更新日: 2020.03.14 不動産投資

投資用不動産の不正融資事件は何が問題になったのか?

投資用不動産の不正融資事件は何が問題になったのか?
2018年に発生した「かぼちゃの馬車事件」に端を発し、いくつかの「投資用不動産への不正融資」に関する事件が話題になりました。
 
以来、金融機関の投資用不動産向け融資に対する姿勢は厳しくなり、ある程度の自己資金が必要になるケースが増え、審査も厳しくなっています。
 
最近では、住宅ローン取り扱い大手でも不正融資の疑いが浮上しました。自己防衛に役立てていただくためにも、不正融資事件で何が問題になったのかを考えます。
 
西山広高

執筆者:西山広高(にしやま ひろたか)

ファイナンシャル・プランナー、宅地建物取引士、西山ライフデザイン代表取締役

「円満な相続のための対策」「家計の見直し」「資産形成・運用アドバイス」のほか、不動産・お金の知識と大手建設会社での勤務経験を活かし、「マイホーム取得などの不動産仲介」「不動産活用」について、ご相談者の立場に立ったアドバイスを行っている。

西山ライフデザイン株式会社 HP
http://www.nishiyama-ld.com/

投資用不動産向けの不正融資問題とは

1月に、住宅ローンを中心に扱う金融機関の不正融資に関する疑いが浮上しました。借り入れを希望する人の源泉徴収票などを改ざんしたり、周辺相場よりも大幅に高い価格でマンションを購入させたりするなどの事例があったことがわかっています。
 
今回の事件のほか、先般の「かぼちゃの馬車事件」に端を発したスルガ銀行の事件、アパート販売のTATERUと西京銀行の事件、西武信用金庫の不正融資事件などでも、金融機関と共謀して不正が行われたとみられ、本来であれば借りられないはずの人にも融資が行われました。
 
これらも今回の事件と同様のものだったといえます。

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「住宅ローン」と「投資用不動産向けローン」の違い

マイホームを購入するときにはほとんどの人が住宅ローンを利用しますので、金融商品として比較的身近なものだといえます。
 
「住宅ローン」は「自己居住用」の物件にのみ適用され、「投資用物件」への融資商品である「アパートローン」などと比べ、非常に低い金利で融資を受けることができます。
 
一方、「アパートローン」などの不動産投資用のローンは、住宅ローンに比べると利用する人が少ないのは当然です。不動産投資に興味を持つ人がいれば不動産業者は多くの場合「アパートローン」を組むことを前提に進めます。
 
投資用不動産向けローンは住宅ローンに比べると金利が高く、審査のポイントも違います。

居住用とは異なる投資用物件向け融資審査のポイント

大きな違いは「対象物件の資産評価」です。
 
投資用不動産の場合、その物件を売却する場合の評価が重要になります。金融機関としては、返済が滞るなどした場合に、その物件に設定する抵当権を行使して物件を差し押さえ、競売などにかけることによって、融資残高を回収できるかが最大のチェックポイントになります。
 
一方、住宅ローンでは、よほどのことがない限り投資用物件ほど厳格な審査は行われません。むしろ、借り入れる本人の収入状況などのほうが重視されます。

一連の不正融資事件に共通する手口

一連の不正融資事件は金融機関の行き過ぎた「融資偏重主義」と不動産関連業者の「売上至上主義」の利害が一致したものだと考えられ、消費者、情報弱者に対する「詐欺」に近いものがあります。
 
不動産を購入する際、事前に不動産業者は融資を受ける人の収入状況や資産状況などを確認します。仮審査、本審査は金融機関が行いますが、不動産会社は経験上、融資が下りるかどうかについて、あらかじめお客さまからお伺いしている情報からある程度予測できます。
 
一連の不正融資事件では、無職で年収300万円未満の人でも審査が通っていました(よほど預貯金が潤沢にある人などでないとありえないと考えられます)。他の不正融資事件でも、融資審査書類である収入額が記載された源泉徴収票や、預金通帳の預金残高が改ざんされていました。
 
これらの事件では、本来借りられないはずの人でも借りられるように不動産業者などが審査書類を操作していました。
 
その他にも、一連の投資用不動産向け不正融資事件では、周辺相場より大幅に高く販売したり、高い入居率が望めない物件を「サブリース」で借り上げ、契約更新時にサブリース価格を引き下げたりするなど、悪意のある販売手法を取っていました。

不動産投資のリスク

最近は超低金利時代であることから、金融機関に預けても殖やすことができない資金、投資マネーが不動産投資に向かっています。需要があれば価格が上がるのは当然であり、結果として不動産投資物件の予想利回りも低下しています。
 
裏を返せば、金利が上昇局面に入ると投資マネーが不動産投資から他の金融商品などに向かい、不動産価格の下落につながることになります。
 
あわせて、日本では今後の人口減少が確実なことから、立地や物件の特性によっては入居者確保が困難になる物件が増加することも懸念されます。投資用不動産は賃料収入を得るものですので「家賃が維持できるか」「入居率を維持できるか」が最重要です。
 
そのためには投資をする人自身がその投資リスクを把握する必要があり、そのための情報収集は自分の責任で行う必要があります。

投資用不動産を購入の際の注意

不動産投資にはリスクがあります。
 
本当にお客さまのことを親身になって考える不動産業者、担当者を見極めることも重要です。不動産業者や金融機関が詐欺のような手法を用いて販売、融資することは問題外ですが、不動産投資をしようとする人は、自分自身でそのリスクや物件の特性などを把握し、投資判断しなければなりません。
 
不動産の購入は大きな金額です。失敗すると今後の生活にも大きな影響が出かねません。
 
不動産投資を行う人は「消費者」としての「消費者保護法」の対象ではなく、保護は受けられないのが原則です。当然のことながら「不動産投資事業」を行う「事業者」としてのリスクを負うことを心得ておかなければなりません。
 
不動産業者や担当者がどんなに良い人に見えても、慎重に検討してください。金融機関が審査したのだから大丈夫とは限りません。投資を行う際のリスクは「自己責任」であることを十分に理解していただきたいと思います。
 
執筆者:西山広高
ファイナンシャル・プランナー、宅地建物取引士、西山ライフデザイン代表取締役


 

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