更新日: 2019.01.10 その他

「死後離婚」近年急増のなぞ。また、意外と知らない注意点とは?

執筆者 : 蟹山淳子

「死後離婚」近年急増のなぞ。また、意外と知らない注意点とは?
最近、姻族関係終了届の提出することが「死後離婚」と呼ばれ、新聞やテレビで取り上げられることが増えました。

その影響なのか、届出をした人の数は、2007年には1832人だったものが、2015年には2783人、2016年には4032人に増加したということです。男女別の統計はありませんが、夫に先立たれた妻が大多数を占めるものとみられます。

姻族関係終了届は何のために出され、それによってどのような効果があるのでしょうか。
蟹山淳子

Text:蟹山淳子(かにやま・じゅんこ)

CFP(R)認定者

宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー
蟹山FPオフィス代表
大学卒業後、銀行勤務を経て専業主婦となり、二世帯住宅で夫の両親と同居、2人の子どもを育てる。1997年夫と死別、シングルマザーとなる。以後、自身の資産管理、義父の認知症介護、相続など、自分でプランを立てながら対応。2004年CFP取得。2011年慶應義塾大学経済学部(通信過程)卒業。2015年、日本FP協会「くらしとお金のFP相談室」相談員。2016年日本FP協会、広報センタースタッフ。子どもの受験は幼稚園から大学まですべて経験。3回の介護と3回の相続を経験。その他、宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー等の資格も保有。

姻族関係終了届とは?

結婚すると、配偶者の親兄弟と姻族の関係が結ばれます。離婚した場合には、姻族関係も同時に終了するのですが、配偶者が死亡した場合には婚姻関係が終了することなく姻族関係も続きます。
 
そこで、配偶者の死後に姻族関係を解消するために出すのが姻族関係終了届です。
 
夫の死後いつまでにしなければいけない、という手続きの期限はありません。配偶者の親兄弟の了承を得る必要はなく、役所の窓口に書類を提出するだけで姻族関係はなくなり、相手に通知が行くこともありません。
 
死後離婚ともいわれますが、戸籍には一切変更がないので、妻としての権利(相続、遺族年金など)はそのまま残ります。
 

姻族関係終了届を出したら

夫に先立たれた後、夫の親兄弟との関係に悩む妻たちは少なくありません。舅姑と気持ちのすれ違いがあっても、夫がいたころは間に入ってくれたけれど、夫がいなくなってから良い関係を保つのが難しくなるのは、やむをえないことかもしれません。
 
夫の死後、自分と子どもの生活だけで精いっぱいなのに「義理の親の介護まではしたくない」「同じお墓に入りたくない」という事情があるようです。
 
姻族関係終了届を出しても、妻は夫の遺産を相続し、遺族年金を受け取るなどの権利は変わりません。その上で、夫の親兄弟との姻族関係を解消し、介護をしてほしいといわれても「他人ですから」と断ることができるのです。
 

子どもがいる場合には注意を

姻族関係終了届を出せば、妻と亡夫の親兄弟の関係は他人になりますが、子どもと父方の親族の関係がなくなることはありません。ですから、子どもがいる場合には届を出す前に検討が必要です。
 
子どもには祖父母が亡くなれば遺産を相続する権利(代襲相続)がある一方で、祖父母が年老いて介護が必要になれば、介護する義務も生じます。
 
もちろん、子どもが未成年で祖父母の世話をする力がなければ、無理にする必要はありませんが、いずれ大人になってしっかりと収入があるようになれば、扶養してほしいといわれる可能性もあるのです。
 
一度、届を出して姻族関係を終了させてしまったら、もう撤回することはできません。年月が経って気持ちが変わり、世話をしてあげたいと思っても、家族として公的な書類に署名捺印することは、もうできません。
 
いつでも出すことができて、効果が大きい姻族関係終了届だからこそ、急がず、じっくり検討したうえで出すことが重要です。
 
Text:蟹山 淳子(かにやま・じゅんこ)CFP(R)認定者 宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー 蟹山FPオフィス代表

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