更新日: 2019.11.28 その他家計

増税で家計負担はどれだけ増える? 最も影響が大きいのは<二人以上の勤労者世帯・高齢夫婦無職世帯>

執筆者 : 岩永真理

増税で家計負担はどれだけ増える? 最も影響が大きいのは<二人以上の勤労者世帯・高齢夫婦無職世帯>
10月から食品などを除き、消費税が10%になりました。増税前から家計への負担が増えることへの不安がありましたが、実際に増税になってみて人々は家計の圧迫を実感しているのでしょうか?
 
消費の度合いによって感覚は違うので、消費が少なければ少ないほど、また、家計の食費に対する割合が高い人ほど、実感は薄いのかもしれません。逆に家計で食費の割合が低い人にとって、増税負担は重い実感があるかもしれません。平均的にはどうなのか、総務省の家計調査をもとに考えます。
 
岩永真理

執筆者:岩永真理(いわなが まり)

一級ファイナンシャル・プランニング技能士

CFP®
ロングステイ・アドバイザー、住宅ローンアドバイザー、一般財団法人女性労働協会 認定講師。IFPコンフォート代表
横浜市出身、早稲田大学卒業。大手金融機関に入行後、ルクセンブルグ赴任等を含め10年超勤務。結婚後は夫の転勤に伴い、ロンドン・上海・ニューヨーク・シンガポールに通算15年以上在住。ロンドンでは、現地の小学生に日本文化を伝えるボランティア活動を展開。
CFP®として独立後は、個別相談・セミナー講師・執筆などを行う。
幅広い世代のライフプランに基づく資産運用、リタイアメントプラン、国際結婚のカップルの相談など多数。グローバルな視点からの柔軟な提案を心掛けている。
3キン(金融・年金・税金)の知識の有無が人生の岐路を左右すると考え、学校教育でこれらの知識が身につく社会になることを提唱している。
ホームページ:http://www.iwanaga-mari-fp.jp/

増税による消費税の増額はいくら?

図表1は、2018年の総務省「家計調査」をもとに、さまざまな世帯の食費以外の消費支出を計算し、単純に消費税増税分の2%をかけることで、消費税の増税金額を月額と年額で表示しました。
 
【図表1】

 
総世帯でみると、1年あたりの消費税増税により増加すると考えられる金額は4万2875円となりました。消費税増税による影響がもっとも大きいのは、支出も多い二人以上の勤労者世帯で、1年の増加額は5万7438円と算出されました。
 
二人以上の勤労者世帯は、住宅ローンをかかえている、あるいは、子どもの教育費がかかる可能性も考えられるので、収支が黒字であってもお金を使う機会のたくさんある世代でもあります。同時に収入が得られる時期でもあるので、将来を見据えて着実に資産を増やす姿勢は大切です。
 
最も影響が少ない単身高齢者無職世帯では、1年の増加額は2万7180円ですが、もともと月々の収支の赤字が3万8670円と決して少なくないので、家計への負担も小さくありません。
 
同様に、二人以上の高齢夫婦無職世帯も、増税負担額は1年あたり4万871円ですが、月々の収支赤字が4万1872円ですので、こちらも負担は大きいといえます。
 

実は消費税増税前から節約志向だった!?

同調査によると、「2018年の総世帯(平均世帯人員2.33人,世帯主の平均年齢59.3歳)の消費支出は,1世帯当たり1ヶ月平均24万6399円で,前年に比べて実質では1.0%の減少と、5年連続の減少となった」とあります。
 
それは「総世帯のうち勤労者世帯(平均世帯人員2.65人,世帯主の平均年齢47.9歳)の実収入は、1世帯当たり1ヶ月平均49万2594円で、前年に比べ実質1.2%の減少となった」とあり、最も収入が多くなるべき勤労者世帯でさえも減収となっていることがわかります。
 
つまり、収入が減ったから支出も減らさざるを得なかったことも考えられます。
 
総世帯で前年より減少しているものは、被服費(-3.1%)、食費(-2.2%)、教養娯楽費(-2.0%)などです。逆に増えているものは、住居費(+3.6%)、教育費(+4.9%)、交通・通信費(+4.8%)などで、個人レベルではどうにもならない項目といえます。
 
人生100年時代と寿命は延び続け、細く長く生きる時代だと考えると、消費税増税前でも無駄遣いをしないように心掛けている様子がうかがえます。
 

6月末まではポイント還元でやりくり

キャッシュレス決済をすれば、増税後9ヶ月間(2019年10月1日~2020年6月30日)は、5%または2%還元になるお店の足並みもそろってきました。
 
増税になっても2%還元では実質負担がなく、ともすると5%還元の場合は実質3%割安になるので、ぜひとも利用したいところです。また、ポイント還元の対象外の店でも、独自の5%割引セール等を行っているところもあるようです。
 
ただし、キャッシュレスだからと無駄遣いしては本末転倒です。あくまでも自分の普段利用しているお店で、ポイント還元ができるかどうか、あるいは割引セールがあるか等をチェックするとよいでしょう。
 
お店によって、還元するために利用できる決済方法がクレジットカード、デビットカード、QRコード等それぞれ異なります。またその店で支払いには利用できますが、まだポイント還元の手続き申請中で実際には運用に至っていない、つまり還元の対象外の決済方法もありますので、決済時に確認が必要です。
 
執筆者:岩永真理
一級ファイナンシャル・プランニング技能士