更新日: 2024.10.07 ライフプラン
産休・育休中に個人単位の抵触日を迎えた派遣社員は派遣先に復帰できない?
それにより、同一の組織単位(課やグループなど)において継続して勤務できる期間は一定の例外を除き、原則3年と定められています。
では、その3年間の期間中、産休や育休を取得し、長期間派遣先を離れることとなった場合には、個人単位の抵触日はどうなってしまうのでしょうか。
Aさんの事例をもとに産休・育休と個人単位の抵触日について解説していきます。
Text:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。
広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
そもそも個人単位の抵触日とは
2015年9月30日、派遣労働者の雇用の安定やキャリアアップなどの観点から、派遣労働者が同一の組織単位において就業できるのは原則として3年を上限とする、いわゆる「個人単位の抵触日」が定められました。
これにより、3年を超えて同一組織単位で就業を続けるには派遣先での直接雇用や、派遣元と派遣社員の間で期間の定めのない雇用契約を結ぶなど、何らかの条件に該当することが求められるようになったのです。
では、この基礎知識をもとにAさんの事例についてみていきましょう。
なお、今回は便宜上産休と育休を合わせて半年間として考えていきます。
育休中に個人単位の抵触日を迎えることとなるAさん
Aさんは2015年10月1日からとある派遣先の経理課にて就業を開始しました。
そして、2018年4月30日まで、長期間休むことなく勤め続けていました。
その後、2018年5月1日から産休と育休を合わせて半年間取得し、11月1日から派遣先に復帰することとなりました。
その際、派遣元はもちろん派遣先の企業もAさんのポジションをそのままにしておき、Aさんがいつでも戻れるようにしていました。
ところが、11月1日、Aさんが実際に派遣先へ戻ろうとしたところ、派遣先において次の事実が問題となりました。
(1)Aさんは2015年10月1日に派遣されてきており、個人単位の抵触日は2018年10月1日に到来する。
(2)Aさんの復帰日は2018年11月1日であり、抵触日を超えている。
(3)派遣先、派遣元の両社がAさんの復帰を前提にポジションを確保していた。
(4)とするならば、Aさんは復帰できないのではないか。
さて、Aさんは派遣先へ戻ることができないのでしょうか。
個人単位の抵触日にはクーリング期間があります。
結論としてAさんは派遣先へ戻ることができます。
その理由はAさんが派遣先を離れていた期間にあります。
個人単位の抵触日には3カ月というクーリング期間が定められており、このクーリング期間を空けることで個人単位の抵触日はリセットされ、同一の組織単位に復帰したときでも新しく3年間のカウントが進行することとなるのです。
それは、派遣先や派遣元が育休・産休からの復帰を前提にポジションを確保していたとしても異なることはありません。
では、これらの考え方をAさんに当てはめて考えてみましょう。
Aさんは2018年5月1日に育休・産休によって派遣先を離れた後、同年11月1日に復帰しており、3カ月というクーリング期間を空けています。
とするのであれば、Aさんの個人単位の抵触日はリセットされ、派遣先に戻った2018年11月1日から新しく3年のカウントがスタートし、次の抵触日は2021年11月1日となる。
したがって、Aさんは問題なく派遣先へ戻ることができる。
ということになります。
個人単位の抵触日は確認しておくべき重要事項です
2018年の9月30日は個人単位の抵触日が施行されてから3年を経過する日です。
今年以降、抵触日の問題によって、派遣先を離れることとなる人が出てくることが予想されます。
派遣社員として働き続けていくのであれば、自身のキャリアをより明確にイメージし、個人単位の抵触日についてもしっかりと理解しておく必要があるでしょう。
Text:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士・2級ファイナンシャルプランナー