更新日: 2019.05.17 子育て

「2018年から生活保護費、最大で5%減」私達への直接の影響

執筆者 : 新美昌也

「2018年から生活保護費、最大で5%減」私達への直接の影響
2018年10月から3年かけて生活保護受給額の生活費相当分を段階的に引き下げ、最大5%カットすることが決まりました。また、母子加算の月4,000円の減額も決まりました。なお、町村部などの子ども1人の母子世帯では13.4%増となります。

生活保護基準の引き下げは、生活保護を利用している人だけの問題ではありません。低所得者が受けられるさまざまな減免措置や労働者の最低賃金にも直接の影響があります。影響は多岐にわたりますが、就学援助への影響について考えてみたいと思います。 
新美昌也

Text:新美昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/

生活扶助とは?

生活保護には、生活、住宅、教育、医療、介護、出産、生業、葬祭の8つの扶助があります。このうち、生活扶助からは日常生活に必要な費用(食費、被服費、光熱費等)が支給されます。冠婚葬祭などの交際費は支給されません。
 
基準額は、食費等の個人的費用、光熱水費等の世帯共通費用を合算して算出されます。特定の世帯には加算があります(母子加算等)。教育扶助や医療費扶助などと異なり、使い道は利用者の自由です。
 
生活扶助基準額(平成29年4月1日現在)は、たとえば、3人世帯(33歳、29歳、4歳)の場合、都市部で158,380円、地方部で129,920円です。母子世帯(30歳、4歳、2歳)の場合、都市部で188,140円、地方部で158,170円です。なお、児童養育加算等を含んだ金額です。
 
生活扶助は、生活保護を受けていない低所得者世帯と同じ生活水準になるように5年に1度見直されています。前回は、2013年8月から2015年4月までの3回にわたって、生活保護基準が引き下げられました。引き下げ幅は平均6.5%、最大で10%です。生活保護基準を低賃金労働者の所得を基準に見直すというのは本末転倒であるという批判がなされています。最低限度の生活ができればいいというものではなく、「健康で文化的」でなければなりません。
 

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就学援助とは?

経済状況が厳しい家庭の小中学生に、学用品代や給食などを援助するのが「就学援助」です。要保護世帯(収入が生活保護基準以下の世帯)と、それに準じて生活が苦しい準要保護世帯が対象です。準要保護世帯については、市町村教育委員会がそれぞれの基準で認定しています。認定基準の主なものは、「市町村民税の非課税」、「児童手当の支給」、「生活保護の基準額に一定の計数を掛けたもの」です。
 
一定の計数は、1.1~1.5倍など自治体により様々です。1.3倍程度が多いようです。
 
補助の対象は、学用品費、体育実技用具費、新入学児童生徒学用品費等、通学用品費、通学費、修学旅行費、校外活動費、クラブ活動費、生徒会費、PTA会費、医療費、学校給食費などです。自治体によって、就学援助の対象項目や申請方法などが異ります。対象者は、指定の期間に学校や教育委員会などに申請することになります。
 
生活保護世帯は「教育扶助」が受けられますので、生活扶助から支給されない修学旅行費などが就学援助の対象となります。
なお、就学援助の問題点としては、入学準備として、制服、ランドセル、鞄など物入りが多いにもかかわらず、これらの援助額が一般的に7月支給である点などが指摘されています。こういう問題を受け、一部の自治体では3月支給としているところもあります。
 
(参考)
東京都江東区の就学援助は以下のようになっています(一部抜粋)。

【基準額算定方法】

〔生活扶助(第1・2類)+期末一時扶助+教育扶助(基準額+特別基準+学習支援費)+住宅扶助(1.3倍額)〕×1.18+給食費(実費額)
 

【基準額の目安(平成29年度)】

・世帯人数2人(母34歳、子6歳):約356万円
・世帯人数3人(父43歳、母36歳、子12歳):約372万円
・世帯人数4人(父48歳、母42歳、子16歳、子12歳):約422万円
・世帯人数5人(父45歳、母41歳、子13歳、子8歳、祖母73歳):約457万円
※生活保護基準額の見直しの影響が就学援助制度に及ばないよう、平成29年度においては、生活扶助(第1・2類)及び期末一時扶助は平成24年4月1日時点の基準額を用いております。
 

【就学援助の内容】

(1)学用品通学用品費(2)遠足費(3)演劇鑑賞費(4)夏季施設費(林間・臨海)(5)移動教室費(日光・富士見等)(6)修学旅行費(7)入学準備費(8)校外授業費(社会科見学)(9)クラブ活動費(10)卒業記念アルバム費(11)給食費(12)医療費(学校保健安全法に定められた病気に限ります。)となっています。
 

【援助費】

たとえば、中学校の場合、学用品・通学用品費(年額)に関し、中1は3万450円、中2・3は3万4410円、給食費は1か月5,530円(実費援助)、修学旅行費(限度額)は6万7550円となっています。
 

【申請手続き】

毎年4月に学校を通じて全員に就学援助のお知らせ、希望調査票、申請書が配布されます。援助を希望する方は、希望調査票および申請書に必要事項を記入のうえ、学校へ提出します。
 

【認定結果】

江東区立小・中学校に在籍している児童生徒の方に関しては、年度当初に申請された方については、7月中に認定結果通知書が送られます。
 

【支給時期】

江東区立小・中学校に在籍している児童生徒の方に関しては、年4回(8月末・10月末・12月下旬・翌年4月中旬)に分けて支給されます。
 

就学援助の役割と生活保護費引き下げの影響

子どもの貧困率は、13.9%、およそ7人に1人が貧困です。ランドセルを買う、制服を買う、修学旅行に行くなど、一般的な家庭では普通にできることも、経済的に苦しい家庭ではなかなかできません。小中学生にとって、お金がないから、給食費を払えない、制服を買えないなどというのは、とてもつらい思いをするのではないでしょうか。
 
制服などが買えないことで、イジメにあったりなど、楽しいはずの学校が嫌になり、不登校になってしまうかもしれません。就学援助は、経済的に厳しい家庭の子どもも、一般の家庭の子どもたちと同じように、十分とは言えないまでも、お金の心配をせずに学校に行くために必要な援助です。
 
自治体によりさまざまですが、生活保護基準に連動した基準を採用している場合は、生活保護基準の引き下げにより、自治体の判断によりますが、支給を受けられない可能性がでてきます。自治体には、就学援助の周知徹底と生活保護基準引き下げにより準要保護世帯の方が影響を受けないようにしてもらいたいと思います。生活保護を利用できるはずの収入・資産の人の中で実際に生活保護を利用している人は2割程度です。
 
生活保護世帯より生活が厳しい低所得世帯が多数なのです。彼らの子どもたちの就学の機会を奪わないでほしいと思います。また、入学準備金などは3月支給など利用者の視点で運用してもらいたいと思います。
 
(参考)厚生労働省「【別添】生活扶助基準の見直しに伴い他制度に生じる影響について」(2013年2月19日)
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/seikatsuhogo/topics/dl/tp130219-01.pdf
 
Text:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。http://fp-trc.com/

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