更新日: 2019.08.30 ライフプラン

奨学金の審査に通っても入学前には振り込まれません。入学手続き金は奨学金で払えない欠点!その対処法は?

執筆者 : 新美昌也

奨学金の審査に通っても入学前には振り込まれません。入学手続き金は奨学金で払えない欠点!その対処法は?
日本学生支援機構(旧日本育英会)の奨学金は、大学生の約3人に1人が利用している最もポピュラーな奨学金です。高校3年生の5~7月頃、在籍している高校で申込むことができます(予約採用)。
 
以前は無利子の第一種奨学金は、成績基準と家計基準を満たしていても予算の関係から採用されるのは僅かでしたが、現在は予算措置がとられ、ほぼ採用されることになりました。
 
しかし、奨学金の予約採用候補者になったにもかかわらず、大学等に合格しても進学を断念してしまうケースがどの高校でも数件あります。
 
なぜ、奨学金の受給が決まっているのに進学を断念しなければならないのでしょうか。その理由と対応策を解説します。

新美昌也

執筆者:新美昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/

奨学金の予約採用の流れ

大学等入学の前年度、高校3年(通信制などは4年)の5~7月頃に高校を通じて、インターネットで日本学生支援機構の奨学金を申し込むことができます。これを予約採用といいます。
 
募集時期は、第1回(第一種、第二種)は5月中旬~7月上旬、第2回(第二種)は10月下旬~11月下旬、第3回(第二種)は1月中旬となっています。ただし、第3回を募集する高校はほとんどないと思います。
 
また、第2回を募集しない高校もありますので、春に申込むようにしましょう。稀ですが、第二種奨学金の募集をしない高校もあります。在籍する高校ごとに対応が異なりますので、確認しましょう。
 
第1回に申し込むと、10月下旬頃に高校を通じて、「採用候補者決定通知」を交付されます。そして、大学等に進学後「進学届」を提出することで、正式に奨学生となります。
 

奨学金は入学前には振り込まれない

奨学金が子どもの口座に振り込まれるのは、大学等入学後です。しかも、初回の振込時期は4月からとは限りません。遅い場合は6月ということもあります。この場合は、4、5月分も一緒に振り込まれ、あとは毎月一定額が振り込まれます。
 
つまり、奨学金は入学前には振り込まれないというのが、奨学金の欠点です。
 

入学手続き時にまとまったお金が必要

私立大学等に合格した場合、合格後1~2週間以内に入学手続きとして最小限、入学金と前期分の授業料等を納付するのが一般的です。合格時は入学金のみ、前期分授業料等は3月末まで、という支払方法もあります。
 
いずれにしても、入学前にまとまったお金が必要です。入学金と前期分授業料等合わせ、70~100万円程度は必要です。
 
もし、納付期限までに納めることができなければ合格しても入学できません。
 
早ければ、AO入試は9月頃、推薦入試は10月頃、一般入試は2月頃には合格が決まりますので、入学手続きに必要なお金をこの時期までに用意しておかなければなりません。
 
保護者の中には高校で奨学金を申し込んでおけば、入学金等にも利用できると勘違いしている人が少なくありません。この結果、子どもが大学等に合格したにもかかわらず、入学金等の準備が間に合わず、進学を断念してしまうのです。
 

入学金等が不足する場合の対処法

先に説明したとおり、奨学金は入学金等には利用できません。入学金等が不足する場合の代表的な資金調達法とポイントを解説します。
 

●国の教育ローン

銀行などの教育ローンなどと比べ日本政策金融公庫の「国の教育ローン」は、返済期間や金利などで有利な点が多いので、最初に検討したい教育ローンです。ひとり親家庭などに優遇措置があるのが特長です。
 
お金が必要な時期の2~3カ月前から申し込みができます。審査でOKの返事をもらってもペナルティーなしでキャンセルができます。申し込みから融資まで最短で20日程度かかりますので早めに申し込みましょう。
 
借入限度額は子ども1人当たり350万円以内(留学資金は450万円以内)、返済期間は15年以内で、金利は固定金利で執筆時点で年1.76%(保証料別)です。利子を補給している自治体がありますので調べてみましょう。連帯保証人が立てられない場合、保証料を支払えば連帯保証人は不要です。
 
奨学金と異なり保護者が借ります。世帯年収の上限がありますので、上限を超えた場合は、銀行などの教育ローンを利用します。
 
なお、日本学生支援機構との併用は借主が違うので可能です。
 

●母子父子寡婦福祉資金貸付金

母子家庭の親、父子家庭の親などが利用できます。入学金等に利用できる就学支度資金と授業料などに利用できる修学資金があります。
 
大学に進学する場合、就学支度資金の貸付限度額は国公立自宅通学37万円、国公立自宅外通学38万円、私立自宅通学58万円、私立自宅外通学59万円です。
 
日本学生支援機構との重複利用はできませんので注意しましょう。返済期間は原則20年以内(自治体により異なる)、無利子です。
 
親が借りる場合、子どもが連帯借受人になります。連帯保証人は原則不要ですが、親の償還能力により必要とされる場合があります。
 
申し込みから融資まで1カ月以上はかかりますので、市区町村の担当窓口に早めに相談してください。
 

●労働金庫の入学時必要資金融資

日本学生支援機構の入学時特別増額貸与奨学金の採用候補者は、申し込み時の金額(最高50万円)の範囲内で、労働金庫がつなぎ融資をしてくれます。給付奨学金の一時金(24万円)についても対象です。国の教育ローンが利用できる場合は対象外です。
 
高校3年の春に奨学金を申し込んだ場合、採用候補者決定通知書の交付を受けるのは、10月下旬です。AO入試の入学金等には利用できない可能性がありますので注意しましょう。
 

●その他

入学金準備金の貸付けや、信用金庫から低利で借りられるように、融資あっせん制度(入学資金融資あっせん制度)を実施している自治体があります。入学資金融資あっせん制度は、自治体が利子や保証料を補助してくれるのでとてもお得です。
 
また、あしなが育英会や交通遺児育英会でも入学一時金を借りることが可能です。
 
Text:新美 昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。