給料日とは無関係に、結構な額の出費が続いてしまうことがあります。資金が不足し、クレジットカードなどを利用して乗り切る方や、勤め先によっては給料の前借に応じてくれるところもあるかもしれません。
ただし、「給料ファクタリング」の文字には気を付けなくてはなりません。手元資金が不足して困っている時には、特に注意しましょう。
執筆者:大泉稔(おおいずみ みのる)
株式会社fpANSWER代表取締役
専門学校東京スクールオブビジネス非常勤講師
明星大学卒業、放送大学大学院在学。
刑務所職員、電鉄系タクシー会社事故係、社会保険庁ねんきん電話相談員、独立系FP会社役員、保険代理店役員を経て現在に至っています。講師や執筆者として広く情報発信する機会もありますが、最近では個別にご相談を頂く機会が増えてきました。ご相談を頂く属性と内容は、65歳以上のリタイアメント層と30〜50歳代の独身女性からは、生命保険や投資、それに不動産。また20〜30歳代の若年経営者からは、生命保険や損害保険、それにリーガル関連。趣味はスポーツジム、箱根の温泉巡り、そして株式投資。最近はアメリカ株にはまっています。
そもそもファクタリングとは?
そもそもファクタリングとは、債権を期日前に一定の手数料を徴収して買い取るサービスのことです。ファクタリングの定義を、Aさんの給料を例に説明します。
Aさんの勤め先の給料日よりも前に、ファクタリング業者が手数料を差し引いた上で、Aさんに給料を払ってくれます。そして、給料日に勤め先から支払われる給料はAさんではなく、ファクタリング業者が受け取ります。
ですが、このような給料ファクタリングは本来行うことができません。
給料は「本人に直接、支払う」のが原則
労働基準法では、給料は直接本人に支払うことが原則です。ただし、原則があれば例外もあります。例えば、給料を本人ではなく、本人が指定する本人名義の銀行口座等に振り込む等です。
また、本人の使者に給料を支払うことも差し支えないとされています。使者とは「社会通念上、本人に支払うのと同一の効果を生ずるような者であるか否かによって判断」することになります。
先述のAさんが契約したファクタリング業者が「使者」に該当するとは考えにくいです。
給料ファクタリングは給料日を返済日に設定した借金にすぎない?
Aさんの勤め先は、ファクタリング業者に給料を振り込むことはできません。
ですので、Aさんの勤め先は、いつものようにAさんに給料を支払います。Aさんは、結局、給料日前に手数料を引いて、ファクタリング業者から受け取った給料を会社の給料日にファクタリング業者に返済しなくてはなりません。
これでは、単に給料日を返済日に設定した借金に過ぎず、ファクタリングとは異なるのではないでしょうか。
つまり、この行為はファクタリング業者ではなく貸金業者にあたり、貸金業者の登録番号を示す必要があります。もし、貸金業者の登録番号が付与されていなければ、闇金業者を利用したにすぎません。
実際、給料ファクタリングの手数料等を金利として計算すると、貸金業法で定めた貸付利率をはるかに上回るというケースがあります。その場合、一時的な資金繰り、一時的な利用のつもりが、その後の返済に苦しむことにもつながりかねません。
もし、勤め先がファクタリング業者との契約に応じたら
もし、Aさんの勤め先がファクタリング業者との契約に応じたら、どうなるでしょうか?
給料日前に、ファクタリング業者が手数料を差し引いた額の給料をAさんに払い、Aさんの勤め先が給料日にAさんの給料をファクタリング業者に払うのです。
お金の流れから見れば、立派なファクタリング成立ですが、先述のとおり、給料は「本人に直接、支払うのが原則」ですから、Aさんの勤め先は法に触れることになります。
まとめに代えて
さまざまなタイミングで支出が増えることもあるでしょう。支出に備え、事前に資金を用意しておくことが鉄則ですが、もし借り入れ等を考えている場合は、借りる額はもちろん、貸主(貸金業者)や利率も検討して、計画的に利用したいものです。
少なくとも、給料ファクタリングなどを含め、闇金業者の利用は避けましょう。
執筆者:大泉稔
株式会社fpANSWER代表取締役