いきなり生活費に困って、やむにやまれず借金を考える人もいるかもしれません。そこに「借金ではありませんからご安心ください」と近づいてくる「給与ファクタリング」の悪質な手口が、大きな問題になっています。
執筆者:藤木俊明(ふじき としあき)
副業評論家
明治大学リバティアカデミー講師
ビジネスコンテンツ制作の有限会社ガーデンシティ・プランニングを28年間経営。その実績から明治大学リバティアカデミーでライティングの講師をつとめています。7年前から「ローリスク独立」の執筆活動をはじめ、副業・起業関連の記事を夕刊フジ、東洋経済などに寄稿しています。副業解禁時代を迎え、「収入の多角化」こそほんとうの働き方改革だと考えています。
「借金ではありません」というアプローチにご注意
「給与ファクタリング」の代表的な手口としては、ホームページなどで、「あなたの給与の債権を売ってくれればお金を受け取れます」とうたい、お金に困っているけど借金はしたくない、あるいはどこからも借金ができなくて困っている人に向けてアプローチしてくるようです。
簡単にいえば、月々の給与が20万円だとすると、翌月の25日には、特別なことでもない限り給与として20万円を受け取れるはずです。そこで給与ファクタリング業者は「その20万円の債権を売ってくれたら、●●万円さしあげます」と持ちかけるわけです。そして、「これは借金ではありません。あなたの債権を買い取るわけですから」などというのでしょう。
その代表的な手順は次の(1)から(4)となります。(※1)国民生活センターHPより
(1)消費者が給与(賃金債権)を「給与ファクタリング業者」に売却(譲渡)します。
(2)「給与ファクタリング業者」は手数料を引いた金額を(1)の消費者に渡します。
(3)(1)の消費者に勤務先が給与を支払いました。
(4)消費者は手数料を含めた金額を「給与ファクタリング」業者に支払います。
年率換算で数百パーセントもの高額な手数料を請求されるという被害も
うっかり給与ファクタリングを利用してしまった人からの、被害事例がいろいろ報告されています。国民生活センターに掲載されている事例を見ると、ある人が子どもの治療費が急に必要になり、給与ファクタリング業者に依頼して、7万円を手渡しで受け取り、次の給料日に12万円を銀行振り込みで返済する予定だったとあります。年利で計算すると700%もの利息になるわけです。おまけにこの消費者は「事業者から勤務先や自宅に電話がかかってきて、勤務先と家族に知られて大騒ぎになった」そうです。
そもそも「借金ではありません」というのは本当でしょうか? 金融庁は次のように見解を述べています。「『給与ファクタリング』などと称して、個人の賃金債権を買い取って金銭を交付し、個人を通じて資金を回収する業務は、貸金業に該当します。貸金業登録を受けずにこうした業務を営む者は、違法なヤミ金融業者です。」(金融庁HPより引用)(※2)として、そのような行為は「違法なヤミ金融」と断定しています。つまり、「借金ではない」という理屈は通りません。違法行為なわけです。
さらに国民生活センターの相談事例を引用します。
・「ブラックOK」の給料ファクタリング業者から毎月借りているが、返済日の変更を申し出たら凄んだ口調で拒否された
・失業して給与ファクタリング業者と契約したが家族へ執拗に取り立てられている
・給料ファクタリング業者と契約したが、返済遅延をしたら強引な取り立てを受けた
・ギャンブル依存症の息子が任意整理中なのに給与ファクタリング業者から借金した
・新型コロナウイルスの影響で収入が減り、給料ファクタリング業者から融資を受けた
このような状況を受け、国民生活センターでは消費者に向けて、「ファクタリングと称していても借金と同じ!」「年率換算で数百パーセントもの高額な手数料を請求される!」「勤務先や家族への強引な取り立てが発生している!」と注意を喚起しています。
まとめ
きびしい経済環境が続きます。そんな中、給与ファクタリング業者の「債権の買い取りで借金に当たらない」など説明されても信じてはいけません。
国民生活センターでは、関わってしまった場合の相談窓口として「全国の消費者生活センター等」への相談を勧めており、消費者ホットライン(全国統一番号)を紹介しています。
[出典]
独立行政法人国民生活センター「給与のファクタリング取引と称するヤミ金に注意! -高額な手数料や強引な取り立ての相談が寄せられています-」(※1)
金融庁「給与の買取りをうたった違法なヤミ金融にご注意ください!」(※2)
執筆者:藤木俊明
副業評論家
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