更新日: 2024.10.07 働き方
130万を超えると扶養を外れるってほんと? 税金・社会保険の壁についてFPが解説
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。
広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
扶養についておさらい
・扶養控除とは?
まずは扶養の定義についておさらいしていきましょう。扶養には税制上の扶養と社会保険上の扶養の2種類があります。税制上の扶養は住民税や所得税に関係してきます。社会保険上の扶養については年金や健康保険に関係してくるものです。
・扶養を外れるとどうなるか?
税制上の扶養を外れてしまうと、扶養している人の所得税が増えてしまったり、扶養されている本人に住民税が発生してしまったりします。社会保険上の扶養を外れてしまうと、扶養されている人が自身で年金や健康保険に加入しなければならなくなってしまいます。
つまり、扶養を外れてしまうと扶養する人に負担が発生するのです。
自分は扶養に入れる?入れない?
扶養は誰でも入れるわけではありません。扶養に入れると認定されるには一定の条件を満たす必要があります。
・年収の計算の仕方
扶養に入れるか否かの基準の一つに扶養される人の年収があります。複数の会社で勤務している場合はそれぞれの給与全てを合算した金額が年収となります。ただし、交通費については注意が必要です。
税制上の扶養について判断する場合の年収は交通費を除いて判断されます。対して社会保険上の扶養を考える際は交通費を含めた年収で判断されるからです。
各壁を越えた場合のメリット・デメリット
扶養に入れるか否かの基準である年収について、「〇〇の壁」と言われることがあります。税制上の扶養では100万円、103万円、150万円、201万円の壁があります。
対して社会保険上の扶養では106万円の壁と130万円の壁があります。上記の壁を超えてしまうと扶養者や本人の税負担が重くなってしまったり、本人が自分自身で社会保険に入らなければならなくなってしまうおそれがあります。
では、それぞれの壁のメリット・デメリットについて解説していきます。
・100万円の壁
100万円を越えてしまっても直ちに扶養から外れるわけではありませんが、お住まいの自治体によって扶養されている本人に住民税が発生してしまいます。具体的な金額は自治体によって異なることがあるため、自治体へ確認するようにしてください。
・103万円の壁
103万円の壁は最も多くの人が意識している壁でしょう。103万円の壁は税制上の扶養から外れてしまうラインです。そうなると、扶養者は配偶者控除の適用を受けることができず、所得税と住民税の負担額が増加します。さらに、お金を稼いだ本人に所得税が発生します。
・106万円の壁
106円万の壁は社会保障上の壁になります。この壁を越えてしまうことで、扶養される本人が勤め先で健康保険と厚生年金、介護保険(40歳以上の場合)へ加入しなければならないことがあります。と言っても106万円の壁を越えた全ての人が対象となるわけではありません。
次のような条件に該当する場合です。
・勤務先の正社員数が501人以上
・所定労働時間が週20時間以上
・雇用期間が1年以上
・収入が月8万8000円以上
・学生ではない
・130万円の壁
130万円までいくと、勤務先の規模や労働条件にかかわらず勤務先の社会保険に加入する必要がでてきます。社会保険への加入は保険料の支払いが生じる半面、将来受け取れる年金額の増加やけがや病気の際に傷病手当金を受給できる可能性が生じるなどのメリットもあります。
社会保険への加入は、短期的な視点から見ると家計全体の手取りが減ってしまいマイナス的な側面を強く感じるかもしれません。
しかし、長期的な観点から見ると年金額の増加や傷病手当金の受給権などプラスとなる側面も持ち合わせています。社会保険への加入は原則130万円を超えた場合ですが、健康保険の組合によっては扶養に入る条件をもっと低い金額に設定していることもあります。
健康保険の正確な壁については勤務先に確認するようにしてください。
・150万円の壁
150万円壁はかつて105万円の壁と言われていました。この壁を越えてしまうと、年収の上昇に応じて徐々に配偶者特別控除(一定の条件に合致する配偶者を扶養している場合に最大で38万円の控除を受けられるというもの)の適用額が低くなっていき、扶養者の所得税や住民税の負担が増加していきます。
・201万円の壁
まだあまり一般的には浸透していませんが、201万円の壁と呼ばれる壁も存在しています。この壁は、ここを超えてしまうと「配偶者特別控除が適用されなくなってしまいますよ」というラインです。
201万円の壁と呼ばれているものの、厳密には201万6千円であり、201万円を超えた瞬間即アウト、というわけではありません。
よくある質問や勘違い
よくある質問として、どこの壁の範囲内で働くことがいいのかというものがあります。それについて一概に「こうだ」と断言することはできません。
家計の状況など、諸条件によって最適な働き方が変化するからです。また、よくある勘違いとして必ず「103万円以内に抑えないと損」という考えがありますが、それが必ずしも正しいとは言い切れません。家事と仕事の両立や働ける時間、ライフプランなどに応じて柔軟に決めていくことが大切です。
まとめ
働きに出られる時間やライフプラン、家庭の事情を考慮し、社会保険に加入できるメリットなど総合的に考え、どのような働き方が最適か今一度考えてみてください。
執筆者:柘植輝
行政書士