アメリカと中国の貿易摩擦・・行方が見えない中での資産運用とは
配信日: 2018.08.08 更新日: 2019.05.17
投資に興味があるけれど、米中の貿易摩擦で今後の世界経済がわからなくなるから、終息するまで待つべきという声をよく耳にしますが、この主張について考えてみたいと思います。
Text:柴沼直美(しばぬま なおみ)
CFP(R)認定者
大学を卒業後、保険営業に従事したのち渡米。MBAを修得後、外資系金融機関にて企業分析・運用に従事。出産・介護を機に現職。3人の子育てから教育費の捻出・方法・留学まで助言経験豊富。老後問題では、成年後見人・介護施設選び・相続発生時の手続きについてもアドバイス経験多数。現在は、FP業務と教育機関での講師業を行う。2017年6月より2018年5月まで日本FP協会広報スタッフ
http://www.caripri.com
米中の綱引きの行方を見守るだけ時間の無駄
米国が中国からの輸入500億ドル分に対して25%の制裁関税を課すと発表したのが6月15日でしたが、それ以降、7月6日に輸入340億ドル分に対して実施し、その後160億ドル分に対してヒアリング調査の後実施するかどうかを決定すると報道されています。
これに対して、中国側は強行姿勢を崩さず、米国からの課税実施後すぐに報復関税を行い、160億ドル分に対しても米国の課税決定を受けてすぐに同様の措置をとると発言しています。このような不透明な現状下で、投資をするなんていうリスクをとりたくないという声をよく聞きますが、この成り行きを見守るのは時間の無駄であると考えます。
経済的な見通しであればデータをもとに見通しを立てることは可能ですが、政治的な方向に進むか、どのような決着をみるのかを予測することはできません。
特に米・トランプ大統領については、例えばロシア疑惑の報道にもあるように、介入について否認の発言をたった1日で撤回することからも、予測は容易ではありません。大統領自身の最大の行動指針は11月の中間選挙における支持率確保です。その動きに右往左往しても時間の無駄と考えるべきでしょう。
【PR】資料請求_好立地×駅近のマンション投資
【PR】J.P.Returns
おすすめポイント
・東京23区や神奈川(横浜市・川崎市)、関西(大阪、京都、神戸)の都心高稼働エリアが中心
・入居率は99.95%となっており、マンション投資初心者でも安心
・スマホで読めるオリジナルeBookが資料請求でもらえる
市場参加者はどう見ているのか
実際に市場で金融商品を売買しているのは投資家です。市場参加者はどのように見ているのでしょうか。米国が関税を引き上げ、そして中国側も報復に出るという行動は、双方にとってブーメランのように経済成長を阻害する効果となることは明らかです。
例えば、米国における大豆の最大の顧客は中国ですが、中国が別の調達先を手当てすると仮定すれば、結局米国の農業従事者を苦しめることになるかもしれません。
一方で、中国側では最大の調達先である米国を失って補填する国がおいそれと見つかるわけがないことも明らかなのです。こういったネガティブ効果のブーメラン現象が私たちの目からも明らかなだけに、「結局は、大統領選挙に向かって収束する」と市場は冷静に見ていると考えられます。
短期売買の回転により収益機会を狙うのでない限り静観すべき
確かに、発言がヒートアップしてリスクオフモードが蔓延し、米中関係だけでなく他の資源国や欧州の経済成長の足を引っ張るほどに深刻化するとなれば投資を見送るべきかもしれません。
ですが、そもそも二大超大国にしても、自国の経済成長を達成することが最大のミッションであることにはかわりはないはず。したがってプロや短期売買者でない限り静観すべきでしょう。
その投資姿勢を維持するには、投資の意味を確認しておきたいところです。すなわち、いつまでに必ず収益を上げるではなく、収益が上がったところで利益確定をするぐらいの長い時間軸で臨むのが投資であるということです。
そもそも政治的な発言やイベントはとかくセンセーショナルに報道されます。故に、短期的には相場が急落するのです。しかし大きく下げた後は必ず冷静に相場を眺めている参加者から買いが入ります。
それまで待つ余裕のある資金について投資すると決めていれば、うろたえる必要はありません。むしろそこで狼狽売りをして、本来なら支払わなくてもよい手数料を払うだけ時間も費用も無駄になります。
長期的な見通しを確認しながら進めるのが投資
むしろ懸念されているのは直近の経済指標です。確かに世界第一位の米国経済成長率は第一四半期の失速懸念から一転、再加速しています。他方、第二位の中国は減速感が否めません。
ここに浮上した貿易摩擦。中国側では輸出を維持するため人民元を意図的に切り下げている動きが観測されています。
この通貨安が、世界の実体経済にどのような影響を及ぼすことになるのか、このことによって世界経済のベクトルの向きが反転するのか、ベクトルの傾きが大きくなるのか小さくなるのかといことに着目すべきです。
Text:柴沼 直美(しばぬま なおみ)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者
日本証券アナリスト協会検定会員、MBA(ファイナンス)、
キャリアコンサルタント、キャリプリ&マネー代表