更新日: 2020.05.25 その他

仮想通貨取引が日本よりも韓国のほうが過熱している4つのワケ

執筆者 : 黄泰成

仮想通貨取引が日本よりも韓国のほうが過熱している4つのワケ
2017年は仮想通貨の高騰が話題になった一年でした。代表的な仮想通貨であるビットコインの場合、2017年1月には10万円程度だったものが、2017年12月には200万円程度と、1年で実に20倍にも価格が急騰しました。数年前から仮想通貨取引を行っていた人のなかには、1兆円相当の資産を形成したという噂も出ているほどの過熱ぶりです。
黄泰成

執筆者:黄泰成(こう たいせい)

公認会計士(日本)

スターシア・グループ代表
慶応義塾大学経済学部卒業後、大手監査法人へ入社し、アトランタや韓国での駐在を経験。
2007年、日本に韓国ビジネス専門のコンサルティング会社(株式会社スターシア)を、
韓国に株式会社スターシア・コンサルティング(現)を韓国初の日本資本の会計事務所として設立。2017年にグループ会社として、韓国に税務法人スターシアを設立。
「日本の会計士として日系企業の期待を充分に汲取り、その期待を超え続けるサービスを提供する」という考えのもと、日系企業による韓国ビジネスの成功をサポートしている。

日本の仮想通貨に対する課税

仮想通貨に対しては、財貨なのか金融商品なのか通貨なのかの定義付けが曖昧で、税制を含めて各種規制が後手に回っていたというのが特長です。日本でも、過去には消費税を課税してみたりと右往左往している印象を受けます。
 
しかし、2017年12月に仮想通貨の利益に対する個人所得税の課税方針を国税庁が発表したことで、にわかに税金対策に四苦八苦する投資家が続出しているようです。仮想通貨取引で実現した利益は「雑所得」として分類され、給与所得等の所得と合算され総合課税されます。仮想通貨で億単位の収益をあげた人がたくさんいるようですが、数千万円以上の所得税が発生するため、その影響はかなりのインパクトを持ちます。
 

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韓国の仮想通貨取引の実情

仮想通貨取引は、韓国でも注目をされました。「注目された」というレベルではなく、投機熱が過熱しすぎて社会問題にまでなっています。会社員の60%が仮想通貨取引をしているとか、全世界の仮想通貨取引の4分の1が韓国に集中しているとかともいわれています。
 
韓国の仮想通貨取引の特徴は、第一に、実名でなくても、子供でも、外国人でも誰でも口座を開設することができることです。第二に、個人所得税が発生しないことです。韓国の所得税法では課税対象となる所得を列挙していることから、これらの所得に該当しない仮想通貨利益は課税対象外となります。
 
課税するためには所得税法の改正が必要となります。第三に、取引が過熱していることから、他の国に比べて高い価格が形成されていることです。おおよそ2割程度割高となるようです。「コリア・プレミアム」とか「キムチ・プレミアム」とかといわれています。第四に、税務だけでなく各種制度が完全に後手に回っており、無法地帯になっていることです。
 

韓国の規制

このような現状を鑑み、韓国政府は2017年末から仮想通貨に対する規制に本格的に乗り出しました。韓国が規制を本格化させるという報道が流れるたびに、仮想通貨価格が暴落するという影響をもたらしています。
 
まず、第一弾として発表されたのが、(1)仮想通貨口座の実名制、(2)未成年者および外国人による仮想通貨取引の禁止、です。
 
(1)仮想通貨口座の実名制については、当たり前というか、むしろ今まで匿名で取引できていたことが異常と考えた方が良さそうです。この実名制については単に実名化するというだけではなく、資金決済のための銀行口座と紐付けすることまで要求するようです。
 
韓国では住民登録番号(マイナンバー)が広く普及していることから、このような制度を導入すると個人ごとの仮想通貨取引履歴を国税が容易に把握できるシステムを構築するのだろうと予想されます。
 
(2)外国人(非居住者)による仮想通貨取引の禁止は、特に日本人投資家に大きな影響を与えています。韓国の仮想通貨価格は日本と比べて2割程度割高です。したがって、日本で仮想通貨を購入すると同時に韓国で同量の仮想通貨を売却すれば、それだけで2割の収益が発生します。
 
相場の変動がどのようであれ、全くリスクなくお金が儲かります。裁定取引とかアービトラージとかと呼ばれています。しかし、外国人による取引が禁止されましたので、今までのように簡単にアービトラージができなくなります。そこで、韓国に会社を作って韓国の仮想通貨取引口座を開設してアービトラージを行うことはできないだろうか、という問い合わせが多くなっています。
 

韓国法人を設立してアービトラージは可能か?

韓国法人を設立してアービトラージを行う場合の基本的なスキームは、以下のとおりになるように考えられます。
(1) 韓国法人を設立。法人名で韓国取引所に仮想通貨口座を開設。
(2) 日本で仮想通貨を購入。購入した仮想通貨を韓国法人の口座に送金。(仮想通貨送金)
(3) 韓国で仮想通貨を売却し、ウォンで回収。
(4) 回収したウォンを円に換算して日本に送金。

 
このスキームは可能でしょうか?
 
結論としては、このスキームは残念ながら成り立たないと考えられます。ポイントは、韓国の外為法です。
 
韓国の外為法によると、海外送金を行うためには、貿易取引、役務サービス取引、資本取引がなければなりません。仮想通貨のアービトラージの場合には資金の流れがあるだけで、その対価となるべき役務の提供等が存在しないと解されるため、当該資金送金は外為法上認められないという解釈になるようです。
 
つまり、仮想通貨代金決済のための海外送金は外為法違反であり、当局も今後監視を強化するということです。実務的には、韓国から海外送金する際は、取引銀行に送金理由を証明する必要がありますが、仮想通貨決済のためと申告書に記載すれば銀行は当該海外送金を取り扱ってくれないでしょう。
 
このことを考えると、韓国法人を利用したアービトラージは現実的には非常に難しいと判断せざるを得ません。
 

規制が強化される方向へ

今後、韓国の仮想通貨に対する規制はどのような方向に向かうのでしょうか?
韓国の規制内容によっては仮想通貨の相場が乱高下するため、アービトラージを行っていない一般の仮想通貨投資家にとっても非常に重要な関心ごととなります。
 
1月11日に、韓国法務部長官が「仮想通貨取引は賭博だ。取引禁止を視野に入れている。」と発言したことを受け、市場が動揺しました。この発言に反発した人たちが規制反対の請願書を作成し、すでに20万人を突破する署名が集まったとか、韓国政府が「取引禁止までは考えてない」と火消しに躍起になったりとか、混乱が続いています。
 
韓国は何かを規制する際に、ハードランディング的な規制をする傾向があります。10年以上前の話ですが、「海物語」というパチンコのような機械が大流行したことがあります。名前は一緒ですが日本のパチンコの「海物語」とは別物です。ソウルのあっちこっちに「海物語」という看板を掲げた遊技場が乱立しました。
 
景品規制も文化観光部が指針を発表したこともあり、「ついに韓国でもパチンコが解禁された」と一大ブームになり、日本からもパチンコホール運営会社がいくつか進出しました。しかし、あまりもの過熱ぶりに、政府は一転して規制強化に乗り出し、2−3ヶ月のうちに「海物語」は跡も形もなくなってしまいました。
 
仮想通貨についても、「第二の海物語」と捉える論調も根強くあります。しかし、ブロックチェーンという新しいテクノロジーの発展にも関わっていたり、仮想通貨が今後どのような発展をみせていくのかもまだ分からない状況で、「何でもかんでも規制すればいいとは思わない」と話す麻生金融相の発言がしっくりと来ます。
 
韓国政府は、政府内に仮想通貨対策専門チームを立ち上げ、米国や日本の動向を見守りながら、規制案を考えていくということですので、さしあたっては日本での規制動向をチェックすれば、韓国も同じような方向にいくのではないかと予想できるのではないでしょうか。一度手をつけると動きが早いのが韓国の特徴でもあります。日本語でも韓国関連のニュースを読むことができますので、韓国の仮想通貨規制の動向から目が離せない一年になりそうです。
 
Text:黄 泰成(こう たいせい)
公認会計士(日本)、スターシア・グループ代表