更新日: 2020.04.03 厚生年金

遺された65歳以上の妻、遺族年金の寡婦加算額は最高で約60万円も?

執筆者 : 井内義典

遺された65歳以上の妻、遺族年金の寡婦加算額は最高で約60万円も?
夫婦ともに65歳を過ぎて年金生活を送っていたところ、現役時代会社員をしていた夫が亡くなった場合。要件を満たせば、遺された妻には厚生年金保険制度の遺族年金として遺族厚生年金が支給されます。
 
遺族厚生年金を受給する65歳以降の妻には、年金額が少なくならないよう、生年月日に応じた加算制度があります。
 
井内義典

執筆者:井内義典(いのうち よしのり)

1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー

1982年生まれ。株式会社よこはまライフプランニング代表取締役。

資格学校勤務時代には教材編集等の制作業務や学習相談業務に従事し、個人開業の社会保険労務士・FPとしては公的年金に関する研修講師を務め、また、公的年金の相談業務も経験してきている。

これらの経験を活かして、専門誌で年金に関する執筆を行っている。2018年に、年金やライフプランに関する相談・提案、教育研修、制作、調査研究の各事業を行うための株式会社よこはまライフプランニングを設立、横浜を中心に首都圏で活動中。日本年金学会会員、日本FP学会準会員。

65歳以降の妻への経過的寡婦加算

妻が受給する遺族厚生年金は、夫の老齢厚生年金のうちの報酬比例部分の4分の3であるとされています。
 
夫が亡くなった時に妻が65歳以上であれば、老齢年金、遺族年金と年金の種類が違っていても、妻自身が既に受けていた老齢基礎年金(一定の要件を満たした場合に振替加算も加算)や老齢厚生年金と、夫の死亡による遺族厚生年金は併せて受給することが可能となっています。
 
しかし、夫が現役時代・会社員だった頃に、専業主婦が長かった妻も多いでしょう。国民年金第3号被保険者制度のない1986年3月以前に、その専業主婦だった妻が任意で国民年金に加入せず、その結果、妻自身の老齢基礎年金が少なくなっていることもあります。
 
そこで、現行の年金制度が始まった1986年4月時点で30歳になっている、1956年4月1日以前生まれの妻が遺族厚生年金を受ける場合には加算がされます。
 
これは経過的寡婦加算という加算で、加算額は生年月日によって決まり、生年月日の早い人ほど加算額も大きくなります(【図表1】)。1956年4月2日以降生まれの妻には加算はされず、また、加算対象は妻のみとなるため、妻が亡くなって夫が遺族厚生年金を受給する場合も加算されません。
 

 
なお、長期要件と呼ばれる、老齢厚生年金を受給する権利のある夫やその受給資格期間を満たした夫(いずれも、国民年金の納付・免除期間や厚生年金加入期間など、受給資格期間が原則25年以上ある場合に限定)の死亡により支給される遺族厚生年金の場合、妻に経過的寡婦加算が加算されるためには、亡くなった夫の厚生年金加入期間が合計20年(原則)以上必要です。
 

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経過的寡婦加算込みの遺族厚生年金は差額支給

妻への遺族年金としては、夫の老齢厚生年金(報酬比例部分)の4分の3に相当する遺族厚生年金と生年月日に応じて加算された経過的寡婦加算の合計額となりますが、妻自身に会社員として勤務したこと、つまり厚生年金加入期間があり、その結果、妻が老齢厚生年金を受給できる場合については、当該合計額から妻の老齢厚生年金の額を差し引いた額が実際の遺族年金としての受給額となります(【図表2】)。
 

 
65歳以降、老齢年金と遺族年金は併せて受給できますが、夫が亡くなった後は、妻自身の老齢基礎年金(要件を満たせば振替加算も加算)と老齢厚生年金、差額支給となる遺族厚生年金(経過的寡婦加算込み)の合計で受給することになります。
 
専業主婦期間が長かった妻のために遺族年金に加算がある一方、妻自身に厚生年金加入期間(会社員期間)があって老齢厚生年金を受給できる場合は、反対にその分遺族年金は調整されることがポイントとなります。
 
執筆者:井内義典
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、特定社会保険労務士、1級DCプランナー
 

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