更新日: 2019.01.10 貯金

金融庁発表「投信の半数は損失」 それならやっぱり貯金が一番なのでしょうか?

執筆者 : 柴沼直美

金融庁発表「投信の半数は損失」 それならやっぱり貯金が一番なのでしょうか?
先月、金融庁が「投資信託を保有する個人投資家の半数が損失を抱えている」という調査結果を明らかにしました。
 
「これからは自助努力が必要」と思っていた投資未経験者の方は、この調査結果を見てどう感じるのでしょうか。
 
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO32607510U8A700C1EE9000/
柴沼直美

Text:柴沼直美(しばぬま なおみ)

CFP(R)認定者

大学を卒業後、保険営業に従事したのち渡米。MBAを修得後、外資系金融機関にて企業分析・運用に従事。出産・介護を機に現職。3人の子育てから教育費の捻出・方法・留学まで助言経験豊富。老後問題では、成年後見人・介護施設選び・相続発生時の手続きについてもアドバイス経験多数。現在は、FP業務と教育機関での講師業を行う。2017年6月より2018年5月まで日本FP協会広報スタッフ
http://www.caripri.com

だから投資は怖い。やっぱり貯蓄が一番堅実?

もし、筆者が投資未経験者であれば、当然「だから投資は怖いもの。元本保証は絶対だからやっぱり定期預金、定期貯金」と思うでしょう。今回の報道は投資を検討している個人投資家には「あきらめるためのいいきっかけ」を提供したと思います。
 
しかし中身をよく見てみると、手数料や保有期間などについて問題を指摘した内容になっています。
 

自分で運用することが避けられなくなった要因を整理

いざ運用となると、基本的な運用のしくみを理解しなければならないうえに、情報を常に更新しなければなりません。時間もコストもかかります。やらずに済むのであればそれにこしたことはないはずです。しかし、待ったなしで取り組まなければならない理由があったはずです。
 
整理してみましょう。
 

1つ目:少子高齢化が進み、自分たちの将来の年金支給額を支えてくれる世代がいなくなる。
 
2つ目:企業もかつてのように「終身雇用制に基づくまとまった額の退職金」「企業年金」を約束してくれるのではなく自助努力を求めるスタンスに移行しつつありますし、何より人材流動化で1つの企業に学校卒業後定年まで勤めあげることはなくなりました。
 
3つ目:平均余命の長寿化です。長生きはすばらしいことですが、それに伴い必要な資金は拡大します。

 

何らかの自助努力=運用は必須

以前と社会環境が変わらなければ、この報道をきっかけにやっぱり堅実・確実な預貯金に戻ればいいのですが、前述した環境の変化により逆戻りをすると老後生活が立ち行かなくなります。
 
ではどうすればいいのでしょうか。「損をしない運用」に向かって時間とエネルギーを使えばいいのです。報道の見出しに踊らされず、「自分で」勉強しましょう。投資の基本を知る、資産を保全する方法を整理していつも頭の引き出しから出せるように心がけておけばいいのです。
 

基本は「分散」と「手数料」

投資の基本は、分散投資「時間・通貨・資産」の分散と手数料に気を配ることです。このうち通貨については、投資初心者にとっては優先度を下げて「資産」と「時間」を分散させることを意識しましょう。
 
収益が見込まれそうだからという根拠なき「なんとなく理由」で1つの投資対象に集中投資するのではなく、値動きの違う2種類、3種類の投資対象に分けること、「今が底値だ」と「根拠なき確信」で一時にまとめて投資するのではなく積み立てにして投資をするタイミングをずらすこと、投資信託は保有している限り「信託報酬」という形で手数料が控除されます。
 
A商品のほうがB商品より2%高い収益をこれまで上げてきたのだからと安易にA商品を選ぶ前に、手数料を比較しましょう。A商品の信託報酬が3%、B商品が1%だったとすれば、「常に」A商品の値動きのほうがB商品よりも2%勝っていない限り、同じだけの収益を上げられないことになります。
 
報道の見出しに踊らされる前に、この2点をいつも意識しておくことのほうが大切だといえるでしょう。
 
Text:柴沼 直美(しばぬま なおみ)
CFP(R)認定者

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