更新日: 2024.10.07 ライフプラン

「仕事も育児も家事も、こなしたいのに…」 働くママがキャリアダウンを考えるとき

「仕事も育児も家事も、こなしたいのに…」 働くママがキャリアダウンを考えるとき
正社員や契約社員などフルタイムで働くママは、一度は自分の働き方について考えたことがあるのではないでしょうか。
 
仕事・育児・家事を兼務することは簡単なことではありません。3つをこなしたいのに、中途半端になってしまい思いどおりに進まない。
 
そんなとき、働くママはキャリアダウンを考えることがあります。ただ、そこで大きな問題になるのはお金の問題。キャリアダウンによる収入減少について考えてみました。
 
前田菜緒

Text:前田菜緒(まえだ なお)

FPオフィス And Asset 代表
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者
確定拠出年金相談ねっと認定FP、2019年FP協会広報スタッフ

保険代理店勤務を経て独立。資産運用と保険に強いファイナンシャル・プランナーとして、子育て世代向けに相談やセミナーを行っている。全国どこからでも受講可能なオンラインセミナーを毎月開催。自宅で学べる手軽さと講座内容のわかりやすさが好評。子どもが寝てからでも参加できるよう、セミナーや相談は夜も行っている。

https://www.andasset.net/

 

キャリアダウンを考える背景とは

育休が明けて仕事復帰したものの、朝は子どもの支度に自分の支度、さらに家事とバタバタ。唯一ゆっくり食事がとれるのは会社でのランチのみ。
 
時短で早く帰るため、肩身は狭く「すみません、お先に失礼します」と謝りながら帰る毎日。
 
保育園にお迎えに行き、家に着くと子どもが寝る時間までのタイムリミットは3時間。その間に洗濯物を取り込み、子どもにご飯を食べさせ、夫の食事を作り、次の日の夕飯の下ごしらえ。さらにお風呂と戦争が始まります。
 
夫が仕事から帰ってくるのは、子どもが寝てから。子どもとゆっくりコミュニケーションを取りたくても取れる時間などなく、逆に時間に追われ、思いどおりに子どもが行動しないことにイライラがつのります。
 
それでもいまの仕事が好きで職場環境に恵まれていれば、仕事を続けることができます。しかし、子育てしながら働くことに理解のない人もいますし、時短によって責任ある仕事は任せてもらえず、やりがいを失います。
 
実際、子どもの発熱などでいつ休むかわかりませんから、自分から「その仕事を任せてください」と言えない立場。そうなると昇給は厳しくなり、キャリアップできない自分の将来が見えてきます。
 
子育ても仕事も中途半端という気持ちになり、「私はこのままでいいのだろうか」自分の働き方を見直しはじめるのです。
 
  

キャリアダウンによるメリットとデメリット

例えば、年収300万円、時短で働く正社員ママが会社員を辞めパートになったとします。パートの年収は社会保険の扶養の範囲である129万円とします(106万円のケースもあります)。
 
すると、国民年金において第2号被保険者から第3号被保険者に変わります。
 
●デメリット
1. 家計収入への影響

最大のデメリットは、家計収入が減ることです。年収300万円が129万円に減ったので、収入減は300—129=171万円と考えがちですが、年収300万円では社会保険料を支払い、129万円では支払いません。
 
したがって社会保険料の負担を15%として考慮すると、実際の差額は126万円になります。
 
さらに、所得税と住民税を差し引くと、手取りとしての差額は107万円となります(所得税と住民税合わせて15%として計算)。
 
月額換算で約9万円。つまり、毎月9万円手取りが減るのです。そうなれば、生活レベルを落とす必要性は大いにあるでしょう。外食を控えるのはもちろんのこと、子どもを遊びに連れて行く場所は無料の公園が多くなり、洋服へのこだわり、インテリアへのこだわりなど、自分のこだわりがあれば、それを捨てる必要があるかもしれません。
 
2. 厚生年金未加入による将来の年金減少

フルタイムであれば厚生年金に加入していましたが、扶養に入るということは国民年金のみ加入となります。当然、将来もらえる老齢厚生年金の金額は減ります。目安の金額は以下のようになります。
 
時短で働き続けた場合の年収× 0.55% ×キャリアダウンによる第3号被保険者の期間(年数)
 
例えば、先程の年収300万円のママが5年間のみ扶養に入り、その後扶養を外れ、厚生年金に加入した場合、減額となる老齢厚生年金は年額で300万円×0.55%×5年=82,500円ということになります。
 
3. 遺族厚生年金が減る

働くママに万一のことがあった場合、子どもが18歳未満であれば、遺族厚生年金が支給されます。しかし、第3号被保険者のパートの場合は、遺族厚生年金は支給されません。この点は生命保険でカバーすべきかどうか検討する必要があります。
 
4. 正社員登用への厳しさ

働くママは働くことが好きという人が多いです。パートでは物足りず、いつか正社員に戻ることを考えているかもしれません。しかし、正社員に戻ることがそう簡単なことではないことは、働くママ自身が一番よく知っています。
 
このように、キャリアダウンによるデメリットは非常に大きいといえます。しかし、それと引き換えに大きなメリットを得ることができます。
 
●メリット
1. 子供と過ごす時間が増える
2. 時間にゆとりができ、心にもゆとりができる
 
これはお金には換算できない大きなメリットです。ただし、パートとはいえ、6〜7時間働きますから、忙しいことには変わりありません。パートなら家の近くで働くことが多いため、正社員時代の通勤時間がなくなり、その分ゆとり時間が生まれます。
 
メリット・デメリットを、天秤にかけるのは簡単なことではありませんし、キャリアダウンが正解か不正解かは、個々人によるでしょう。
 
しかし、キャリアダウンによる家計への影響について悩んでいるのであれば、参考にしてください。働き方については多くのママが抱えている悩みであり、自分だけではないと励みにしていただければ幸いです。
 
Text:前田 菜緒(まえだ なお)
1級ファイナンシャルプランニング技能士、CFP(R)認定者

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