更新日: 2020.05.12 不動産投資

いまさら聞けない不動産投資の基本(5)入居者の目線で見る物件選定

いまさら聞けない不動産投資の基本(5)入居者の目線で見る物件選定
これまで4回に亘り、不動産投資の歴史やメリットデメリット、長期投資ならではの物件選びの考え方についてお伝えしてきました。
 
最近の入居希望者はほとんどの方がまずインターネットを通じて物件を探します。投資物件を選定する際は、家賃を支払っていただく入居者がどのように物件探しをしているかを知っておくべきでしょう。
 
今回は、「入居者の目線を意識した物件選定」について具体的に考えたいと思います。
 
西山広高

執筆者:西山広高(にしやま ひろたか)

ファイナンシャル・プランナー、宅地建物取引士、西山ライフデザイン代表取締役

「円満な相続のための対策」「家計の見直し」「資産形成・運用アドバイス」のほか、不動産・お金の知識と大手建設会社での勤務経験を活かし、「マイホーム取得などの不動産仲介」「不動産活用」について、ご相談者の立場に立ったアドバイスを行っている。

西山ライフデザイン株式会社 HP
http://www.nishiyama-ld.com/

どのような人が住むのか

不動産投資の場合、重要なのは「安定した賃料が得られること」「入居率を高く維持できること」です。入居者の需要がなければ話になりません。そして、物件の立地や間取り、面積によって住む人はある程度限定されてきます。
 
もちろん、ファミリー向け戸建て住宅が多いエリアでも単身者向けのアパートの需要がまったくないわけではありません。しかし、そうした場所では単身向けの人が興味を持ちそうな付加価値が必要になります。
 
「自分が入居者の立場だったらどのように検索するだろう」と考えながら不動産サイトで物件を検索してみてください。
 
ワンルームに住む学生、独身や単身赴任の社会人などの多くは、日中は学校や会社に出るため、家で過ごすのは夜と休日が中心。平日の昼間はほとんど家にいないため、周辺環境よりも利便性、特に交通アクセスの良さであると考えられます。
 
ファミリーの場合はまた違った価値観があるでしょう。子どもの人数によって必要な面積や間取りも違いますし、通う学校への距離やその学校の評判なども影響します。スーパーなどの生活利便施設へのアクセスが良いことも重要です。
 
その他にも夫婦二人だけの世帯の場合もあるでしょう。ある程度のグレードやバリアフリーに配慮された物件であれば高齢者を対象と考える場合もあります。どのような人が住むかを想定し、その物件がそのマーケットに適しているかを見極めることも必要です。

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どのように検索されるのか

検索サイトでは「沿線から調べる」「住所で調べる」などから始まり、駅から近い物件にこだわる人であれば駅徒歩○分で物件を絞り込むでしょう。検索サイトで条件を絞る際に項目が「プルダウン」で選択できるようになっているのがほとんどです。
 
不動産業のルールで、最寄りの駅からの徒歩時間の表示は、直線距離ではなく実際に歩くルートの距離で80mを1分として計算することと決められています(途中が坂道や歩道橋などの階段でも平面距離で1分80mです)。
 
仮に駅から歩く距離が570mの物件の場合570÷80=7.125となり、1分以下の端数を切り上げて8分と表示しなければなりません。560mならば7.0で7分と表示できます。10mの差ですが、検索上は大違いです。
 
プルダウンの選択肢が「7分以内」の次が「10分以内」であれば、駅から570mの物件は「7分以内」までで選択した人の候補にしか表示されません。絞り込みに耐えられる物件であるために、取得する物件は駅から何分なのかはしっかり押さえておかなければなりません。
 
あわせて、周辺の競合物件の状況も把握しておく必要があります。○○駅徒歩5分の1Rで検索したら1000件以上も候補がヒットするケースもあります。この中から自分の物件を選んでもらうためには他にも何か特徴が必要です。
 
また、賃料が安い物件を希望する人は○○円以下で絞り込んでいくでしょう。不動産投資で賃料が下がれば投資利回りも下がります。値下げしないと入居者が決まらないようになってしまうと回復するのは困難です。
 
新築・築浅の物件は古い物件より高めの賃料を設定しても入居者が入る可能性があります。しかし、いずれは古くなることを考え、将来の賃料下落もある程度想定しておくべきです。どうしても新築や築年数の浅い物件が良い人もいれば、家賃が安いほうが良いという人もいます。
 
眺望が良い部屋、収納がたくさん欲しい、自転車置き場が欲しい、近くにコンビニがないと困る、バルコニーが広い、ロフトが欲しい、ウォシュレットや風呂の追い炊き機能、最近では宅配ボックスやオートロックは必須、などこだわりポイントは非常に多岐にわたります。

個性で魅力を引き出す

不動産にはそれぞれに個性があります。駅から近ければ必ず埋まるとは限りませんし、駅から遠くても何らかの魅力があり常に入居者がいる物件もあります。
 
例えば「学校や職場に近くそこに通学・通勤する人たちに便利」などのように立地で差別化ができるケースもありますし、「ペットが飼える」「楽器の演奏ができる」中には「ド派手な内装」が一部の入居希望者にうけるケースもあります。
 
他にも「海が見える」「富士山が見える」「夜景がきれい」など眺望が良い物件などもその物件の個性であり、他の物件では得られない魅力でしょう。
 
海の近くでアパート経営をしている私の知人は、室内にバイクやサーフボードが持ち込めるよう扉を引き戸にし、玄関を広めの土間にしたり、大型のペットを飼うことを認めていたりする物件を所有しており、キャンセル待ちになっているとのことでした。
 
こうした物件は希少であるため、安定的に入居者が確保でき、物件の立地以上の価値があるとも考えられ、周辺相場よりも高めの家賃を得られる可能性もあります。
 
しかし、ペットが飼える部屋は臭いがついたり壁紙が傷ついたりするため、入居者が変わるたびに壁紙などの貼り換えなどが普通の物件よりも頻繁に必要になります。楽器が弾ける部屋は防音対策が欠かせず、普通の物件では対応できません。
 
このように、入居者がキャンセル待ちになるような物件は一般には売りに出ません。新築時からオーナーが入居者のターゲットを絞り、付加価値を付け、こだわった仕様にして建築されたものがほとんどです。
 
オーナーもリスクはありますが成功すれば一般に売りに出される投資用物件よりも高い利回りを稼ぎ出す可能性があります。
 
そうした物件は、その物件が立地する場所にそうした需要があることが重要になり、そのエリアの特性、居住者の生活スタイルなどを分析し、把握しているからこそ実現できるものです。
 
賃貸用不動産では、その住戸に入居者が想定した家賃で入ってくれれば良いのです。すべての人に気に入ってもらう必要はありません。老若男女、誰にでも受け入れられる必要はないのです。
 
数は少なくてもその希少性や特徴に一定の需要があれば投資として成功する可能性は高くなります。

現地で確認すること

最近不動産投資を始めた方の中には一度も物件を見ないまま購入される方がいるようです。不動産のプロとしては信じられないことです。不動産のオーナーになるということは事業者、プロになるということです。物件選定の際には必ず現地へ足を運んでください。
 
最近はGoogle Mapのストリートビューなどであたかも現地を見たかのような映像を見ることができますが、やはり現地は自分の目で確認することが必要です。
 
あわせて現地周辺の公共交通機関やスーパー、コンビニなどの利便施設へのアクセス。音や振動、臭いなど現地に行かなければわからないことがたくさんあります。
 
入居者もほとんどの人が最終的には物件を見て決めます。オーナーとしても入居者希望者が気に入りそうなポイント、敬遠しそうなポイントについて把握しておくべきでしょう。それが入居者募集の際のセールスポイント、差別化ポイントになります。
 
不動産投資の熟練者は多くの物件を見て、さまざまな経験をもとに物件選定をします。現地も見ずに大金を投資するのはあまりにも危険すぎます。

まとめ

不動産に同じものはありません。同じマンションの同じ間取りの部屋でも日当たり、景色などが少しずつ違いますし、階が違えば賃料も違うはずです。建物が違えばさまざまな差があります。中古物件であれば前に住んでいた人の扱い方も違います。入居者はその小さな違いが気になったりするものです。
 
投資用不動産は自分が住むためのものではありませんが、そこに住む人をイメージできるかは重要だと思います。また、公共交通機関へのアクセスや周辺環境などは現地を見ないとわかりません。
 
物件選定の際には入居者の立場になってイメージしておくことも重要です。次回は不動産投資の事業収支の考え方についてお伝えします。
 
執筆者:西山広高
ファイナンシャル・プランナー、宅地建物取引士、西山ライフデザイン代表取締役


 

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