更新日: 2024.10.07 ライフプラン

旦那の年収の高さと妻が使えるお金は必ずしも比例しない?旦那のケチはどこまで許されるのか

旦那の年収の高さと妻が使えるお金は必ずしも比例しない?旦那のケチはどこまで許されるのか
「年収1000万円以上の男性じゃないと結婚したくない」というような女性を見かけますが、年収の高さと妻が使えるお金は必ずしも比例しません。

いくら稼ぎがよくても、妻には最低限のお小遣いしか渡さないという男性もいます。

今回は、高年収の男性狙いで結婚したものの、苦しい生活を強いられてしまったS子さんの例をみてみましょう。
FINANCIAL FIELD編集部

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)

日々の生活における、お金にまつわる消費者の疑問や不安に対する解決策や知識、金融業界の最新トレンドを、解りやすく毎日配信しております。お金に関するコンシェルジェを目指し、快適で、より良い生活のアイディアを提供します。

池田理明

執筆者:池田理明(いけだみちあき)

弁護士/東京桜橋法律事務所

第二東京弁護士会所属。
中央大学法学部卒。弁護士登録後、東京桜橋法律事務所に勤務。平成25年以降は同所パートナー弁護士に昇格し、主にIT関連、エンタメ関連の企業法務を中心として、相続・不動産・債権回収・破産など幅広い法律事務に対応している。

座右の銘は「強くなければ生きられない。優しくなれなければ生きていく資格はない。」時には、クライアント自身の姿勢を問うようなアドバイスができるよう心掛けている。

 

「セレブ妻」狙いのS子さん。年収数千万円のIT企業社長と出会い…

S子さんは自分の実家がそれなりに裕福だったので、結婚後も生活水準を落としたくないと考えていました。
 
都内の女子大を卒業した後、自分の力で一部上場企業に就職し、それと同時に水面下で婚活を始めたといいます。エリート限定の婚活に的を絞ったS子さんは、若くて美人なこともあり、早々にいい相手が見つかりました。
 
後に旦那となるAさんは、当時36歳。すでにIT企業の社長として年収数千万円を稼いでいました。
 
とても羽振りがよく、S子さんと食事に行けば「一番高いコースを」と注文し、デートの度にブランド物のバッグや服を買ってくれたそうです。S子さんは、彼と一緒になれば理想通りの生活が手に入ると思いました。
 
デートを重ね、2人は1年後に結婚。Aさんは都内に一軒家を買い、S子さんは晴れて専業主婦になりました。
 
  

もらえるお金は週末の3万円のみ!?生活はかつかつ

順風満帆に始まったかのように見えたS子さんの結婚生活でしたが、その幸せは長く続きませんでした。
 
Aさんは釣った魚に餌をあげない、ケチなお金持ちだったのです。
 
Aさんは毎週末に、S子さんに3万円を渡しました。このお金は、S子さんのお小遣い、食費、雑費が含まれています。
 
Aさんは週に4日、家でご飯を食べました。その内容も、ご飯に汁物、おかずは3皿以上と、きちんとしたものを求めるため、食事にも手を抜くこともできません。
 
さらに、Aさんは束縛が強く、S子さんが働きに出ることも許さなかったといいます。
 
S子さんの生活はかつかつでした。きちんとした食材、必要な生活用品、最低限の化粧品などを買うと、自分で好きに使えるお金はほとんどありませんでした。
 
 

離婚に応じないAさん。「専業主婦にしてやって何が不満なんだ!」

S子さんは実家を頼ることも考えましたが、親に心配をかけてしまうと思い我慢していました。しかし、そんな生活が2年続く内に、S子さんはAさんに対して嫌悪感を持つようになってきました。「別れよう」結婚3年目にS子さんは決意しました。
 
S子さんがAさんに離婚を持ちかけると、Aさんは驚いて言いました。
 
「便利な場所に大きな家を買って専業主婦にしてやって、何が不満なんだ!そんな理由で離婚なんて許さないぞ」
 
Aさんは離婚に応じない姿勢です。S子さんはAさんと離婚することができるのでしょうか。
 
※物語はフィクションです
 
 

「旦那がケチ」という理由で離婚することは可能なのでしょうか。また、離婚の手続きを進めるにあたって注意すべきことはあるのでしょうか。東京桜橋法律事務所の池田理明弁護士にお伺いしました。

結論からいうと、離婚できる可能性は高いと思われます。
 
このケースでは、夫であるAさんは妻S子さんに対して週末に3万円を手渡すだけで、それ以上の生活費を渡していなかったということですから、婚姻を続けるために必要な「婚姻費用」を妻に支払ってこなかったといってよいと思われます。
 
これは、支払ってこなかった期間が3年にもわたるのであれば、裁判上の離婚が認められる離婚事由(悪意の遺棄)に該当する可能性が高い行為です。
 
また、このケースでは、離婚に伴う慰謝料請求の他に婚姻費用の問題も生じます。
 
婚姻費用の金額は、夫婦の年収などで決まるとされており、実務上は、東京・大阪の裁判官の共同研究の結果、作成された「婚姻費用算定表」を参考にするとおおむねの金額を確認することができます。
 
これによると、夫の年収が例えば2000万円・その配偶者に収入が無い場合は、婚姻費用は月額26~28万円とありますから、本件のS子さんのケースでも週3万円(月額約12万円)という金額は、明らかに少ないと思われますね。
 
S子さんが離婚話を持ち出しても、夫であるAさんがこれに応じようとしない場合、S子さんは家庭裁判所に離婚調停を申し立てることになります。
 
ただ、離婚調停を申し立てたといっても、実際に調停が成立するなどして離婚が成立するまでは夫婦ですから、当然、Aさんには婚姻費用を分担する義務があるのです。
 
それを実現するためには、S子さんは、離婚調停申立てと同時に婚姻費用の分担を求めた調停も申し立てる必要があります。
 
この時注意する必要がある事柄があります。
 
S子さんのケースでは、夫Aは結婚後3年間にわたって婚姻費用を負担してこなかった事実があるのですが、S子さんが婚姻費用を請求できるのは、実務上、裁判所に婚姻費用の分担を申し立てた時からと考えておいて間違いありません。
 
この点は、過去にさかのぼって婚姻費用の支払を命じることができるとした審判(最決昭和40年6月30日)もあるのですが、要分担状態が発生した時期の特定の問題から、申立て時からの婚姻費用の分担のみが認められるのが一般的です。
 
そういうことを考えると、離婚協議がまとまらなかった場合は、なるべく速やかに離婚調停を申し立て、同時に、婚姻費用の分担を求めた調停も申し立てるのが得策と思われます。
 
Text:ファイナンシャル フィールド編集部
監修:池田 理明 (いけだ みちあき)弁護士
東京桜橋法律事務所、第二東京弁護士会所属 http://tksb.jp/

IT関連・エンタメ関連の企業法務を中心に、相続・不動産・債権回収・破産など幅広い法律事務に対応


 

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