最終更新日: 2019.01.08 公開日: 2017.08.16
暮らし

身近な電気の話  地方に新電力続々!「おらがまちの電力」

昨年4月に全面自由化されて以来、全国の自治体で新電力への取り組みが活発になっている――、こんな調査結果を朝日新聞が報じています。電力の全面自由化が地方の活性化に役立ち始めているようです。
 
藤森禮一郎

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Text:藤森禮一郎(ふじもり れいいちろう)

フリージャーナリスト

中央大学法学部卒。電気新聞入社、電力・原子力・電力自由化など、主としてエネルギー行政を担当。編集局長、論説主幹、特別編集委員を経て2010年より現職。電力問題のコメンテーターとしてテレビ、雑誌などでも活躍中。主な著書に『電力系統をやさしく科学する』、『知ってナットク原子力』、『データ通信をやさしく科学する』、『身近な電気のクエスション』、『火力発電、温暖化を防ぐカギのカギ』、『電気の未来、スマートグリッド』(いずれも電気新聞刊)など多数。

藤森禮一郎

執筆者:

Text:藤森禮一郎(ふじもり れいいちろう)

フリージャーナリスト

中央大学法学部卒。電気新聞入社、電力・原子力・電力自由化など、主としてエネルギー行政を担当。編集局長、論説主幹、特別編集委員を経て2010年より現職。電力問題のコメンテーターとしてテレビ、雑誌などでも活躍中。主な著書に『電力系統をやさしく科学する』、『知ってナットク原子力』、『データ通信をやさしく科学する』、『身近な電気のクエスション』、『火力発電、温暖化を防ぐカギのカギ』、『電気の未来、スマートグリッド』(いずれも電気新聞刊)など多数。

都道府県の省エネに対する関心はたいへん高くなっています

朝日新聞が一橋大学と共同で全国の47都道府県と1741市区町村を対象にして実施した再生可能エネルギー導入状況のアンケート調査結果(7月末時点)がまとまった。報道によると、31の自治体が、発電事業と企業や個人を対象に電力を小売りする新電力事業をすでに開始しています。この他にも、86の自治体が電力市場への参入を検討していることが分かりました。市区町村を対象にした調査は2014年に続き2度目ですが、すべての都道府県と1382市区町村(回答率79%)から回答がありました。再エネに対する関心の高さを示しています。

調査結果によると、再エネ利用を推進していると答えたのは全体の81%。前回からは微増でしたが、推進のための条例や計画、要綱を持つと答えたのが37%に達し、前回の16%から倍増しています。各自治体で具体化の準備が進んでいることを示しています。また都道府県については約9割が再生可能エネルギー導入目標を持っていると答えています。
省エネや地球温暖化に対する国民の関心が高まってきていることや、地域にある未利用の再エネを活用しようとの機運が地方で高まってきていることが背景にあるのでしょう。再エネを活用した新電力事業が地域の活性化に役立つことや、地震などの非常災害時に「自前電源」を確保しておきたいという地域住民の思いが、徐々に形になってきているのでしょう。地域によって対応はまちまちですが、自治体が参加した新電力会社を設立し発電事業と電力小売り事業の両方を展開するケースが多いようです。

プロジェクトには地域の特色がよく出ています

新電力の主な取り組みとして、報道では、①北海道別海町(牛の糞尿などを発酵させたバイオガスから年間1千万㌔ワット時を発電)、②千葉県成田市・香取市(清掃工場と太陽光発電5か所で発電)、③山形県(県が33%出資、民間企業18社とともに設立、再エネ比率7割を目指す)、④三重県松阪市(年内に設立し、収益で環境関連基金の設立を検討)、⑤大阪府泉佐野市(市が83,3%を出資、再エネ比率2割を目指す)、⑥鳥取県米子市(中海テレビなど5社も出資。清掃工場などの廃棄物発電で8割以上を目指す)、⑦福岡県みやま市(使用電力量を通じて高齢者への見守りサービスも行う)――などを紹介しています。プロジェクトには地域の特色がよく出ていますね。

「地産地消」をベースにした新電力のメリットとして地域の雇用増、公共施設の電気代低減など経済的利点を第一に挙げています、同時に、災害時に電力会社の大停電が発生しても「自前の自家発電」確保しておけば、無線・通信・放送など防災対策などに必要な最小限の電力を確保できる、というメリットもあります。これは東日本大震災の教訓ですね。

新電力は顔の見える「おらがまちの電力」

再生エネによる地域への貢献策の具体的事例として次のようなプロジェクトを紹介しています。①北海道別海町(太陽光発電)=収益を地域のバス運行費用に。昨年度は約155万円を充当。②北海道安平町(水上太陽光発電)=エネルギーを学ぶ出前授業を太陽光発電事業者が小学校で実施。③埼玉県桶川市(水上太陽光発電)=事業者が市の調整池を利用。災害用の移動式電源を備える、年間200万円の土地使用料を省エネ機器設置の補助金に。④岐阜県郡上市(水力発電)=小水力発電の収益を農業振興に充当。昨年度は530万円を充当。⑤岡山県吉備中央町(太陽光発電)=売電収益を子育て支援に充当。昨年は8500万円を充当。⑥大分県九重町(地熱発電)=町が所有する地熱井で事業者が発電。売電収入の一部を福祉向上に活用予定。などです。

こうした事例をみると、地域系の新電力は顔の見える「おらがまちの電力」ですね。巨大化し遠隔化してきた大手電力会社の従来の電力供給事業のコンセプトとは異なる新しい流れです。需要が密集する大都市での料金値下げ競争や顧客争奪戦にばかりスポットが当てられる電力自由化ですが、実は電力システム改革の本当の狙いは、分散型電源であるおらが街電力の拡充にあるのかもしれません。

電力自由化は地域活性化の強い味方になります

エネルギー供給は大規模一極集中より小規模多極分散の時代へ。とはいえ電力事業を軌道に乗せるには困難な課題も多々ありますが、事業化するためには、自分たちの生活は自分たちの力と英知で守ろうという地域住民の強い決意が必要です。東日本大震災の教訓を生かす道は平たんではありません。
太陽光、風力、地熱、バイオ燃料など再エネ資源は全国すべての地域に平等には存在していません。地域の歴史も産業経済も様々です。ですから、どこかの町で成功したから、おらが街でも、とはいきません。住んでいる地域の経済、社会をよく理解し、新たな事業に挑戦して地域を発展させようとの強いリーダーシップが求められます。電力技術者はたくさんいます。自治体に協力し地域を愛する有力な地場産業があれば、電力自由化は地域活性化の強い味方になりますね。

参考までに、アメリカ電気事業の市場規模は日本の約4倍です。人口は2倍を超えていますが、それにしても大きな市場ですね。電気事業者の数は、大小合わせると3000社をゆうに超えます。日本にも新電力が続々誕生していますが、それでも1000社には達していません。
アメリカの市場は大手の民営事業者250~300社(全体の約7%)が市場の7割以上を支配しています。市街地を通り抜けて郊外の閑静な地域に行くと大手電力はサービス区域外になってしまいます。需要密度の低い郊外や農業地域の住民への電力供給サービスは市営が中心の公営電力、住民が運営する共同組合経営電力に頼っている場合が多いですね。日本では当たり前の「ユニバーサル・サービス」とは程遠い現実がアメリカにはあります。