更新日: 2019.08.07 その他資産運用

投資信託を選ぶときに見るのは利回り?運用成績? 数字だけで判断せずに、基準価額をしっかり確認する

投資信託を選ぶときに見るのは利回り?運用成績? 数字だけで判断せずに、基準価額をしっかり確認する
皆さんは5,000本もある投資信託の中から1つの商品に絞り込むときにどのようにされますか? 最近ではネットでいろいろなランキングなどを見ることができるようになっているので、例えば「売れている順」「収益が上がっている順」など、参考になるようなデータは枚挙にいとまがありません。
利回りランキングでいくとA商品が一番だけれど、分配金ランキングだとB商品。いったい何を優先的にみればいいか迷ったことはありませんか?
柴沼直美

執筆者:柴沼直美(しばぬま なおみ)

CFP(R)認定者

大学を卒業後、保険営業に従事したのち渡米。MBAを修得後、外資系金融機関にて企業分析・運用に従事。出産・介護を機に現職。3人の子育てから教育費の捻出・方法・留学まで助言経験豊富。老後問題では、成年後見人・介護施設選び・相続発生時の手続きについてもアドバイス経験多数。現在は、FP業務と教育機関での講師業を行う。2017年6月より2018年5月まで日本FP協会広報スタッフ
http://www.caripri.com

判断材料の数字にはカラクリがいっぱい。最低でも計算過程は確認すべし

辛口に聞こえるかもしれませんが、運用成績で、すごくいい収益を上げていると思っても時間軸を伸ばしてみると「あれっ?」と思うことはよくあると思います。例えば、「直近1年間で50%も上昇しているから、この流れに乗れるぞ」と思うかもしれませんが、時間軸を少し伸ばして3年にしてみてください。「1年間で上昇している前の2年間は70%ぐらい下落していて、下がるだけ下がったあとの反発」というケースは珍しくありません。

となれば、直近の運用成績だけで判断するのはリスクが高いということになります。では、ということで分配金利回りランキングで見てみましょう。例えば、分配金利回り30%というと、「すごい!」となりますが、以前にもお伝えした通り、『分配金利回り=分配金÷基準価額』という算式で求めることになります。分配金が上昇した場合と、基準価額が大幅に下落した場合、いずれも分配金利回りが上昇することになりますね。ですから、30%というのは、実は、基準価額が当初投資をしたときに仮に1万円だったものが3,000円まで下がってしまったためということも起こりえます。したがって、「単語=計算結果」だけで、その投資信託がいい商品かどうかは判断できないのです。必ず計算過程をチェックして「どうしてたくさん分配金がでているのか」「どうして運用成績がこんなにいいのか」というところまで確認しなければ結論は出せないことを覚えておきましょう。

また純資産額が増加しているということは、たくさんの人がその投資信託を購入しているということで、いわゆる「人気度」を測る指標といえるでしょう。これも、素直に「この投資信託はいい銘柄が組み込まれているから基準価額が上昇すると予想される」と判断した人が多いために買いが集中したかもしれませんが、販売会社によるキャンペーンの結果かもしれません。「みんなが買うから私も買う」の表れかもしれません。

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株を買うのと同じ感覚で基準価額の推移、商品が販売された背景を探ろう

商品を絞り込むよりどころとなる数字はやはり基準価額の推移。会社側では、分配金を出すタイプの場合は、分配金を再投資した場合も含めての基準価額の推移について開示していますから、併せてチェックしておきましょう。そのうえで、その商品は「どういう業界の動きを期待して、販売されたか」ということを考えてみてください。例えば、為替に焦点を当てた商品であれば「これから円安に行く」と予想すれば、円安メリットを受けることを想定して販売された商品であれば、OK、ということになりますね。

もしここで、「円安に行くのか、円高に行くのか」自分では判断ができないと思うのであれば、たとえ基準価額が順調に上昇していたとしてもその商品を購入すべきではありません。商品を購入した以上、それで収益が得られるのか損失を被るのか責任はすべて購入を決めた皆さんにありますから、自信がないものには手をださない、というのが鉄則です。

上がったときは、いつ利益確定すべきか判断できなくなりますし、下がったときには、どのように対応したらよいのか自分ではわからなくなり塩漬けすることになります。

長期で収益獲得を狙うなら「企画・販売の背景」を。短期勝負なら「基準価額の推移」を

資産運用において「時間」をどのようにとらえるかで戦略は大きく異なってきます。長期保有でじっくり熟成しながら収益をじわりじわり積み上げていくというのが狙いであれば、その商品(投資信託)がどのような背景で設計・販売されたかにより注力しましょう。例えば今後高齢化が加速するという理由に共感して「医薬品○○」といった投資信託を購入したとしたら、そこに組み込まれた会社の開発途中の新薬に副作用の懸念が出てきたというニュースで大きく下がったとしても、それは一過程。「高齢化に伴う医薬品業界の伸び」というトレンドに変化がないと思えばそのまま保有すべき、むしろ下がったところは買い場を提供してくれたと解釈するべきでしょう。逆に1年以内で「何とか収益を上げたい」と思うのであれば、より基準価額の動きに神経質になるべきです。ただしこの場合は、かなりリスクをとることになるのを忘れないようにしましょう。

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