更新日: 2019.01.10 家計の見直し

家計簿は、将来つけなくても済むように、今、つける。

執筆者 : 重定賢治

家計簿は、将来つけなくても済むように、今、つける。
家計について考える場合、「収入」「支出」「資産」「負債」の4つの視点で、具体的な対策をすると、家計改善につながりやすくなります。
 
今回は、具体的な「支出」の話をする前に、FP事務所が家計簿をつけることをなぜ勧めるかについてお伝えします。
 
重定賢治

Text:重定賢治(しげさだ けんじ)

ファイナンシャル・プランナー(CFP)

明治大学法学部法律学科を卒業後、金融機関にて資産運用業務に従事。
ファイナンシャル・プランナー(FP)の上級資格である「CFP®資格」を取得後、2007年に開業。

子育て世帯や退職準備世帯を中心に「暮らしとお金」の相談業務を行う。
また、全国商工会連合会の「エキスパートバンク」にCFP®資格保持者として登録。
法人向け福利厚生制度「ワーク・ライフ・バランス相談室」を提案し、企業にお勤めの役員・従業員が抱えている「暮らしとお金」についてのお悩み相談も行う。

2017年、独立行政法人日本学生支援機構の「スカラシップ・アドバイザー」に認定され、高等学校やPTA向けに奨学金のセミナー・相談会を通じ、国の事業として教育の格差など社会問題の解決にも取り組む。
https://fpofficekaientai.wixsite.com/fp-office-kaientai

家計簿をつけて、お金の流れをつかもう

結論から言うと、家計簿をつける目的は「家計簿をつけなくなっても、感覚的にお金の流れを頭の中でイメージできるようにすること」にあります。
 
身近な例でいうと、料理みたいなものです。
 
最近、私は初めてたこ焼きを作ったのですが、妻とレシピを見ながらチャレンジしたところ、普通においしくできあがりました。予想外に作り方は簡単で、また作ろうというときも、作り方自体は覚えていると思います。
 
ただ、問題なのは分量です。きっと、「だし汁は何カップだったかなぁ」とか、「卵何個必要だっけ」などと、再びレシピで確認すると思います。
 
やっぱり人間は、何回か経験しないと身につけることができないんですね。それでコツをつかんで、いつの間にかレシピを見ずにたこ焼きが作れるようになる。
 
家計簿についても同じことが言えます。一定の期間、家計簿をつける経験をしていくと、いつの間にか、家計簿をつけなくてもお金の流れが頭の中でイメージできるようになります。
 
特に、支出については、月々の出費はいくらになるのかと、大きな項目(基本生活費、教育関連費、住宅関連費、自動車関連費、生保・損保保険料、社会保険料と税金)を基準にして、頭の中でお金のおおよその見当がつけられるようになります。あとは、毎月の収入とトータルの支出とで差し引きをしてあげるだけです。同時に、毎月余るお金、つまり、貯蓄額の目安が見えてきます。
 
先取り貯蓄をしている人っていますよね。このような人の場合、傾向として、今月の貯蓄分をあらかじめ頭の中で把握しています。そのため、先取り貯蓄をしてもなお、お金を余らすことができ、家計に余裕が生み出せています。
 

家計簿をつけて家計のクセを知ろう

もうひとつ、家計簿をつける効用は、「家計のクセを見つけること」にあります。
 
実際のご相談では、それぞれのご家庭の事情が「家計のクセ」になって表れてきます。
 
私の印象として、夫婦がともに正社員で働いている共働き世帯では、ご主人が会社員、奥さまがパートタイマーのご家庭と比べ、食費が高い傾向であるように思います。
 
これは、スーパーなどでの買い物の仕方に原因があるようです。例えば、毎日のように買い物にいくことが難しいため、安売りのチャンスを逃しているとか、休日に一気にまとめ買いする必要があるため、つい余分に買い物をしてしまうとか、お話を伺っていると、このようなご家庭の事情が家計簿に表れてきます。
 
また、このような世帯では、比較的、世帯年収が多いため、外食の回数が一般的なご家庭と比べ、多くなっているというのも、傾向として家計簿に表れてきます。
 
ほかにも、家計のクセが顕著なのが、住宅ローンの月々の返済額です。
 
FP事務所としては、ご相談者の家計簿を診断する立場であるため、ここが一般的なご家庭と比べ極端に多くなっている場合、なぜそうなっているかをより詳しくチェックしていきます。
 
すると、ボーナス払いを選んでいないことが判明します。この理由について伺うと、マイホームを購入したのが30代の後半で、住宅ローンを払い終えるのが70歳を超えてしまい、そのころには退職しているため月々の返済額が多くても、こうせざるを得なかったという答えが返ってきます。
 

まとめ

このように、家計簿には「それぞれのご家庭の事情」を背景とした「家計のクセ」があり、これを見えやすくするのが家計簿をつける効果です。
 
支出には、本当は収入の何パーセントといった「割合」としての目安はなく、あるのは、それぞれのご家庭によった「家計のクセ」が一般的に比べてどうなのかという事実なんですね。
 
これを比較するために、実額でいくらぐらいかという「相場」があり、相場観を養うことができるようにすることが、家計簿をつけるという行為、つまり「家計のイメージトレーニング」なんです。
  
ご家庭にはそれぞれの事情があって、家計簿をつける、つけないは、結局、その人が置かれている環境や境遇によります。
 
もし、家計簿をつけようと思うなら、家計簿をつける目的は、「家計簿をつけなくなっても、“感覚的に”お金の流れをイメージできるようにすること」であるため、家計簿をつけている自分というよりも、つけていないときの自分の頭の中を想定していることは忘れないようにしてください。
 
本来、家計簿をつけるという作業は、ノートに書くのも、アプリでつけるのも、面倒くさいというのは同じです。
 
そういうものをショートカットするために、つまり、将来、家計簿をつけなくて済むように、今、家計簿をつけるというふうに考えると、ちょっとは気が楽になるかもしれません。
 
Text:重定 賢治(しげさだ けんじ)
ファイナンシャル・プランナー(CFP)

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