更新日: 2019.08.14 その他老後

「自分は大丈夫だから年寄り扱いするな」家族に賠償責任が発生する前に考えておきたいこと

執筆者 : 當舎緑

「自分は大丈夫だから年寄り扱いするな」家族に賠償責任が発生する前に考えておきたいこと
高齢者の自動車事故が相次いで報道される中、自ら運転免許を返納した方、自分の親に免許返納を勧めた方など、多くの方は自分のこととして対応を考えたことでしょう。
 
一方、「自分は大丈夫だから年寄り扱いするな」「田舎だから車を運転できないと困る」などと、訴えられた方もいるでしょう。もちろん、理由については理解できますし、本人がしたくないことを強制することは不可能です。
 
ただ、何かあった時、賠償責任は本人だけではなく家族にもおよぶことがあります。こんな時に「自分がしたことでないから関係ない」と言い切れるのでしょうか。
 
當舎緑

執筆者:當舎緑(とうしゃ みどり)

社会保険労務士。行政書士。CFP(R)。

阪神淡路大震災の経験から、法律やお金の大切さを実感し、開業後は、顧問先の会社の労働保険関係や社会保険関係の手続き、相談にのる傍ら、一般消費者向けのセミナーや執筆活動も精力的に行っている。著書は、「3級FP過去問題集」(金融ブックス)。「子どもにかけるお金の本」(主婦の友社)「もらい忘れ年金の受け取り方」(近代セールス社)など。女2人男1人の3児の母でもある。
 

自治体の興味深いこんな取り組み

団塊の世代が全員75歳以上の後期高齢者となる2025年には、認知症の高齢者が5人に1人に当たる約700万人になると推計されるようです。
 
子ども世代も、晩婚化、高齢出産と、自分自身の生活が大変な中で、認知症の親が何らかの事故を起こしてしまい賠償が必要になった時にどうするのか、これは離れていても、ぜひ考えておいていただきたい問題です。
 
ただ、結婚していなかったり、結婚していても子どもがいなかったりするという単身者も増加していますので、家族に代わって自治体が対策をするというケースも出始めました。
 
例えば、東京都葛飾区や兵庫県神戸市の、認知症患者を対象とした取り組みが興味深いといえるでしょう(詳しくは後述)。
 
その他にも、神奈川県大和市、神奈川県海老名市、青森県三沢市、青森県むつ市、栃木県小山市、富山県富山市、岐阜県本巣市、岐阜県高山市、福岡県久留米市、大分県豊後大野市、愛知県大府市、愛知県みよし市、愛知県豊田市などが、認知症の事故に保険制度を整備、もしくは整備する予定となっています。
 

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賠償責任保険のおさらい

ここで賠償責任保険についておさらいしておきましょう。
 
もともと個人賠償責任保険が一躍有名になったのは、自転車事故が増加したからです。自転車と歩行者がぶつかり、歩行者が死亡したり、障がい者になったりという事故が数多く報道されました。
 
これらの事故はいずれも多額の賠償請求が裁判でくだされることとなり、中でも衝撃的だったのは神戸市で自転車に乗っていた小学生の親に、9500万円の賠償命令が出たという事案でした。
 
個人賠償責任保険は、最大で1億もしくは2億円が補償されます。ただ、少額短期保険、いわゆるミニ保険といわれるものは最大3000万円となります。他人の身体もしくは財産を壊して賠償責任が発生した場合に、補償される保険です。
 
先ほどの自転車事故だけでなく、子ども同士のケンカで相手にけがをさせてしまった場合、他人の塀を誤って壊してしまった場合など、対象となるケースは多岐にわたります。
 
ただ、主目的は自動車保険や火災保険であり、個人賠償責任保険はおまけのように特約として付加されているため、いくら保障されるのか、どういう場合に補償されるのか、どういう場合に補償されないのかの条件があいまいで、加入しているという点のみを覚えている方が圧倒的に多いのです。
 
保険加入の場合、どんな時にいくら給付されるのかが大事なのです。個人賠償責任保険の費用は月100円から200円程度ですが、家族全員を補償してくれる点で、効果は大きいといえます。
 

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自治体が家族に代わって対応してくれる認知症救済制度とは

ここで、葛飾区と神戸市の認知症向けの救済制度を取り上げます。
 
まず、葛飾区の「おでかけあんしん保険」では、区の見守り事業に登録する高齢者が、線路に立ち入って電車を止めてしまい、列車の運休を引き起こして営業損害が発生した場合に最大5億円、車道への飛び出しによる交通事故などで、本人の死亡や後遺症が発生した場合には、最大50万円が補償されます。
 
神戸市の場合には、個人の住民税に400円を上乗せして運用するので、保険加入だけではなく、「4つの安心」を受けられるということをうたい文句にしています。
 
まず、認知症かどうかの診断を助成、認知症自己救済制度専用のコールセンターを24時間365日運用。
 
事故受付から保険給付までを行い、GPS安心駆けつけサービスで事故を未然に防ぐ工夫をし、事故が起こってしまった時には見舞金(給付制度)があるという「安心」があります。事前に認知症を診断するというのが特徴的でしょう。
 
この賠償責任制度では、認知症患者側に賠償責任があれば最大2億円、被害者側には、賠償責任の有無にかかわらず最大3000万円の見舞金が支給されます。
 
民間の損害保険では、認知症と診断されれば賠償責任が問えないと、被害者が救済されないケースを認識しており、自動車保険に新たな特約を作って保険適用ができるような見直しを予定しています。
 
ただ、今後も、問題となっている高齢者の事故が減ることはないでしょう。東京都では自動車の操作の踏み間違いをさせない機材の90%の補助をするとのことですが、他の自治体がすぐに追随することはなかなかないでしょう。
 
自分で認知症と判断したくない気持ちもわかりますが、認知症は特別な病気ではありません。神戸市でも、認知症患者が関係する事故が年間100件程度はあるそうです。
 
今後、認知症の問題は介護だけとは限りません。賠償金額は多額になることも多いだけに、しっかりと備えをしておきたいものです。
 
執筆者:當舎緑
社会保険労務士。行政書士。CFP(R)。