更新日: 2019.01.10 その他資産運用
新たな投資指標として注目を集めているESG投資ってなに?リスクは?
ESG投資をこれからの投資対象としてどうとらえればよいか考えてみたいと思います。
Text:柴沼直美(しばぬま なおみ)
CFP(R)認定者
大学を卒業後、保険営業に従事したのち渡米。MBAを修得後、外資系金融機関にて企業分析・運用に従事。出産・介護を機に現職。3人の子育てから教育費の捻出・方法・留学まで助言経験豊富。老後問題では、成年後見人・介護施設選び・相続発生時の手続きについてもアドバイス経験多数。現在は、FP業務と教育機関での講師業を行う。2017年6月より2018年5月まで日本FP協会広報スタッフ
http://www.caripri.com
耳には心地よいESG投資の背景は
ESG投資とは、環境(Environment)、社会(Social)、統治(Governance)という3項目に対する企業の対応に注目して銘柄を選別する手法です。
もともと国連が2006年に企業の社会的責任を投資の判断材料とする「社会的責任投資(SRI)」という考え方を公表したことから、欧米を中心に広く受け入れられていきました。
投資対象を決めるときに、利益成長や無借金など財務諸表から読み取ることができる数値だけを指標にするのではなく、地球温暖化防止に向けた二酸化炭素排出量削減行動、従業員に対する管理、社外取締役の独立性といった環境、社会、企業統治への取り組みを進めている企業を評価して投資先を決めようという動きが広がったのです。
すぐに利益に直結しないけれど、このような取り組みによって長期的な成長が期待できるという考えのもとに注目しています。
世界持続可能投資連合(持続可能な投資の普及を目指す国際団体)によれば、2014年でのESG投資残高は全世界で$21兆3,575億 (約2,450兆円)、世界全体の運用資産の約3割を占めると試算されるにいたっています。
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定性的な価値観を定量的に落とし込むには限度あり
では実際のところどうなのか、ということですが、投資サイトなどでは、値動きがよいというコメントなども見られます。
あえて筆者はそこで異論を少し唱えたいと思います。筆者が現役の運用担当者だった時にも、このような流れで商品開発、運用が行われてはいました。
また国内でも似たようなコンセプトで販売されていたことを記憶しています。
ただその後の状況は華々しいとは言い難かったです。「大義名分は素晴らしいが、やはり投資はリターンを求めるもの。リターンは定量的なもの」という本音が見え隠れしているように思います。
そもそも、このようなSRIという条件を満たす企業は超優良企業です。社会的責任にも取り組むから優良企業、優良企業であるがゆえに社会的責任にも目を配る余裕があるのです。したがってESG投資と言っても実質的には優良大型銘柄に投資をしていることとさほど差はないと考えていいでしょう。
加えて、SRIに取り組んだことによって企業成長にプラスになるかどうかは、定量的に落とし込めるものではないと考えます。
こう考えてくると、ESG投資という耳に心地の良い言葉だけに踊らされるよりも本質的な諸手数料に基づいて投資商品を選択するというスタンスを維持するほうが大事だという結論に至ります。
Text:柴沼 直美(しばぬま なおみ)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者
日本証券アナリスト協会検定会員、MBA(ファイナンス)、
キャリアコンサルタント、キャリプリ&マネー代表