更新日: 2019.01.07 その他資産運用
先進国の中で米国が高金利なワケ
個人で長期的な資産運用を行っている場合、米国でのこの金利上昇をどう捉えればいいのでしょうか?
Text:北垣愛(きたがき あい)
マネー・マーケット・アドバイザー
証券アナリスト、FP1級技能士、宅地建物取引士資格試験合格、食生活アドバイザー2級
国内外の金融機関で、マーケットに関わる仕事に長らく従事。
現在は資産運用のコンサルタントを行いながら、マーケットに関する情報等を発信している。
http://marketoinfo.fun/
先進国の中で、今は米国が一番高金利
ここ数年、米国の景気は他の先進国と比べてもかなり好調でした。このため、米国の利上げは他の先進国に先駆けて始まり、また回数も多く行われてきました。
その結果、現在はG7にオーストラリアとニュージーランドを加えた9カ国の中で、米国の政策金利が最も高いという状況になっています。これは2000年以降初めてのことです。
先進国の中で「高金利通貨」というと、一般的に豪ドルやNZドルを思い浮かべる人が多いと思いますが、今や米ドルがその座を奪っているのです。
【PR】資料請求_好立地×駅近のマンション投資
【PR】J.P.Returns
おすすめポイント
・東京23区や神奈川(横浜市・川崎市)、関西(大阪、京都、神戸)の都心高稼働エリアが中心
・入居率は99.95%となっており、マンション投資初心者でも安心
・スマホで読めるオリジナルeBookが資料請求でもらえる
為替の強さも米国が一番
では、先進国に投資するなら、今は米国がベストなのでしょうか?もし米ドルを既に持っていて、それを米ドル建ての預金やMMFなどで運用することを考えているなら、それが正解でしょう。
ただ、原資が円などの米ドル以外の通貨なら、為替の水準にも注意する必要があります。そして実は、米ドルは既にかなり高くなってしまっているのです。
ドル円の為替だけを見ていると分かりにくいのですが、国際決済銀行(BIS)が算出しているドルの総合的な価値を示す名目実効レートで見ると、米ドルは10月末時点で1985年以来の高値となっています。物価の影響を加味した実効為替レートで見ても、2002年に迫る水準です。
そして11月以降も、執筆時点でその堅調さは維持されています。米国の高金利に魅せられ、海外からの投資資金が既に多く米国に流入しているのです。9月まで非常に好調だった米国の株式市場も、この動きに拍車をかけました。
また、アルゼンチンやトルコ、ブラジルなど、新興国からの資金流出も、米ドルを一層押し上げる結果となりました。
すなわち、今から米国に投資すると、少なくともここ数年のうちではドルが対多通貨ベースで見て割高な水準から、つまり為替の面からは余り有利ではない水準から、投資を始めることになってしまうのです。
もちろん、対円ではドルがさらに上昇する可能性もありますが、上記の点を踏まえたうえで判断することが重要となります。
為替ヘッジ付き投信を持っている場合は、点検のタイミングかも
米国の度重なる利上げにより、日米の短期金利の格差も同時に広がりました。そしてこれは、対ドルでの円の為替ヘッジコストを上昇させることにもつながっています。
為替リスクを敬遠して、投資信託の中でも「為替ヘッジ付き」というものを選択し、保有している人も多いかもしれません。そうした人はここで一度、保有する投信の運用内容を再確認してみるのが良いかもしれません。
為替のヘッジコストは、両通貨間の短期金利の格差を基本として決まります。日米の政策金利だけを見ても、ドル円では2%以上のヘッジコストが生じる計算となります。
しかし、実際のヘッジコストは需給要因にも左右され、足元では3%前後にまで拡大しているのです。需給要因は変化するので、その部分でかさ上げされたヘッジコストはまた低下するかもしれません。
ただ、米国の利上げがまだ続くと予想するなら、日本も近い将来に利上げに踏み切らない限り、ヘッジコストは今後も拡大するか、少なくとも高止まりする可能性が高いと言えます。
保有している投資信託が米ドル建ての債券やREIT(不動産投資信託)、バンクローンなどで運用するものなら、直近の月次レポートなどで、その投信が中に保有する証券の、平均利回りを確認することができます。
その平均利回りからヘッジコスト(今なら約3%)を引き、さらに運用管理費用(信託報酬)を差し引いたものが、手元に残ると期待できる分です。
値上がり益を期待して保有しているのなら別ですが、高利回りを期待しての保有なら、ヘッジコストを引いた後の利回り水準が納得できるものかどうか、確認してみることをおすすめします。
基本的には、投信を余り頻繁に売買するのは当然おすすめできません。しかし、市場環境が大きく変わったタイミングでは、点検とファインチューニングはやはり重要だと思います。※12/1執筆時点による
Text:北垣 愛(きたがき あい)
マネー・マーケット・アドバイザー