更新日: 2020.01.10 その他

居酒屋でギャンブル!? 「チンチロリンハイボール」ゲームはおトクなの?

執筆者 : 上野慎一

居酒屋でギャンブル!? 「チンチロリンハイボール」ゲームはおトクなの?
「チンチロリン」というゲームをご存じでしょうか。サイコロの目によって勝敗を競うもので、詳しいルールもあるようです。
 
このゲームをシンプルな形にしてメニューに取り入れている居酒屋を見かけることがあります。一体、どんなものなのでしょうか。
上野慎一

執筆者:上野慎一(うえのしんいち)

AFP認定者,宅地建物取引士

不動産コンサルティングマスター,再開発プランナー
横浜市出身。1981年早稲田大学政治経済学部卒業後、大手不動産会社に勤務。2015年早期退職。自身の経験をベースにしながら、資産運用・リタイアメント・セカンドライフなどのテーマに取り組んでいます。「人生は片道きっぷの旅のようなもの」をモットーに、折々に出掛けるお城巡りや居酒屋巡りの旅が楽しみです。

「チンチロリンハイボール」とは?

焼酎やウイスキーを炭酸水で割った「ハイボール」を対象にしていることから、ゲームは「チンチロリンハイボール」と呼ばれています。
 
茶わんのような容器に2つのサイコロを投げ入れて、出た目によってハイボールの価格が次のように変わります。
 
(1)出た目がゾロ目(2つとも同じ数字、以下「ゾロ目」と略します)
⇒ 1杯が無料
 
(2)出た目の合計が偶数(以下「偶数」と略します)
⇒ 1杯が半額
 
(3)出た目の合計が奇数(以下「奇数」と略します)
⇒ 1杯が倍額(ただし、1杯の量も倍になる)
 
(3)だけが負けのペナルティーのように見えますが、量も倍になっているので、ハイボールをもともと2杯以上飲むつもりだった人にとっては、2杯分をひとつの容器で受け取っただけともいえます。
 
そう考えると、お客から見るとおトクなだけで損することはないゲームのようにも思えます。

「確率」は、どうなっているの?

このゲームをまず「確率」で考えてみましょう。2つのサイコロの目の組み合わせは36通りなので、次のように整理できます。
 
(1)ゾロ目 = 無料   6通り ⇒ 確率1/6( 6/36)
(2)偶数  = 半額   12通り ⇒ 確率1/3(12/36)
(3)奇数  = 倍額   18通り ⇒ 確率1/2(18/36)
 
確率は、いわば“一発勝負”における可能性のようなものです。無料を「大勝ち」、半額を「小勝ち」、倍額(ただし量も倍)を「引き分け」に例えると、引き分けと勝ちの確率が半々で、1/6の確率で「大勝ち」できるゲームと評価できるかもしれません。

では、「期待値」は?

次に「期待値」という考え方で見るとどうでしょうか。期待値は、個々の結果(確率)を積み重ねていったトータルでの“平均値”のようなものです。
 
サイコロの目でいえば1・2・3・4・5・6が出る確率はそれぞれ1/6ですので、
[1×1/6 + 2×1/6 + 3×1/6 + 4×1/6 + 5×1/6 + 6×1/6]
という計算式になり、その結果は[3.5]です。実際に3.5という目はありませんが、期待値はこうなります。
 
このゲームの対象ハイボールについて、仮に[定価=400円]、[定量=375ミリリットル(倍量は750ミリリットル)]とすると、価格と量の期待値はそれぞれ次のような計算となります。
 
<価格の期待値>
[ゾロ目0円×1/6 + 偶数200円×1/3 + 奇数800円×1/2]
⇒ 期待値467円(端数切り捨て)
 
<量の期待値>
[ゾロ目375ミリリットル×1/6 + 偶数375ミリリットル×1/3 + 奇数750ミリリットル×1/2]
⇒ 期待値562ミリリットル(端数切り捨て)

実際にはどうなっているの?

「チンチロリンハイボール」ゲームは、東京都内の小規模な居酒屋チェーンが発祥だと聞いたことがあります。ほかにも大手串カツチェーン店など多数の飲食店がこのゲームをメニューに取り入れています。
 
先ほどの期待値からすると、長い目で見るとお客は【定価400円を16パーセントあまり上回る価格】を支払って【定量375ミリリットルの5割増しの量】を飲んでいることになるのです。価格では定価よりも足が出ていますが、それ以上の割合を量で取り戻しているともいえます。
 
またお店の側から長い目で見ると、【定価よりも売り上げが増える】ことが期待できる一方で、【定量よりもたくさんのお酒を提供する】ので利益率は低くなるメニューだといえます。
 
飲食店のお酒の原価率はかなり低いといわれます。売り上げ増のメリットが原価増のデメリットを上回っている可能性もあるでしょう。

まとめ

機会(勝負)の数が多ければ多いほど、そのトータルの平均値は期待値に近づきます。個々のお客にとっての勝負数よりも、お店全体の勝負数がはるかに多いことはいうまでもありません。
 
上記の長い目で見た結果は、お客よりもお店にとって精度が高いのではないでしょうか。
 
機会の数がそう多くない場合には、期待値でものごとを判断するよりも1回ごとの確率で考えた方が妥当ではないかとの指摘もあります。そう考えると、このゲームは冒頭のように「お客から見るとおトクなだけで損することはない」と肩の力を抜いて楽しめばよいものなのでしょう。
 
執筆者:上野慎一
AFP認定者,宅地建物取引士

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