更新日: 2019.01.11 介護

介護の備えはできていますか?50代になる前までに考えておきたい親の介護費用

執筆者 : 藤丸史果

介護の備えはできていますか?50代になる前までに考えておきたい親の介護費用
自分の親は元気だからまだ先の話と思っていても、突然の事故や病気などで介護が必要な時がやってくるかもしれません。
 
また、親御さんが介護生活に入る方が増えてくる50代までには、お金に関してしっかりと準備をしておきたいものです。
 
今回はいざという時に慌てないため、介護準備の基本についてお伝えしたいと思います。
 
藤丸史果

Text:藤丸史果(ふじまる あやか)

ファイナンシャルプランナー

相続、投資信託など、身近なファイナンスを中心に活動している。

事前に介護について家族で話し合っておくこと

まずは親御さんが元気なうちに、介護についてしっかりと話し合いましょう。
 
例えば、どこで介護をするのかということ。介護をするにあたって、介護する側の自宅に呼び寄せるのか、もしくは施設を検討する必要があるのかを、話し合っておきましょう。もちろん介護を受ける本人の意見も尊重します。
 
また、主となる介護者は誰か、その人の仕事はどうするのかを決めておかなくてはなりません。
 
介護はできるだけ多くの家族で協力体制を作り、誰か一人だけに負担がかかることのないようにすることが重要です。ただし、ケアマネジャーなどと直接やり取りをする窓口となる人は、一人のほうがスムーズです。
 
そして、介護費用については長期間にわたる可能性があるため、まずは親の財政状況について把握しましょう。
 
肉親であっても、その懐状況に踏み込むのはためらうものですが、預貯金や借金額、年金受給額、その他の収入などは、できるだけ詳細に聞いておくことが必要です。
 
足りない費用を援助する必要がある時は、できるだけ早めに準備をしておきましょう。場合によっては、介護者側が介護貯金を始めたほうが良いこともあるでしょう。
 

介護費用っていくらかかる?

介護に必要なお金について、どの程度、見積もっておけば良いのでしょうか。
 
生命保険文化センター「平成27年度生命保険に関する全国実態調査」では、介護期間の平均は59.1カ月(4年11カ月)です。月々の費用の平均は7.9万円ですので、5年であれば474万円。10年なら948万円になります。
生命保険文化センター
 
なお、高齢者施設の費用は、入居一時金やサービス内容によってかなり差があります。また、親一人だけでなく、場合によっては二人の介護を行う可能性も念頭に置かなくてはならないでしょう。
 

もらえるお金はいくらか?

次に、受け取れるお金はどのくらいかを把握しましょう。
 
介護費用は介護者側が負担してしまうと、介護者側の生活が苦しくなる、老後の蓄えが足りなくなるなど、深刻な影響を及ぼすこともあります。できるだけ、親本人のお金でまかなうという意識が必要です。
 
そのため、介護費用を月々にどのくらいかけられるかは、親本人の収入、多くの場合、主に年金受給額にかかってくるとも言えます。
 
受給要件を満たしていれば65歳以上から年金を受け取ることができますが、自営業者などは国民年金、サラリーマンは厚生年金と、その額は現役時代に支払った年金の種類によって異なります。
 
親に直接聞くことが望ましいですが、以下の計算例も参考にして、大まかな金額を把握しておくと良いでしょう。
 
【親がもらう年金受給額の目安(サラリーマンの場合)】

厚生年金受給額=平均年収(万円)×加入期間(年)×0.005481(2018年4月現在)
 
国民年金受給額=40年間の加入で満額の約78万円(ただし変動があります)
 
一般的なサラリーマンをしていた(している)親の場合は、この二つの合計金額が一年間にもらえる受給額となります。
 
【例】

「大卒(22歳)で入社し、会社員時代(60歳までの38年間)の平均年収が400万円だった場合」

厚生年金受給額は、400(万円)×38(年)×0.005481=83.3万円
 
国民年金受給額の78万円と合わせて、78万円+83.3万円=161.3万円 
 
つまり月額で13.4万円になります。
 

これも知っておきたい。介護する側をサポートする制度

介護生活は、長期にわたる可能性があるものです。介護する側が疲弊してしまう前に、適切なサポートを受ける必要があります。
 
介護する側が利用できる制度をいくつかご紹介します。
 

・介護休業/介護休暇

「介護休業」は、家族が要介護状態にある場合、家族一人あたり3回まで、通算93日間の休みを取ることができる制度です。取得する際は、2週間前までに勤め先に申請する必要があります。
 
「介護休暇」は、家族一人につき年5日まで、家族二人以上に対し、年10日まで取得することが可能です。実際は有給休暇を追加して休む場合が多く、休暇届は当日でも申請可能とされています。
 
いずれも雇用形態や労使協定によって利用できない場合もありますので、勤め先によく確認しておきましょう。
 

・家族介護慰労金

要介護4、5の認定を受けている家族を介護している同居家族に、各市町村から10万円~12万円程度の慰労金が支払われる制度です。
 
世帯が住民税非課税、1年間介護保険サービスを利用していないなどの要件がありますので、お住まいの自治体の介護保険課などに問い合わせてみましょう。
 

・介護休業給付金

介護のために休業した場合、雇用保険から給付金が支払われる制度です。支給期間は開始から最長3カ月ですが、介護休業中に会社から別途賃金が支払われる場合は、その額によって介護休業給付金は減額、もしくは不支給となります。
 
給付額は介護休業前の賃金月額の67%相当額で、その計算方法は以下です。
 
【介護休業給付金計算方法】

休業開始時賃金日額(※)×支給日数×67%
(※)賃金日額は、介護休業開始前6カ月の賃金を180で除した金額。
 
【例】

給料が月額30万円の人が3カ月休業した場合は、休業開始時賃金日額=30万円×6カ月÷180=1万円
 
1万円×30日×67%=20万1000円 よって、支給月額は20万1000円となり、最大3カ月までですので、その総額は60万3000円となります。
 
このように介護生活をサポートする制度も多くあることも知ったうえで、準備を進めるようにしましょう。
 
Text:藤丸 史果(ふじまる あやか)
ファイナンシャルプランナー

ライターさん募集