更新日: 2019.01.10 その他資産運用
投資信託の「コスト」って、気に掛けたことありますか?…購入時手数料の続きと信託報酬
また、続けて「信託報酬」について述べさせていただきます。
Text:大泉稔(おおいずみ みのる)
株式会社fpANSWER代表取締役
専門学校東京スクールオブビジネス非常勤講師
明星大学卒業、放送大学大学院在学。
刑務所職員、電鉄系タクシー会社事故係、社会保険庁ねんきん電話相談員、独立系FP会社役員、保険代理店役員を経て現在に至っています。講師や執筆者として広く情報発信する機会もありますが、最近では個別にご相談を頂く機会が増えてきました。ご相談を頂く属性と内容は、65歳以上のリタイアメント層と30〜50歳代の独身女性からは、生命保険や投資、それに不動産。また20〜30歳代の若年経営者からは、生命保険や損害保険、それにリーガル関連。趣味はスポーツジム、箱根の温泉巡り、そして株式投資。最近はアメリカ株にはまっています。
目次
購入時手数料がゼロの投資信託…補足
購入時手数料がゼロの投資信託の代表的な商品にMMFがあります。
「え?MMFって、マイナス金利の影響を受けて、今、販売停止なんじゃないの?MMFに投資した(=買った)人は、償還(=終了)されちゃったんじゃないの?」というお声が聞こえてきました。
はい、おっしゃる通りでございます。しかし、皆さんがおっしゃるMMFは「円建て」と「ユーロ建て」のMMFです。「外貨建てMMF」とされる、US・カナダドル・豪ドル・イギリスポンド・NZドル、それぞれの通貨のMMFは、今でも販売されています。
いずれの通貨のMMF(=外貨建てMMF)も、購入時手数料がゼロです。ただし、日本円を外国の通貨に換えるための、また外国通貨を日本円に換えるための、「為替手数料」が掛かります。
なお、外貨建てMMFの通貨の種類は、証券会社によって異なります。為替手数料は証券会社や通貨によって異なります。
外貨建てMMFは「外国籍投資信託」の一つです。外貨建てMMFは公社債投資信託に分類されますので、NISAやつみたてNISAの対象にはなっていません。
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信託報酬とは?
「信託報酬」は運用管理費用とも言われますが、本稿では信託報酬とします。私の知る限り、「信託報酬がゼロ」という商品は無いと思われます。
購入時手数料がゼロの、つみたてNISAの対象になっている投資信託、iDeCoの対象になっている投資信託、外貨建てMMFなど、これら全て信託報酬が掛かります。
投資信託の購入時手数料は、投資信託を買ったときだけ掛かります。それに比べ、信託報酬は、投資信託を買って持ち続けている(=証券会社や銀行に投資信託を預け続けている)間、毎営業日控除されています。
新聞やインターネットなどで公表されている投資信託の基準価格(=株式の株価に近い)は、信託報酬を差し引いた後の金額です。「信託報酬を具体的に、いくら差し引いている」と、金額を明示することはありません。
なので、投資信託を持っている方や、これから買おうとしている方でも、意外と信託報酬を意識されている方は少ないのではないでしょうか?
信託報酬は金額ではなく、年率(=パーセント)で明示されている
信託報酬は金額ではなく、年率(=パーセント)で目論見書(=投資信託説明書)に記載されています。
例えば、筆者が持ち続けいるインドネシアの株式を対象にした投資信託の信託報酬は、目論見書によれば年率1.8614%(=消費税込み)です。繰り返しになりますが、この信託報酬は年率で表示され、控除されるのは毎営業日です。
(ちなみに、インドネシア株式投資信託は、かなりマニアックだということは筆者も十分、分かっています。なのに、あえて例に挙げたのは、信託報酬が割と高めだからです)。
ところで、「営業日」というのは、年間240日くらいでしょうか?
仮に、営業日が年間240日だとしましょう。そして、先述の筆者が持っているインドネシア株式投資信託を例とします。信託報酬は毎営業日、控除されますので、1日当たりの信託報酬の率は0.007755833%ということになります。
信託報酬についてお高く感じますか?おわざわざ意識しなくても良い率でしょうか?
信託報酬…比較の視野を広げてみましょう
例えば、「これから預け入れる定期預金の金利(=年率)は、何パーセントでしょうか?」「イマドキの住宅ローンの金利(=利率)は、何パーセントでしょうか?」「個人向け国債の利率は?」。
比較する視野を広げみると、先述の信託報酬の率(=パーセント)は決して「お安い」あるいは「意識しなくても良い」というわけでは無さそうですよね。
また、信託報酬の率が年率1.8614%ということは、その投資信託の1年間のパフォーマンス(=運用成績)が1.8614%を超えていないと、「プラスにはならない」ということなのです。
購入時手数料&信託報酬をセットで考えると
さて、先述から例に挙げている筆者が持っているインドネシア株式投資信託ですが、信託報酬の率だけではなく、購入時手数料の率も「高い」です。
信託報酬の率は1.8614%ですが、購入時手数料は3.78%(=消費税込み)です。購入時手数料と信託報酬を併せて、5.6414%。つまり、投資信託を購入して1年間で5.6414%を超える運用の成果を上げないと「マイナス」になってしまうのです。
つみたてNISAについて
つみたてNISAの対象となる投資信託のコスト(購入時手数料と信託報酬)は、政令で定められています。まず、購入時手数料はゼロです。また、信託報酬は最も高いものでも1.5%(=消費税別)とされています。
また、信託報酬が「具体的にいくら差し引いた」のか、その概算金額を購入者一人ひとりに明示することになっています。つみたてNISAの対象になっている投資信託は、対象になっていない投資信託に比べるとローコストであり、透明度が高いと言えそうです。
ちなみに、iDeCoの対象になっている投資信託も購入時手数料がゼロですし、対象になっていない投資信託に比べるとローコストです。
まとめに代えて
筆者はコスト高なインドネシア株式投資信託を持っていますが、つみたてNISAはやっておりませんし、今のところ、始める予定もありません。投資の将来の成果がプラスになるのか、はたまたマイナスになってしまうのか、全く不確実ですし不測です。
投資の成果に比べると、分かりやすさは別にして、コスト(購入時手数料と信託報酬)は年率が目論見書に明示されています。そういう意味では、「コストは比較しやすい」とも言えます。
ですが、投資信託を選ぶに当たり、コスト面以外の部分を比較することも大事です。何を重視するかは人それぞれですが、コストだけで選ぶことが必ずしも正しいとは言えませんので注意しましょう。
Text:大泉稔(おおいずみ みのる)
株式会社fpANSWER代表取締役