更新日: 2019.05.17 その他相続

賢明な遺産分配の方法。誰が何を相続するか

執筆者 : 黒木達也

賢明な遺産分配の方法。誰が何を相続するか
相続については、法定相続人に対して基準に沿って配分されます。しかし遺産の一定割合を相続するといっても、現金を相続するのか土地を相続するのか、事情によって変わってきます。
 
家や土地だけでは分割が難しいこともあります。
 
法律通りに分配の比率は決められていても、誰がどの財産を相続するのか、という公平で納得のいく分配方法は結構難しいことです。
 

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黒木達也

Text:黒木達也(くろき たつや)

経済ジャーナリスト

大手新聞社出版局勤務を経て現職。

相続財産は土地と家屋だけ

相続人が複数いるにもかかわらず、相続できる財産が不動産(土地と家屋)だけに限られると、分割には苦労します。親が住んでいた住宅を、複数の子が相続するケースがこれに当たります。
 
もし亡くなった人の配偶者が生存していれば、配偶者が基本的に相続することは賢明な方法です。
 
この場合でも、子のなかの1人でも異議を唱え、法律に沿った配分を要求すると面倒なことになります。
 
こうした際の解決策は、
(1)不動産を相続する人が現金を準備し、規定額をほかの相続人にわたす
(2)不動産を売却し、売却金を法律に沿って分配する
(3)不動産を法定相続分に応じて相続人の共有名義にする
といった方法があります。
 
(1)を選択する場合は、不動産を相続する人に、ある程度の手持ち現金があることが前提となります。手許に現金がなく金融機関から融資を受けたりすると、利息などの返済に負担がかかります。
 
また相続する土地の一部を売却できれば、その方法で現金を用意することも可能になります。
 
(2)を選択する場合は、売り急ぎなどをすると売却先に足元を見らます。本来の価値よりも低い値段でしか売ることができず、相続財産を棄損してしまう覚悟も必要です。
 
長い時間をかけての売却を考えておかないと、かなり損をしてしまうかもしれません。
 
(3)を選択する場合は、当面の紛争は解決できそうです。しかし、相続した家屋に誰が居住するのか、ほかの相続人に家賃を払うのか、悩ましい問題も起こります。
 
また個人的な事情が変化し、共有ではなく早期に現金化を希望する人が出たときには、ほかの相続人との調整にも苦労します。できれば避けたい選択といえます。
 

相続財産の中身が多種多様

相続財産は分割できても、その中身が多種多様で異なると結構大変です。例えば、親の残した財産として、現金・預金、上場会社株式、都内のマンション、地方にある土地・建物、骨董品などがあったとしましょう。4人の子が相続する場合、何を相続するかで将来の価値も異なってきます。
 
現金は使い勝手がいい、株式はリスクがありそう、都内のマンションは利用価値が高く売却もできそう、地方の土地は広いが使い勝手が悪そう、骨董品は価値がわからなそう、といった特徴を各人が想像します。
 
とくに、現在の価値と将来の価値が異なる財産が混在していると、解決が困難になります。この場合、例えば、都内のマンションを現在の評価額より高く、地方の土地を現在の評価額より安く見積もって、各人に配分することも一つの方法です。
 
相続対象の中に現金があるので、配分の方法も容易で上手く分け合うことは、決して不可能ではありません。しかし各人の希望が、できればマンションが欲しい、すべてを現金で欲しい、というように重なってしまうと、なかなか収拾がつきません。
 
等分にすることは可能でも、その中身に納得しない人が出るためです。
 
上の例に即していえば、もし誰か1人が田舎暮らしに憧れ、田舎の土地を相続し暮らしたいと思ってくれれば、円満解決の道も開けます。
 
ただ全員が同じ財産を希望すると、分割は可能でも円満相続にはほど遠くなってしまいます。財産額は比較的多くても、全員が納得できる解決にはなりません。
 

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特別受益と寄与分への配慮を

相続を法律どおりに行うにしても、相続財産の一部をすでに受け取ったとして計算する「特別受益」と、ほかの人よりも多く受け取れるように計算する「寄与分」があります。どちらも法的に認められています。
 
「特別受益」とは、親などの被相続人から、ほかの相続人より恩典を受けている場合をいいます。具体的には、海外留学の費用を援助してもらった、私大医学部6年間の学費を援助してもらった、家の新築費用を援助してもらった、といったケースです。
 
1人だけこの恩典を受けていれば、相続時に精算が必要です。
 
「寄与分」とは、ほかの相続人より被相続人のサポートをしてきたことをいいます。具体的には、自営業の親の手伝いを無給でしてきた、親の介護を献身的にしてきた、といったケースが該当します。
 
この場合「特別受益」を受けた人は、遺産を前に受け取ったとして計算します。この特別受益分も遺産に含まれるので、ほかの人と比べ受け取る遺産は減額されます。
 
逆に「寄与分」を受けられる人は、ほかの相続人に比べこの分が考慮されます。通常の配分よりも多く遺産を受け取れる仕組みです。
 
しかし現実には、こうした分を計算し遺産配分した結果を、相続人全員が納得することは少ないようです。例えば、親の介護をしていたが、一方で海外留学費用を出してもらっていると、寄与分もあるが特別受益もあるからです。
 
特別受益の金額がはっきりとしていて、ほかの相続人に寄与分、特別受益がないときは、解決できそうですが、特別受益と寄与分が混在していると、個々の主張が折り合わなくなることも十分考えられます。
 
相続財産の配分は、法律で配分比率は決められていますが、相続財産の中身によっては、機械的に配分できないことがしばしば起こります。
 
公平に配分することは大切ですが、公平だけではなく、相続人同士が納得し合える合意形成が大切です。
 
Text:黒木 達也(くろき たつや)
経済ジャーナリスト。大手新聞社出版局勤務を経て現職