更新日: 2019.07.02 NISA

『えっ、これできないの!』2014年に始まったNISAが5年間の非課税期限を初めて迎えた2018年末

執筆者 : 上野慎一

『えっ、これできないの!』2014年に始まったNISAが5年間の非課税期限を初めて迎えた2018年末
2014年1月から始まった「NISA」(少額投資非課税制度)ですが、非課税期間は5年間。2018年末に初めてその期限を迎えました。非課税期間満了にともなう手続きについては、証券会社や銀行から時間的余裕をもって案内はされていましたが、何せ初めての出来事です。
 
2018年末にNISA口座の株式などの売買を巡っての混乱はなかったのでしょうか。
 
上野慎一

執筆者:上野慎一(うえのしんいち)

AFP認定者,宅地建物取引士

不動産コンサルティングマスター,再開発プランナー
横浜市出身。1981年早稲田大学政治経済学部卒業後、大手不動産会社に勤務。2015年早期退職。自身の経験をベースにしながら、資産運用・リタイアメント・セカンドライフなどのテーマに取り組んでいます。「人生は片道きっぷの旅のようなもの」をモットーに、折々に出掛けるお城巡りや居酒屋巡りの旅が楽しみです。

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おさらいしておきましょう。NISAとは?

NISAは、株式・投資信託などへの投資から得られる配当金・分配金(普通分配金)や譲渡益に対する税金が非課税となる制度です。
 
もともとは、日本に住む20歳以上の人が1口座限りで【新規投資額で120万円(2014・2015年は100万円)以内の金融商品から得られる利益が、最長5年間非課税】にできることとなっていて、期限到来後、さらに5年間の継続保有(ロールオーバー)も可能です。
 
投資可能期間は【2023年まで】(2023年の投資分は2027年まで非課税保有が可能)とされています。そのほかにも派生制度として「ジュニアNISA」や「つみたてNISA」もありますが、NISA(一般NISA)との併用はできません。
 

非課税期限を迎えたときの3つの選択肢

一般NISA口座の2014年投資分が、2018年末に5年間の非課税期間満了を迎える際の手続きについては、2018年春から業界団体などによる周知が開始されました。同年夏以降には、金融機関による個別案内も順次始まり、3つの選択肢が案内されています。
 
(1)すべて課税口座(特定口座または一般口座)に移管する。
 ・特段の手続きは不要。
 ・取得コストは、2014年の当初取得コストではなく2018年末の時価で移管。
 
(2)2019年の一般NISA口座に移管(ロールオーバー)する。
 ・残高のある銘柄の全部または一部を指定する書面の届け出が必要(残高のある銘柄のうち届け出をしない銘柄は、課税口座に移管される)。
 ・取得コストは、2014年の当初取得コストではなく2018年末の時価で移管。
 ・移管銘柄の2018年末時価分は、2019年枠120万円から減額される(2018年末時価合計が120万円超でも全額移管できる)。
 
(3)2018年末までに売却する。
 ・受渡日が2018年内となる日(国内上場株式で12月25日。投資信託などではもっと早い時期となる場合あり)までに約定する必要がある。
 
上記(2)の書面の金融機関への到着期限は11月末日などに設定されていました。2014年からNISAを始めた方は、当初取得コストや時価、そして今後の見通しなどをもとに、ある時点でこの3つのいずれかを選択したことと思います。
 

こんな混乱、ありませんでしたか?

そして、一般NISA口座で2018年末に株式などの売買をしようとした場合に、混乱があったかもしれないこと…。例えば、次の2つはどうだったでしょうか。
 
(あ)ロールオーバーする残高があると2018年内に行う、2019年NISA枠での株式などの買い付けが制約される(できない)。
 
受渡日が2019年となる2018年12月26日以降の買い付け約定分は、2019年のNISA枠での買い付けが可能なはずです。
 
ところが2019年にロールオーバーする残高があると、12月26日以降であっても、そして【ロールオーバーする残高と120万円枠との差額が相当程度見込まれる場合】であっても、2019年NISA枠での買い付けが制約されたりできなくなりました(制約内容は金融機関によって一律ではありませんでしたが)。
 
これは、ロールオーバーする残高(12月28日の終値で決まる)が確定しないと2019年NISA利用可能枠も確定しないからという理由でした。2019年NISA枠で買い付けたつもりだったのに、ロールオーバー分の急激な値上がりで枠オーバーすると課税口座買い付けになってしまうトラブルを回避する趣旨だったのです。
 
(い)上記(あ)に気付いた後に、ロールオーバー予定残高を全部売却しても、問題は解消できない。
 
先ほどの選択肢(3)は、受渡日が2018年内となる12月25日(国内上場株式の場合)までに約定する必要があります。
 
12月26日以降にロールオーバー予定分を仮に全部売却して残高をゼロにしたとしても、2019年NISA枠を(120万円に戻して)すぐに使えることにはなりません。しかも、売却したロールオーバー分も2019年NISA枠の消化としてカウントされてしまいます。
 
上記のような事例は、初めてロールオーバーを迎える2018年末までは、あまり認識されなかったかもしれません。
 
2018年では12月26日・27日・28日の3日間だけの問題とはいえ、株式相場が結構動いた時期と重なります。この間に2019年NISA枠を機動的に利用できなかったことで、何らかの影響を受けたケースがなかったとは断言できないでしょう。
 

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まとめ

「2017年末は、年内でも2018年NISA枠での買い付けができたのに……」「2019年へのロールオーバー予定残高は▲▲万円くらいなので、120万円との差額の約〇〇万円分は2018年末であっても、2019年NISA枠での買い付けができるはずなのでは……」
 
こんな質問が金融機関に寄せられたとも耳にしました。
 
年末の数日間の問題とはいえ、また、金融機関によって(あるいはネットか、対人取引かによって)対応は異なっていたことなども含め、今後のロールオーバー時にはあらかじめ留意しておきたいエピソードではないでしょうか。
 
執筆者:上野慎一(うえのしんいち)
AFP認定者,宅地建物取引士