベースでみると40.32%になったと判断できます。
 
収益率は、将来を予測する際、期待利回りになります。今の収益率から将来の期待利回りの試算に活用することができるため、将来の見通しにもとづいた家計運営がしやすくなります。

まとめ

家計簿をつけるだけでも、頭の中にお金がどう流れているかのイメージが生まれます。つけながら、課題に対してどうすればいいかのイメージトレーニングもできるため、これ自体、マネーリテラシーを磨く良い場にもなります。
 
あとは自分がどこに向かうために、どう進むかですが、家計簿はここまでも考える基礎訓練を提供してくれるため、用い方ひとつでさまざまな能力を身につけさせてくれます。
 
お金の話は簡単に済まそうと思えば済ませられるでしょう。重要なのは、何を考え、どう実行するかですが、「お金が貯まらない。どうしよう?」と思ったら、お金の流れがどうなっているかを頭の中でイメージしてみてくださいね。
 
執筆者:重定賢治
ファイナンシャル・プランナー(CFP)