更新日: 2019.08.29 その他資産運用
超低金利で、高まる個人向け社債の人気。社債のメリット・デメリットとは
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/
社債って何?
企業が直接的に資本市場から資金を集める方法として、株式の発行と社債の発行があります。社債は企業が発行する「借用証書」のようなものです。
企業にとって株式は自己資本であるのに対して、社債は他人資本(借入金)です。株式は企業の業績により配当が左右されますが社債は企業の業績と関係なく確定した利率を受け取ることができます。
社債は満期まで保有していれば、定期的に利率分の利息を受け取ることができ、満期時には額面金額での償還金を受け取ることができます。株主は株主総会に出席して経営に参加できますが、社債権者には経営参加権はありません。株式と社債にはこのような違いがあります。
社債を選ぶ場合には、利率よりも利回りを重視します。社債の収益は利息(クーポン)及び購入価格と償還金の差額(償還差益)です。この収益を1年あたりの金額に換算し、購入価格(投資元本)で割ったものが利回りになります。
したがって、額面金額、利率、満期が同じ債券でも、償還差益が大きい方が利回りが高くなります。
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主な社債の種類
一般的に社債と言えば普通社債を言います。
つまり、企業が発行する債券で、満期が設定されていて、その間は一定期日に利息(クーポン)が支払われます。企業の信用力が低いほど利率や利回りが高くなっています。個人向け社債は、10万円~100万円といった小口で購入でき、満期も3年や5年といった短期のものがあります。
劣後債は発行企業が破たんした場合、債務の弁済の順位が低い債券をいいます。投資家は普通社債よりも高いリスクを負うため、その分、利率や利回りが高くなっています。
転換社債型新株予約権付社債(転換社債)は、ある一定の価格で発行会社の株式に転換できる権利の付いた社債です。利息収入のほかに株式の値上がりによる利益も期待できますので、普通社債よりも利率や利回りは低く設定されています。
新株予約権付社債(ワラント債)は、名前の通り、発行体の新株を一定価格(行使価額)で、一定数量買付けることができる権利が付いた社債です。一般に、発行後、社債部分とワラント部分が分離され、それぞれが個別に売買することができます(分離型ワラント債)。
「格付け」をチェックしよう
社債は発行企業が破たんしない限り、満期まで保有していれば額面金額での償還が保証され、その間、定期的に利息収入を得ることができます。一般的に利率や利回りは、信用度が低い企業ほど高くなります。
信用度を格付けする機関としては、株式会社日本格付研究所、ムーディーズ・ジャパン株式会社、ムーディーズSFジャパン株式会社、S&Pグローバル・レーティング・ジャパン株式会社、株式会社格付投資情報センター、フィッチ・レーティングス・ジャパン株式会社、S&PグローバルSFジャパン株式会社があります(平成29年4月1日現在)。
格付け符号と定義については、それぞれの格付け機関により異なりますが、一般には、AAAを最上位として、AA、A、BBB、BB、B・・・というように格付けが低下していきます。
BBB以上の格付けが付与されていれば、「投資適格」という評価ですので、BBB以上の社債を選ぶと良いでしょう。なお、AAAだからと言って、破たんしないという訳ではないので留意してください。
株式会社格付投資情報センターの発行体格付けの符号と定義を見ると、信用力は、AAAは「最も高く、多くの優れた要素がある」、BBBは「十分であるが、将来環境が大きく変化する場合、注意すべき要素がある」となっています。
社債を購入する時は、利回りだけで選ばず、格付けもチェックするようにしましょう。
社債の流動性が株式に比べ低い
社債は満期まで保有していれば額面金額で償還金を受け取ることができますが、中途で売却した時は、社債の価格は、そのときの金利情勢や債券の需給動向によって変動します。
一般に、信用力や知名度が高く、発行量が多い社債は、売却の際、購入を希望する投資家が見つかりますが、そうでない場合は、売却を希望しても売買が成立しないリスクがあります。社債を購入する場合は、満期保有が基本と考えましょう。
※投資は自己責任でご判断ください。
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー