更新日: 2019.07.17 ライフプラン

母子家庭の子どもの大学進学(2)教育資金を借りるときの支援策とは

執筆者 : 新美昌也

母子家庭の子どもの大学進学(2)教育資金を借りるときの支援策とは
第1回は、経済的に厳しいひとり親家庭の子どもが、大学進学するための支援制度として、国立大学等の授業料減免制度や給付型奨学金について解説しました。

今回は、ひとり親家庭が教育資金を借りるときに、優遇を受けられる貸付制度を中心に紹介します。
新美昌也

執筆者:新美昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/

ひとり親家庭向け無利子貸付制度

ひとり親家庭は、母子父子寡婦福祉資金貸付金を利用できます。大学等の入学金に利用できる就学支度資金と、授業料等に利用できる修学資金があります。借入限度額は次のとおりです。
 
●大阪府の場合
・就学支度金
大学、短大、専門学校の場合
私立:(自宅通学)58万円以内、(自宅外通学)59万円以内
国公立:(自宅通学)37万円以内、(自宅外通学)38万円以内
・修学資金(月額)
大学の場合
私立:(自宅通学)8万1000円以内、(自宅外通学)9万6000円以内
国公立:(自宅通学)6万7500円以内、(自宅外通学)7万6500円以内
短大、専門学校の場合
私立:(自宅通学)7万9500円以内、(自宅外通学)9万円以内
国公立:(自宅通学)6万7500円以内、(自宅外通学)7万6500円以内
 
●東京都の場合
・就学支度金
大学、短大、専門学校の場合
私立:59万円以内
国公立:38万円以内
・修学資金(月額)
大阪府と同じ。
 
日本学生支援機構奨学金貸付対象者については、必要と認められる場合、借入限度額から日本学生支援機構貸付額を差し引いた差額の範囲内で、借入が可能な場合がありますので、事前に確認しておきましょう。
 
借入期間は、原則、その学校の定める最短修業年限までです。自治体によって、最短修業年限を超えた場合も利用できる場合があります。据置期間が卒業後6カ月あり、返済期間は20年以内です。ただし自治体によって、返済期間はもっと短い場合もあります。利子は無利子です。
 
親が貸付を受ける場合には、子が連帯借り主となり、連帯保証人は原則不要ですが、親の収入状況によって連帯保証人が必要になる場合があります。
 
相談・申し込みについては、市区町役場の相談窓口または福祉事務所にお問い合わせください。民間と違い、審査及び交付にかなり時間がかかりますので、余裕をもって必ず事前に相談することをお勧めします。
 
特に、入学手続き時納付金の納付期限は一般的に合格発表後1~2週間以内と短期間なので、納付期限に間に合うか必ず確認しましょう。
 
また、入学時納付金は、入学金と前期分で70万円以上かかることが多く、母子父子寡婦福祉資金貸付金だけでは足りないので、銀行等の教育ローンよりも有利な点が多い国の教育ローンも申し込んでおきましょう。
 
母子父子寡婦福祉資金貸付金は、条件や内容が自治体によって異なるので、お住いの地域の市区町村役場の担当窓口で事前に確認しておきましょう。
 

ひとり親家庭が優遇を受けられる教育ローン

日本政策金融公庫の教育ローン(国の教育ローン)は、ひとり親家庭の場合、金利・保証料低減、返済期間延長といった優遇があります。具体的には。金利は通常よりも-0.4%、保証料は通常よりも3分の2、返済期間は通常より3年長い18年以内となっています。
 
100万円を15年間、元利均等払いで返済する場合、通常の金利(1.76%)であれば、毎月の返済額は6400円、総返済額は113万7800円になります。連帯保証人を立てない場合の保証料は5万3991円です。一方、ひとり親家庭の場合、金利は1.36%なので、毎月の返済額は6200円、総返済額は110万5400円となります。保証料は3万5994円です。
 
多少でも優遇が受けられるのはうれしいですね。
 
利用者全体に占めるひとり親家庭の割合は22.3%(平成28年度)です。融資実績は2万6281件。母子家庭2万2369件、父子家庭3912件となっています。
 
日本学生支援機構の奨学金は入学後に振り込まれるため、入学金等には間に合いません。
 
このような場合に、教育ローンを利用します。国の教育ローンの融資限度額は学生1人あたり350万円(6カ月以上の留学資金は450万円)で、お金が必要な時期の2~3カ月前に申し込みができます。
 
融資OKの返事をもらっても、借りる必要がなくなった場合キャンセル自由ですので、入学金等の資金が不足している人は早めに申し込みましょう。合格後の申し込みでは、入学金等の納付期限に間に合いません。
 

労働金庫(ろうきん)の「入学時必要資金融資制度」

国の教育ローンを申し込んだけれども融資できない旨通知を受けた場合、日本学生支援機構の入学時特別増額貸与奨学金を利用できることが決まっている採用候補者は、入学前の入学金・授業料について労働金庫(ろうきん)から「入学時必要資金融資」(つなぎ融資)を受けられる可能性があります。
 
なお、労働金庫(ろうきん)の「入学時必要資金融資制度」は、国の教育ローンが利用できる場合や、国の教育ローンの採用条件を満たさないために融資が受けられなかった場合は対象外です。
 
融資限度額は申込時に選択した入学時特別増額貸与奨学金の額(10~50万円)になりますので、50万円を選択しておきましょう。
 
高校3年生(卒業年次)の春に奨学金の予約をすると、採用候補者の決定通知が学校に届くのが10月下旬ごろです。その後、労働金庫に申し込むことになりますので、AO入試・推薦入試の入学金等には間に合わない可能性があります。母子父子寡婦福祉資金貸付金も申し込んでおきましょう。
 

日本学生支援機構の無利子奨学金(第一種奨学金)

ひとり親家庭だけを対象としたものではありませんが、勉強を頑張れば、日本学生支援機構の無利子奨学金(第一種奨学金)に採用される可能性があります。評定平均値が5段階評価で3.5以上が申し込み条件です。なお、住民税非課税世帯は、実質的に成績基準が撤廃されました。
 
以前は、成績基準を満たしても、採用人数が限られていたので採用されない可能性がありましたが、第一種奨学金の予算が増えたので、基本的に申し込み基準(学力・家計)を満たせば全員採用される方向です。
 
有利子の第二種奨学金に比べ、借りることができる最高月額が低いので、足りない場合は、第二種奨学金を併用して賄いましょう。家計基準は、併用する場合が最も厳しいですが、ひとり親家庭であれば多くは併用の家計基準を満たすと思います。
 
なお、第二種奨学金は有利子ですが、非常に低金利です。平成30年3月の利率は、利率固定方式で0.27%、利率見直し方式で0.01%です。
 
Text:新美 昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。

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