更新日: 2019.01.10 その他資産運用
毎月分配型の投資信託はそんなに悪い商品なのか?
投資信託の新規設定も毎月分配型は少なくなってまいりましたが、悪い商品だから残高が減少しているのでしょうか。
Text:加藤啓之 (かとう しげゆき)
FP横浜オフィス加藤 代表
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP認定者、1級DCプランナー
日本証券アナリスト協会検定会員、1級証券外務員
大手資産運用会社、大手企業年金基金で勤務ののち独立。
資産運用、iDeCo加入等を中心に個人相談を展開。
企業の退職金制度のコンサル、確定拠出年金制度の導入支援、独自性のある継続教育など法人ビジネスも展開。
https://fpyokohamakato.amebaownd.com/
毎月分配型の投資信託とは
投資信託の交付目論見書に必ず記載されている「分配方針」に、「原則毎月分配を行います」と記載されている投資信託を指します。
通常、商品名に「毎月分配型」と記載されていることが多いので、商品名を見ただけで分かるようになっています。
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そもそも分配金とは
交付目論見書に記載されている「分配に関する留意点」に、投資家が誤解しないように丁寧に解説がされています。以下は、野村アセットマネジメントの投資信託説明書から引用したものです。どの運用会社でも、共通してこのような文言が掲載されています。
「分配金は預貯金の利息とは異なりファンドの純資産から支払われますので、分配金支払い後の純資産はその相当額が減少することとなり、基準価額が下落する要因となります。
ファンドは、計算期間中に発生した運用収益を超えて分配を行なう場合があります。したがって、ファンドの分配金の水準は必ずしも計算期間におけるファンドの収益率を示唆するものではありません。
計算期間中に運用収益があった場合においても、当該運用収益を超えて分配を行なった場合、当期決算日の基準価額は前期決算日の基準価額と比べて下落することになります。」
毎月分配型の投資信託を悪者扱いする理由とは
1番の理由は、「複利運用効果が薄れ、投資効率が落ちる」ということのようです。
一見、正しいように思えますが、投資信託は必ずプラスの収益を得るとは限りません。マイナスの収益の場合はその逆になります。よくある比較は、分配金再投資の方が複利運用効果により運用収益が高いとしたものです。しかしながら、前提条件の毎年プラスの収益などあろうはずがなく、こうした比較計算は明らかに無意味と言えます。
そして、確定利回りを設定している企業年金でも、「複利運用効果が薄れるから死ぬ間際に受け取るのが良い」とまで言うのでしょうか。このように複利運用効果が落ちるというのは理由になりません。
2番目の理由は、「多額の分配金の原資を確保するために、不動産投資信託(REIT)や高利回りの外貨建債券を投資対象とする投資信託が多くあること」です。
大きな値動きが見込まれるこのような投資対象は、安定した収益を期待する高齢者などには不向きということです。販売者は基準価額の変動要因は必ず投資時に説明しているので、「運用成果は投資家の自己責任です」とうそぶくかもしれません。しかしながら、高齢者に大きな値動きをする投資対象を組み入れた投資信託を勧めていること自体が“性悪”であることは間違いありません。
逆に言うと、資産分散されたバランス型で少額分配の投資信託は高齢者向けと言えます。
資産引出時の毎月分配の有効性
資産形成時の積立て投資の効用は時間分散され、買付コストの平準化による効果があることはよく知られている通りです。安いときに買いたいとしても、そのタイミングが分かるわけでもないので、積立て投資はだれにでもできる有効な手法です。
これと同様に、資産取り崩し時の毎月分配も時間分散され、高いときに売りたいとしても、そのタイミングが分かるわけでもないので、だれにでもできる有効な手法のはずです。
資産形成時の積立て投資が若年層向きであるならば、資産取り崩し時の毎月分配は高齢者にとって有効な手法となります。
高齢者向けの投資対象が大きな値動きをするものに特化していない、「資産分散されたバランス型投資信託」であるならば、毎月分配型の投資信託は良い商品と言えるでしょう。
引用:野村アセットマネジメント「投資信託説明書(交付目論見書)」
Text:加藤啓之 (かとう しげゆき)
FP横浜オフィス加藤 代表
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP認定者、1級DCプランナー、