更新日: 2020.04.16 不動産投資
いまさら聞けない不動産投資の基本(3)不動産投資のデメリットとリスク
不動産投資も「投資」である以上、メリットばかりではなくデメリットやリスクもあります。大きな資金を投入することになるため、失敗すると回復が難しく、場合によっては生活に影響するほど大きな損失を抱え込む可能性もあります。
今回は、不動産投資のデメリットとリスクについてお伝えしたいと思います。
執筆者:西山広高(にしやま ひろたか)
ファイナンシャル・プランナー、宅地建物取引士、西山ライフデザイン代表取締役
「円満な相続のための対策」「家計の見直し」「資産形成・運用アドバイス」のほか、不動産・お金の知識と大手建設会社での勤務経験を活かし、「マイホーム取得などの不動産仲介」「不動産活用」について、ご相談者の立場に立ったアドバイスを行っている。
西山ライフデザイン株式会社 HP
http://www.nishiyama-ld.com/
目次
不動産投資のデメリット
不動産投資も資産活用、資産運用の手法の1つですが、他の投資とは異なり、「現物投資」すなわち、実在する資産に直接投資するという点で、ほかの投資方法とは異なる特徴があります。
不動産投資には、どんなデメリットとリスクがあるのでしょう。
主なものとしては、
1. 家賃の下落、空室リスク
2. 金利上昇リスク
3. 取得・保有に費用がかかる
4. 建物や設備の老朽化をカバーする費用がかかる
5. 売却時にも費用と時間がかかる
6. 不動産価格が下落する可能性がある
7. 相続時にもめるかもしれない
などがあります。1つずつ見ていきましょう。
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1. 家賃の下落、空室リスク
不動産投資を行ううえではしっかりとした事業性の確認・検証を行うことは基本ですが、最も重要なポイントは
・長期間家賃が下がらないこと(賃料の下落リスク)
・安定して入居者がいること(空室リスク)
の2つです。
不動産投資を検討する際、投資用不動産を販売する業者から事業収支計画書を提示されることが多いと思います。私のところにも、業者から提示された事業計画書の妥当性について、セカンドオピニオンを求めてご相談に見える方がいらっしゃいます。
不動産販売業者は、物件を購入してもらうことで仲介手数料という報酬を得ます。多くの業者が何とか売りたいと思うため、事業計画書も楽観的な計画になっていることが少なくありません。
賃料を高めに想定していたり、空室率を低め、場合によってはゼロでシミュレーションしているケースもあります。
現実的に考えて、空室率がゼロということはあり得ません。ワンルームの場合、入居する人が学生であれば、卒業時には退去するでしょうし、社会人でも転勤などの都合で退去することがあるでしょう。
立地などの条件が良い物件は、退去後1~2ヶ月前後で次の入居者が決まることも多いと思います。それでも4年住んだ人が退去し2ヶ月間空室ならば、空室率は2÷48≒4%です。
周辺に競合物件が多かったり、希望家賃が周辺相場に比べ高い物件は、2ヶ月では決まらないこともあります。事業としての安全を考慮するならば、少なくとも5~10%程度の空室率は見込んでおいたほうが良いでしょう。
また、競合物件が増えてくると、賃料を下げないと入居者が決まらないこともあります。立地を含めた物件の特性を把握し、長期にわたって賃料を維持できるかどうかについても、考慮しておく必要があります。
2. 金利上昇リスク
物件購入の際、ほとんどの人が利用する融資には、当然金利がかかります。業者が作成する事業計画書では、当初の金利がそのままずっと継続するように設定しているケースがほとんどです。
今は超低金利ですので、これ以上金利が下がる余地はほとんどないといえます。不動産投資の場合、融資の返済期間は長期に設定する場合がほとんどで、変動金利での借入れの場合、返済期間中に金利が上がる可能性は否定できません。
また、投資不動産向けローンは住宅ローンよりも高めの金利が設定されているほか、変動金利で借り入れる場合には、将来の金利上昇の可能性も否定できません。
融資を利用すると自己資金の投入は少ないかもしれませんが、大きな額の借入れですので、金利も小さい金額ではありません。わずかな金利の上昇でも収支に影響します。事業収支を検討する際には、金利上昇の影響も十分に考慮しておく必要があります。
3. 取得・保有に費用がかかる
不動産を取得・保有する際には、さまざまな費用がかかります。取得時には仲介手数料、不動産取得税、ローン手数料、契約書に貼付する印紙代、登記に必要な登録免許税や司法書士報酬などがかかります。
また、保有期間中は入居者がいなくても毎年固定資産税・都市計画税のほか、マンションであれば管理組合に支払う管理費や修繕積立金も必要です。賃貸借契約や鍵の受け渡し、原状回復の確認などの入退室管理を業者に依頼する場合は、その費用も考慮する必要があります。
4. 建物や設備の老朽化をカバーする費用がかかる
内装や設備は年を経るごとに老朽化します。壁紙などを張り替えは10年に一度は行う想定をしておいたほうが良いでしょう。
また、給湯器やエアコンなどの設備の寿命は、15年から20年程度です。老朽化や故障の際は修理・更新費用も必要です。長期間保有している間にはキッチンやトイレ、ユニットバスなどの更新が必要になることもあります。
現在の借地借家法では、普通に使っていて当然に劣化、老朽化するものは貸主(大家)が修繕する義務を負うため、必要な費用は事業計画の中では見込んでおく必要があります。
敷金を預かるケースも多いと思いますが、返還することが前提です。通常損耗の補修などに敷金は使えません。クリーニングや鍵の交換費用などのほか、借主に負担してほしい費用については、あらかじめ契約時に特約として具体的な金額も含めて提示しておく必要があります。
5. 売却時にも費用と時間がかかる
「不動産」という言葉は文字どおり「動かせない資産」という意味がありますが、もう1つ「流動性が低い」という特徴があります。
金融資産と異なり、不動産の場合は売却しようとしても、すぐには現金化できません。また、ローン残高が大きい状態では、その不動産を担保に金融機関から追加で借り入れることも難しいでしょう。
不動産を売却する場合、一般的には不動産業者に売却を依頼し、買主を探し、価格を含めた条件交渉を行い、条件が折り合えば契約を行います。
引渡時には、買主に物件に関わる書類や鍵(自分で持っていなければその旨を記した書類)などを引き渡し、融資を受けている金融機関に返済するとともに、抵当権を抹消するための書類を受領し、所有権移転と抵当権の抹消登記を司法書士に依頼します。
これらの手続きには、少なくとも2~3ヶ月程度は見ておいたほうが良いでしょう。急な出費には対応できないというデメリットがあります。
6. 不動産価格が下落する可能性がある
売却時に不動産価格が上がっていれば、売却益(キャピタルゲイン)が得られることは前回のメリットの項目で説明しましたが、当然下落するリスクもあります。特に人口が減少していく社会は、日本が初めて直面する現実です。
不動産は動かすことができません。物件の選定を行う際にも、その立地の将来性や災害リスクなども十分に考慮しておく必要があります。物件選びのポイントについては次回のコラムで詳しくお伝えしたいと思います。
7. 相続時にもめるかもしれない
30代、40代であれば、自分の身に万が一のことが起きたときの相続のことなど、考えることもないかもしれません。しかし、そのときはいずれやってきます。いつか必ず訪れるそのとき、不動産が遺された人たちの争いの種になる可能性もあります。
まず、不動産を共有で相続するのはさまざまなトラブルの元です。修繕や売却などの際には共有者全員の同意が必要になります。
共有者同士のコミュニケーションが密に取れていればまだしも、もしなかなか連絡が取れない、あるいは意思統一ができないといった場合には、所有者だけでなく入居者にも迷惑が及びかねません。不動産は分割できない資産と考えておくべきです。
また、不動産には同じものはありません。複数の不動産を所有していた不動産オーナーが亡くなり、残された人がそれぞれを相続するとき、相続する人がほしい不動産とほしくない不動産、魅力的な不動産と負担にしかならない不動産などがあった場合、遺産分割方法でもめる可能性があります。
かといって、売却して現金で分ける場合には時間がかかることは先述のとおりです。相続税を節税する目的で不動産投資を行う場合などは、特に相続の方法なども併せて検討し、できれば相続人になる人たちとも相談し、遺言書を残しておくべきでしょう。
まとめ
不動産投資は大きな資金を投入して行うため、慎重に検討したうえで取り組む必要があります。投資用不動産を販売する会社は購入してもらうことで報酬を得るだけで、購入後のフォローまでしてくれるところはまれです。
ましてや、想定していた賃料では入居者が集まらないような場合でも責任を取ってくれることはありません。
また、不動産投資を行う人は「一般消費者」ではなく「事業主」になるため、消費者保護法の対象でもありません。投資は自己責任。これは不動産投資にもいえることです。
不動産投資は慎重に検討すればリスクの低い投資法ですが、業者に進められる物件はより慎重に検討する必要があるといえるでしょう。
次回は、物件選びのポイントについてお伝えします。
執筆者:西山広高
ファイナンシャル・プランナー、宅地建物取引士、西山ライフデザイン代表取締役