更新日: 2020.04.07 不動産投資
J-REITの利回りは年3%と高いがリスクも高い?
執筆者:柴沼直美(しばぬま なおみ)
CFP(R)認定者
大学を卒業後、保険営業に従事したのち渡米。MBAを修得後、外資系金融機関にて企業分析・運用に従事。出産・介護を機に現職。3人の子育てから教育費の捻出・方法・留学まで助言経験豊富。老後問題では、成年後見人・介護施設選び・相続発生時の手続きについてもアドバイス経験多数。現在は、FP業務と教育機関での講師業を行う。2017年6月より2018年5月まで日本FP協会広報スタッフ
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数字のトリックに注意
ただこの公式をよく見てください。割り算の答えである分配金利回りの数字が上がるのは、2つの要因がありますね。1つめはREITの収益力が上がって、分子である分配金が増えること。分配金が30円から40円になれば、年間の分配金は40×12=480円。そうなれば、同じ1万円の投資に対して分配金利回りは4.8%と上がります。これは誰もが望んでいるパターンの分配金利回りの上昇です。
しかし、要注意なのは2つめのパターンです。すなわち、分母である基準価額が少なくなることでも分配金利回りは上昇します。
例えば、分配金は360円のまま、基準価額(投資口価格)が10,000円から5,000円に下落すれば分配金利回りは、7.2%に上昇します。これではいくら分配金利回りが上昇しても魅力的な投資対象とはいいがたいですね。
「数字だけで判断することが危険」であると筆者がたびたびお客様にお伝えしているのはこの理由からです。あくまでも基準価額をしっかり確認することを忘れないようにしましょう。
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REITのリスクは金利上昇と言われているが
REITについて、「分配金利回りが高いから、(きっと)リスクも高いのだろう」と、根拠なく(なんとなく)結論付けてはいませんか? REITは魅力的だけど、その反対のリスクの源泉はどこにあるのか、ここで確認しておきたいと思います。
そもそも、REIT(投資法人)は、市場や金融機関から基本借金をして、不動産を調達しますから、金利が上がれば借金を返済する負担が大きくなります。
金利上昇がREITのリスクと言われる所以です。実際米国では、トランプ大統領就任決定以後、「インフラ投資を実行するのでは?→米国の財政状態が悪化するのでは?」という懸念から米国債の人気がなくなって、その結果、価格と逆の関係にある金利が上昇しました。ですが、日本ではこのような意味での金利上昇は当面あり得ないと言えます。なぜなら、超低金利政策を継続しているからです。したがって、金利上昇ということをリスクの前提におく必要は、しばらくはなさそうです。
むしろ心配しなければならないことは、需給要因
日本版REITに関して金利上昇リスクはしばらく考えなくてもいいとお伝えしました。それよりも、見ておきたいのは需給要因です。
日本でのREIT市場が誕生したのは2001年、株式市場と比べるととても新しい発展途上の市場です。したがって、市場規模もまだまだ小さく、株式市場の260兆円に比べて、10兆円前後といった規模です。ここが短期的なリスクの源泉です。
つまり、そこに新しくREITが上場するとどうなるでしょうか。ちょうど株式市場の新規上場や増資と同じことがおこります。まだまだ取引量も株式市場に比べればかなり小さい市場で、資金調達をして不動産を買い入れ、賃貸収入から利益を得ようとREITが新たに市場に上場したり、増資をすれば、市場全体の需給バランスは悪化しますよね。この影響は株式市場よりも小規模なREIT市場では大きくなります。つまりそれ以前に比べて投資した利益が薄れてしまうのです。
不動産株と比べて大きく下がるのであれば実は買いのチャンス
さりとてREITは不動産投資法人ですから、日本の不動産株の動きを参考にしましょう。需給バランスが悪くなっても、そこで調達した資金でさらに魅力的な投資物件を手当てした投資法人は、より高い賃料収入が得られると期待します。
それは、最終的には私たち投資家の手元に行きつくわけですから、上場や増資によって一時的に「私たち投資家の利益が薄れても」「不動産株の動きがよくて」「賃料が上昇傾向にあれば」むしろ買いのチャンスととらえ、積極的に投資を進めてもいいのではないかと思います。